甘く甘く呼ぶ
「なぁ、リズ」
「なぁに?」
「今日はえらく気合いが入ってるじゃねぇか
誰を誘惑するつもりなんだ、と」
薄く施した化粧に、深くスリットの入ったドレス。
私がこんな格好をしている理由をきっと彼は気づいているのだろう。
その証拠に腰に手を回しひどく上げた口角で、彼は私に聞いたわ。
そのお返しに私は首に手をまわして彼の耳に囁く。
「さぁ?だれだと思う?」
「俺には見当もつかないぞ、と」
嘘ばっかり。
楽しそうな顔をして、見当もつかないなんてどの口がいうのかしら。
「嘘。分かってるでしょ?」
「リズの口から聞きたいぞ、と」
彼が私の耳でささやく。
その声に負けた。
「ひどい人ね」
「なんのことだ、と」
「分かってるくせに言わせようとするんですもの」
私だって少しは恥ずかしいのよ。
「で、誰を誘惑したいんだ、と」
「レノ」
甘く甘く私は彼の名を呼ぶ。
(あら、今日のルージュは赤いからそんなにキスしたら唇真っ赤になっちゃうわよ?)
(2013/08/14)
元拍手のおまけ。