「じゃあ約束」
まだ幼さの残る少女と少年は寺院の裏で指切りを交わした。
「私が召喚士になれたら」
「俺が一人前の僧官になれたら」
―――「「結婚しよう」」
それから五年がたち、召喚士となった女は旅の途中で死んだ。それから更に数年後、男もまた召喚士の旅に同行し、命を落としていた。
幻光虫が集まる川の、畔に一人の少女が立っていた。いや、少女と言うには少しばかり大人びていたか、とにかく、まだ大人とは呼びがたい年齢の女であった。
「シラン!」
その姿が見えるや否やアーロンが怒鳴り、女の腕を引っ張った。バランスを崩し転びかけた体を抱くように支えて、「シラン」ともう一度女の名を呼んだ。
「なぜ、お前がここにいる」
「分かんない
アーロン老けたね」
コロコロと鈴のように笑ってシランはアーロンの顔に指を滑らせた。
「はぐらかすな、お前は死んだのだろう」
「あ、それなんだけどさ
私が死んでどれくらい経ってるの?」
ひどくあっさり死んでいることを認めると、シランは首をかしげた。そうだ、こいつはこう言う奴だったとアーロンが思い出したのはその時である。
死んだ時のままの見た目といい、昔に戻ったようでアーロンは幾分か柔らかく返答した。
「今日で13年と3ヶ月目だ」
「わぁお、じゃあ私今32?」
絶対この体成長してないよね。って、そういう問題ではない。
冗談は置いといて、とシランが続けた。
「私未練があるらしいんだよね
ちゃんと逝こうとしたんだ
けど、異界送りを受けても駄目だった」
言いながらするりとアーロンの腕から抜け出したシランが、異界送りの真似事をする。おいやめろ。アーロンはそう思った。
「あ、こんなことしてアーロンが先に還っちゃったらこま「おい、やめろ」え?」
本当、こいつは、まったく変わっていない。アーロンは長いため息を吐いた。
「なぜ知っている」
「だって私元々召喚士で死人だよ?わかるに決まってんじゃん
アーロンこそなんでスピラに残ってるの?」
「友との約束を守るためだ」
「友ってブラスカのこと?―――まって、じゃあの子もしかしてユウナ?」
ここまで全て小声である。死人であることを隠していると瞬時に察して合わせるあたり、流石のシランだった。そして、アーロンは思いついたように服の下で笑った。
むんずとシランの襟首をアーロンが掴んだ。
「ちょっ、まだ話終わってない」
妙な笑顔でアーロンは彼女を引きずり話し続ける。
「という訳だ、成仏するまで付き合え」
「なにがという訳?
私ブラスカにそんなに思い入れない・・・」
「俺に付き合えと言っているんだ」
突き出すように、ユウナの前にシランは放り投げられた。
「というわけだ
この死人をガードに入れて欲しい
元召喚士だ役に立つだろう」
死人、召喚士と突っ込みたいワードは盛り沢山だった。しかし、ユウナはもっと他のところが気になった。
「あの、アーロンさんとこの方はどういった関係なんですか?」
「えっと、婚約者?」
言った本人も疑問形だった。
「「えー!!?」」
それを聞いた召喚士一行とそのガードたちはもっと疑問形だった。
(2017/07/25)
まだ幼さの残る少女と少年は寺院の裏で指切りを交わした。
「私が召喚士になれたら」
「俺が一人前の僧官になれたら」
―――「「結婚しよう」」
それから五年がたち、召喚士となった女は旅の途中で死んだ。それから更に数年後、男もまた召喚士の旅に同行し、命を落としていた。
大禍時の先の先
幻光虫が集まる川の、畔に一人の少女が立っていた。いや、少女と言うには少しばかり大人びていたか、とにかく、まだ大人とは呼びがたい年齢の女であった。
「シラン!」
その姿が見えるや否やアーロンが怒鳴り、女の腕を引っ張った。バランスを崩し転びかけた体を抱くように支えて、「シラン」ともう一度女の名を呼んだ。
「なぜ、お前がここにいる」
「分かんない
アーロン老けたね」
コロコロと鈴のように笑ってシランはアーロンの顔に指を滑らせた。
「はぐらかすな、お前は死んだのだろう」
「あ、それなんだけどさ
私が死んでどれくらい経ってるの?」
ひどくあっさり死んでいることを認めると、シランは首をかしげた。そうだ、こいつはこう言う奴だったとアーロンが思い出したのはその時である。
死んだ時のままの見た目といい、昔に戻ったようでアーロンは幾分か柔らかく返答した。
「今日で13年と3ヶ月目だ」
「わぁお、じゃあ私今32?」
絶対この体成長してないよね。って、そういう問題ではない。
冗談は置いといて、とシランが続けた。
「私未練があるらしいんだよね
ちゃんと逝こうとしたんだ
けど、異界送りを受けても駄目だった」
言いながらするりとアーロンの腕から抜け出したシランが、異界送りの真似事をする。おいやめろ。アーロンはそう思った。
「あ、こんなことしてアーロンが先に還っちゃったらこま「おい、やめろ」え?」
本当、こいつは、まったく変わっていない。アーロンは長いため息を吐いた。
「なぜ知っている」
「だって私元々召喚士で死人だよ?わかるに決まってんじゃん
アーロンこそなんでスピラに残ってるの?」
「友との約束を守るためだ」
「友ってブラスカのこと?―――まって、じゃあの子もしかしてユウナ?」
ここまで全て小声である。死人であることを隠していると瞬時に察して合わせるあたり、流石のシランだった。そして、アーロンは思いついたように服の下で笑った。
むんずとシランの襟首をアーロンが掴んだ。
「ちょっ、まだ話終わってない」
妙な笑顔でアーロンは彼女を引きずり話し続ける。
「という訳だ、成仏するまで付き合え」
「なにがという訳?
私ブラスカにそんなに思い入れない・・・」
「俺に付き合えと言っているんだ」
突き出すように、ユウナの前にシランは放り投げられた。
「というわけだ
この死人をガードに入れて欲しい
元召喚士だ役に立つだろう」
死人、召喚士と突っ込みたいワードは盛り沢山だった。しかし、ユウナはもっと他のところが気になった。
「あの、アーロンさんとこの方はどういった関係なんですか?」
「えっと、婚約者?」
言った本人も疑問形だった。
「「えー!!?」」
それを聞いた召喚士一行とそのガードたちはもっと疑問形だった。
(2017/07/25)