捜せはしなかったけれど、望んでいた。
もう一度あなたに会うこと。
「確かに言ったけど・・・あんたは?」
そう、ジタンとブランクは再会を祝していたところだった。
イーファの樹からどうやって帰ったかなどを、話していた。
そんなときに、突然女が話しかけてきたのだ。
女は長い髪に、端正で優しそうな顔をもっていた。
来ているものも持っているものも、このあたりでは普通の物。
特筆すべき点は、とくにない。
「あっ、申し訳ありません。
私最近商業区に越してきたリズと申します」
「で、そのリズさんはなんでったってクジャって男を捜してるんだ?」
「昔お世話になったんです」
ふわりと、彼女は微笑んだ。
その笑顔はとても素敵で、思わずブランクは鼻の下を伸ばす。
「へぇ、リズさんか
俺はブランクっていうんだ、何でも聞いてくれよ」
ブランクは彼女手をつかみ、言ってのける。
それに、リズは若干困った表情をつくった。
急に触られて驚いたからだ。
「あ、あの・・・
クジャさんについてうかがいたいのですが
あなた達のおっしゃっていたクジャさんってもしかして、髪の長い人じゃないですか?」
「確かに髪は長いけど、それだけじゃあんたの言ってる奴と同じ奴かは分かんないぜ?」
「それでも・・・!
彼の居場所がわかるのなら、教えていただけることはできませんか?」
まっすぐ、リズの瞳がジタンとブランクを貫いた。
その眼は見えているのではないかと言うほどまっすぐ。
「・・・分かった」
「ありがとうございます!」
それを聞き、もう一度ふわりと彼女は笑った。
彼女一人ではたどり着くのが難しいであろうため、ジタンとブランクは案内を申し出る。
申し訳ないから、と断る彼女を二人は無理やり案内した。
--------------
リンドブルム城の飛行艇造船場。
そこに、今クジャはいた。
奇跡的に助かったのち、その高い知識をシドに買われ、今では飛行艇の設計士をしている。
「クジャ!」
「・・・ジタンか
なんだい?
今忙しいんだけ・・・・」
クジャは僅かに目を見開く。
ジタンとブランクは珍しいものを見たと感心した。
対して、リズはその声に確信を抱く。
「クジャさん・・・?」
リズはクジャに近づくと、その頬を撫で顔を確認する。
生きている、と。
「クジャさん・・・」
「なんで、リズが?」
「あなたが訪れなくなって、私はトレノの屋敷を売りました。
昨日リンドブルムに引っ越してきて・・・そうしたらこの人達が”クジャ”って名前を口にしていて、案内していただいたんです」
ジタンは、そっとブランクの肩をたたきその場から退出する。
どう見ても、彼女とクジャは知り合いだし、感動の再会を邪魔するほど野暮でもないからだ。
「ずっと捜してました」
トレノに居たころ、リズが変な人に絡まれたのを助けてくれたのがきっかけで、よく話し相手をしてくれていたクジャ。
彼が居なくなって一年。
クジャはもうトレノには来ないのであろうと、治安のいいリンドブルムへと引っ越してきた。
その翌日の出来事。
運命と呼んでもいいのではないだろうか。
そう思えるほどの・・・。
「どうしてだい?
僕は勝手にいなくなったんだよ」
彼女は知らないであろうが、世界を壊そうと・・・彼女も殺そうとしていたのだ。
「それでももう一度会いたかったんです」
彼女はそっと、彼の手を包む。
そして、幸せそうに微笑んだ。
いや、本当に幸せであったのだろうもう一度彼に会えた事が。
「アレクサンドリズの事も、リンドブルムの事もトレノで聞いてました。
・・・クジャさんが巻き込まれてるんじゃないかってそれだけが心配で
でも、私にはそれを確かめることもできませんでした」
「・・・・」
その事件自体、クジャが起こしたものだと言うのに。
泣きそうな顔で、リズは手に力を入れた。
「リズ・・・ごめんね」
その謝罪は何にたいしてか。
それは分からないが、泣きそうなリズをあやすようにクジャは彼女の頭を撫でた。
「いいんです。
・・・また、会えたから」
リズはその謝罪を突然消えた事だと思った。
「リズ、ごめんね」
「クジャさん?」
「リズ・・・また、僕と一緒に居てくれるかい?」
「ええ!」
泣きそうな顔を一変させ、リズははじかれたように顔を上げた。
「ずっと、一緒に居てほしいんだ」
「私も、一緒に居たい、です」
リズはクジャから、外の話を貰った。
他の町の風景や、華美な城、まだ行ったことのない未開の地。
彼女の中にそれらは間違いなく生み出され、彼女の世界を広げた。
クジャはリズから、無償の優しさを貰った。
その容姿、財力に惹かれ酔ってくる女はたくさんいたが、彼女はどちらでもない。
ただただ、彼の身を案じ、彼自身を見ていた。
「クジャさん、好きです・・・」
小さく呟いたリズの言葉はクジャには届かず。
「リズ・・・愛してるよ」
同じく呟いた、クジャの言葉もまたリズには届かない。
それでも、彼らは幸せだった。
お互いが生きていて、存在している。
それだけで・・・。
(2011/09/13)
もう一度あなたに会うこと。
存在だけで。
「確かに言ったけど・・・あんたは?」
そう、ジタンとブランクは再会を祝していたところだった。
イーファの樹からどうやって帰ったかなどを、話していた。
そんなときに、突然女が話しかけてきたのだ。
女は長い髪に、端正で優しそうな顔をもっていた。
来ているものも持っているものも、このあたりでは普通の物。
特筆すべき点は、とくにない。
「あっ、申し訳ありません。
私最近商業区に越してきたリズと申します」
「で、そのリズさんはなんでったってクジャって男を捜してるんだ?」
「昔お世話になったんです」
ふわりと、彼女は微笑んだ。
その笑顔はとても素敵で、思わずブランクは鼻の下を伸ばす。
「へぇ、リズさんか
俺はブランクっていうんだ、何でも聞いてくれよ」
ブランクは彼女手をつかみ、言ってのける。
それに、リズは若干困った表情をつくった。
急に触られて驚いたからだ。
「あ、あの・・・
クジャさんについてうかがいたいのですが
あなた達のおっしゃっていたクジャさんってもしかして、髪の長い人じゃないですか?」
「確かに髪は長いけど、それだけじゃあんたの言ってる奴と同じ奴かは分かんないぜ?」
「それでも・・・!
彼の居場所がわかるのなら、教えていただけることはできませんか?」
まっすぐ、リズの瞳がジタンとブランクを貫いた。
その眼は見えているのではないかと言うほどまっすぐ。
「・・・分かった」
「ありがとうございます!」
それを聞き、もう一度ふわりと彼女は笑った。
彼女一人ではたどり着くのが難しいであろうため、ジタンとブランクは案内を申し出る。
申し訳ないから、と断る彼女を二人は無理やり案内した。
--------------
リンドブルム城の飛行艇造船場。
そこに、今クジャはいた。
奇跡的に助かったのち、その高い知識をシドに買われ、今では飛行艇の設計士をしている。
「クジャ!」
「・・・ジタンか
なんだい?
今忙しいんだけ・・・・」
クジャは僅かに目を見開く。
ジタンとブランクは珍しいものを見たと感心した。
対して、リズはその声に確信を抱く。
「クジャさん・・・?」
リズはクジャに近づくと、その頬を撫で顔を確認する。
生きている、と。
「クジャさん・・・」
「なんで、リズが?」
「あなたが訪れなくなって、私はトレノの屋敷を売りました。
昨日リンドブルムに引っ越してきて・・・そうしたらこの人達が”クジャ”って名前を口にしていて、案内していただいたんです」
ジタンは、そっとブランクの肩をたたきその場から退出する。
どう見ても、彼女とクジャは知り合いだし、感動の再会を邪魔するほど野暮でもないからだ。
「ずっと捜してました」
トレノに居たころ、リズが変な人に絡まれたのを助けてくれたのがきっかけで、よく話し相手をしてくれていたクジャ。
彼が居なくなって一年。
クジャはもうトレノには来ないのであろうと、治安のいいリンドブルムへと引っ越してきた。
その翌日の出来事。
運命と呼んでもいいのではないだろうか。
そう思えるほどの・・・。
「どうしてだい?
僕は勝手にいなくなったんだよ」
彼女は知らないであろうが、世界を壊そうと・・・彼女も殺そうとしていたのだ。
「それでももう一度会いたかったんです」
彼女はそっと、彼の手を包む。
そして、幸せそうに微笑んだ。
いや、本当に幸せであったのだろうもう一度彼に会えた事が。
「アレクサンドリズの事も、リンドブルムの事もトレノで聞いてました。
・・・クジャさんが巻き込まれてるんじゃないかってそれだけが心配で
でも、私にはそれを確かめることもできませんでした」
「・・・・」
その事件自体、クジャが起こしたものだと言うのに。
泣きそうな顔で、リズは手に力を入れた。
「リズ・・・ごめんね」
その謝罪は何にたいしてか。
それは分からないが、泣きそうなリズをあやすようにクジャは彼女の頭を撫でた。
「いいんです。
・・・また、会えたから」
リズはその謝罪を突然消えた事だと思った。
「リズ、ごめんね」
「クジャさん?」
「リズ・・・また、僕と一緒に居てくれるかい?」
「ええ!」
泣きそうな顔を一変させ、リズははじかれたように顔を上げた。
「ずっと、一緒に居てほしいんだ」
「私も、一緒に居たい、です」
リズはクジャから、外の話を貰った。
他の町の風景や、華美な城、まだ行ったことのない未開の地。
彼女の中にそれらは間違いなく生み出され、彼女の世界を広げた。
クジャはリズから、無償の優しさを貰った。
その容姿、財力に惹かれ酔ってくる女はたくさんいたが、彼女はどちらでもない。
ただただ、彼の身を案じ、彼自身を見ていた。
「クジャさん、好きです・・・」
小さく呟いたリズの言葉はクジャには届かず。
「リズ・・・愛してるよ」
同じく呟いた、クジャの言葉もまたリズには届かない。
それでも、彼らは幸せだった。
お互いが生きていて、存在している。
それだけで・・・。
(2011/09/13)