Eternal Oath

―――セトラの民、星より生まれ星と語り、星を開く。

―――セトラの民、約束の地へ帰る。

―――至上の幸福、星が与えし定めの地。


共に語った。共に笑った。共に歩んでいこう、そう約束をした。
彼女と帰りたかった。

00.星を紡ぐ者


その日、ゆっくりと開いたアーリアの目に飛び込んだのは鉄板の天井だった。昨日まで彼女はカームにある仲間の家に住んでいたはずで、おかしな光景だ。
壁に沿うように視線を移動すればエリマキトカゲのような面妖な姿をした男と、学者のような姿の男達が目に入る。
アーリアはこういう時に焦っても仕方がないと知っていたので、ゆっくりと経緯を思い出した。
気を失う前、彼女はティファからの頼みでチョコボファームへ向かっていたはず。そう、その途中で魔法の様な光に包まれたのを覚えていた。
思い出したところでもう一度辺りを見回す。こんな建物は知らない。

「異世界の人間を召喚することに成功したおじゃ!!」

響く不快な笑い声。エリマキトカゲから発せられていた。
彼は『実験』、『成功』、『観察』のようなワードを連呼しながらしきりにデータを打ち込んでいる。


―――嗚呼、酷く不愉快だ。


瞬間。


アーリアが手元ショートソードを抜き、エリマキトカゲの首元にあてる。おじゃるごじゃると情けない声を上げ彼は怯えた。

「あなたのせい?
私をかえして」
ここがどこか分からないのなら、(おそらく誘拐犯である)この男にカームまで案内させよう。そうアーリアは思った。

「・・・でっ、できないおじゃ」

焦った男が声を絞り出した。オダインと自称する男は、さらにこう続ける。
曰わく、異次元の歪みを感知する装置を作りその歪みに干渉したこと。まさか人間を召喚できるとは思わなかったこと。
同じ歪みはいつできるか分からず、また同じように干渉したところで新たな人間を呼び出せても彼女を帰す事は出来ないと。


「・・・うそ、でしょ」


つまりは、帰れない。



「捕らえろ!」
帰れないことを理解し崩れ落ちたアーリアは、地面につく前に駆けつけた兵士に抱えあげられた。



* * *



「あ゛ー」

エスタの大統領であるラグナは頭を抱えていた。彼の目の前にはふわふわの長い茶髪に少し下がったエメラルドのような瞳をもつ少女が座っている。
オダインに剣を突きつけた加害者であり、一方で彼の実験により異世界に誘拐された被害者であると言う。


アーリアセッター、13歳か」


犯罪者とするには幼すぎる少女。罪に問うどころか、彼はオダインの所業を謝罪せねばならぬ所であろう。
帰れないと言うなら放っていくわけにもいかない。大統領にはオダインの監督責任があった。

「これから、どうしたい?」
「・・・帰りたいです」
「だよなぁ・・・
すまん!
俺が責任もって帰れる研究させるし、お前が帰れるようになるまでは面倒見る」
「・・・そう、ですか」

硬い表情でアーリアは、緊張しているような態度だった。
ラグナを警戒しているのか、それとも絶望からなのか。考えあぐね、ラグナは首を振った。
考えても分かりはしないし、今は彼女をどうするかが重要なのだ。
警戒させないようににっこり笑顔を作ってラグナは両手を広げた。いいことを思いついたとばかりに従者とアーリアに言い放つ。

「じゃあ取り敢えず俺ん家住め!」

突拍子もない大統領の言葉。
止めるどころか、側近らしき人物達はやれやれと呆れたように笑う。

「はい?」
「俺がラグナ!この国の大統領だ!
で、この細い方がキロス、でかいのがウォード」
「はい?」
「よろしくな!アーリア

ラグナが手を伸ばす。握り返しされたアーリアの手はひどく冷たかった。


(2014/12/25)
(2016/08/15修正)
(2023/11/28修正2)