Eternal Oath

実のところ、クリスティア>にその先の記憶はあまりない。

ただがむしゃらに兵士から身を守ったことと、大きな爆発があったことを思い出すばかりだ。

03.木々は緑


「もし、もし」
「ここは?」

体を揺すられたクリスティアが目覚めたのは、森であった。霧の下なのであろう、じめじめした空気に遠くモンスターの声がする。

「どうやら、わたくしたち船から落ちてしまったようで」

困ったように言うのはコーネリアを演じていた少女であった。その後ろには件のとんがり帽子の少年が不安そうに立っている。

「そうなんだ・・・」

霧と木々のせいで見通しは悪いが、それでも彼女達はすぐに飛空挺の場所を発見することが出来た。なぜなら、飛空挺は爆発の影響で火事をおこしかけていたからだ。
それを確認したクリスティアは、膝元をぱんぱんと二回ほど叩いて立ち上がった。
幸いなことにクリスティアも他の二人も目立った怪我はない。

「とりあえず飛空挺に向かう?」
クリスティアが言った瞬間であった。

「きゃあ!」
「っきゃ!」

上から檻のようなものが降ってきて、少女ふたりは閉じ込められた。どうやらモンスターに囚われてしまったらしいと、少年も合わせた三人が理解したのは同時。
うわぁと腰を抜かした少年は、じりじりと後ずさり、少女もまた恐怖から腰を抜かしていた。その中、クリスティアだけが、抜け出そうと必死にモンスターの蔦を掴んでいた。


「ひ、姫様に何をするつもりだ!」
突然大声が響いた。
驚き視線をやれば、男が二人、一人は甲冑で一人は袖のない服を着て、しっぽが生えていた。二人共、舞台に立っていた人物のようだとクリスティアは思う。

「助けて!」
「おう!」

しっぽの男がそう答えた途端、その体が光り出す。トランスと言う現象だと甲冑の男は言った。

(そう言えば・・・)クリスティアも思い出す。トランスとは、魂の高ぶりがそうさせるのだと、クジャから聞いたことがある。
平素より感情をあまり表に出さないクジャが、その話をするときだけは、悔しそうで、辛そうで、ひどく印象に残っていた。

目の前で、凄い威力でしっぽの男がモンスターを切り裂いた。



それから暫く男はトランスしたままであったが、何度目かの攻撃でトランスはとけてしまう。

モンスターのダメージは目に見えるほどで、クリスティアたちはもうすぐ助かるはずであった。しかし、追い詰められたモンスターは檻の内部に蔦を忍び込ませると、クリスティアたちから体力をうばい回復し始めたのだ。

「ケアル!」
「いいぞ!」
「どなたか存ぜぬが、姫様を頼むでござる!」

モンスターは回復しながらも、二人の男の猛攻に耐えられず少しずつ、ダメージを追っていく。

「スロウ!」

徐々に恐怖が薄れたのだろう、それにクリスティアも手を貸して。




もうすぐ倒せる、そんな瞬間にモンスターは飛び上がって走り去った。


(2017/06/12)