アーリアは、その二人を強い人たちだと思っていた。
違うクラスではあったが、同じ幼年クラスに通う金色と茶色の少年の、初めてあった時の印象である。
ふたりは食堂のパンが彼の方が大きかったとか、テストの点がいいとか悪いとか、そんな些細なことでよく喧嘩をしていた。それを羨ましくおもう。
今日も彼らの怒鳴り声がする。
子供同士の喧嘩とは言えど、彼らの構えているものは剣であり、その中でも攻撃力が高く扱いが難しいとされるガンブレードである。幼年クラスで頭ひとつ飛び抜けた戦闘力の二人に、仲裁に入れるものはいない。
お互いを信頼している彼らはたとえ喧嘩であっても本気だった。
「はっ!かかってこいよ!」
「・・・言われなくても」
サイファーと呼ばれた金色が挑発し、スコールと呼ばれる茶色の少年がそれに答える。
これが外だったのなら大騒ぎにはならないのだが、現在彼らが切りむすんでいるのはガーデンの廊下であった。
その喧騒は生徒とともに廊下を歩んでいた教師の耳にも届いた。ガンブレードをぶつけ合う二人の少年、囲うような人垣は、やれだのやめてだの煽ったり止めたり三者三様の様子だ。
ガーデンの規律として正しくない、幼少クラスとは言えども彼らはSeeD候補生なのだから。教師は人垣の円に踏み込み二人を罰するべく声を上げようとした。
「止めてきます」
そんな教師を押しとどめるかのように、彼の隣で長い髪が翻る。一転、やはり彼女のような学生こそSeeDに相応しいと教師は思った。
「危ないよ」
スコールとサイファーの二人は、一瞬なにが起こったのかを理解ができなかった。キィと高い音と共に手からガンブレードは弾かれ、各々の隣へと突き刺る。
「レオンハートくん、アルマシーくん」
かけられた声に、二人は同時に理解をする、また彼女に邪魔をされたのだ。
「こんな所で喧嘩されたら迷惑だって」
サイファーは苦々しく、スコールはバツが悪そうにため息一つ。彼女の後ろ教師の姿を見つけ、ギャラリーは怒られてはたまらないと解散をはじめた。
「ご機嫌取りは大変だな
セッターちゃん」
そんなギャラリーを見て吐き出すようにサイファーはかみついた。それを受け、同じくギャラリーを見つめた緑の瞳が彼を捉えて、瞬いた。
「じゃあ、ご機嫌取りをしなくてもすむようにしてくれる?アルマシーくん」
無表情のまま彼女は問うた。
喧嘩を止められたことも、皮肉を返されたことも、全部が気にくわなくて、サイファーは音がしそうなほど強くアーリアを睨んだ。「ねえ」―――と、そんな彼の白い服の袖口を、細い指がひっぱる。
「そんなに戦いたいなら手合せって形にして外でやりなよ」
意外さに言われたサイファーだけでなく、スコールまでも目を見開いて、彼女を見やった。人形のような顔が言葉を紡ぐ。
「そうしたら誰もとめないからさ」
自己主張をせず、無表情、その上なんでも教師の言うことを聞いていた、彼女らしからぬ言葉だ。
満足そうにアーリアを見ている、少し離れた場所へ立った教師がこの言葉を聞いたら腰を抜かしてしまうかもしれないと、どこか冷静にサイファーは考えた。
「はっ」
笑みをひとつ吐き捨てて、そう言うことも言えるんだなとか、そう言う考え方は悪くねぇとか、そんな言葉をサイファーは飲み込んだ。
(2014/12/25)
(2016/08/24修正)
(2023/11/28修正2)
違うクラスではあったが、同じ幼年クラスに通う金色と茶色の少年の、初めてあった時の印象である。
ふたりは食堂のパンが彼の方が大きかったとか、テストの点がいいとか悪いとか、そんな些細なことでよく喧嘩をしていた。それを羨ましくおもう。
02.二人の少年
今日も彼らの怒鳴り声がする。
子供同士の喧嘩とは言えど、彼らの構えているものは剣であり、その中でも攻撃力が高く扱いが難しいとされるガンブレードである。幼年クラスで頭ひとつ飛び抜けた戦闘力の二人に、仲裁に入れるものはいない。
お互いを信頼している彼らはたとえ喧嘩であっても本気だった。
「はっ!かかってこいよ!」
「・・・言われなくても」
サイファーと呼ばれた金色が挑発し、スコールと呼ばれる茶色の少年がそれに答える。
これが外だったのなら大騒ぎにはならないのだが、現在彼らが切りむすんでいるのはガーデンの廊下であった。
その喧騒は生徒とともに廊下を歩んでいた教師の耳にも届いた。ガンブレードをぶつけ合う二人の少年、囲うような人垣は、やれだのやめてだの煽ったり止めたり三者三様の様子だ。
ガーデンの規律として正しくない、幼少クラスとは言えども彼らはSeeD候補生なのだから。教師は人垣の円に踏み込み二人を罰するべく声を上げようとした。
「止めてきます」
そんな教師を押しとどめるかのように、彼の隣で長い髪が翻る。一転、やはり彼女のような学生こそSeeDに相応しいと教師は思った。
「危ないよ」
スコールとサイファーの二人は、一瞬なにが起こったのかを理解ができなかった。キィと高い音と共に手からガンブレードは弾かれ、各々の隣へと突き刺る。
「レオンハートくん、アルマシーくん」
かけられた声に、二人は同時に理解をする、また彼女に邪魔をされたのだ。
「こんな所で喧嘩されたら迷惑だって」
サイファーは苦々しく、スコールはバツが悪そうにため息一つ。彼女の後ろ教師の姿を見つけ、ギャラリーは怒られてはたまらないと解散をはじめた。
「ご機嫌取りは大変だな
セッターちゃん」
そんなギャラリーを見て吐き出すようにサイファーはかみついた。それを受け、同じくギャラリーを見つめた緑の瞳が彼を捉えて、瞬いた。
「じゃあ、ご機嫌取りをしなくてもすむようにしてくれる?アルマシーくん」
無表情のまま彼女は問うた。
喧嘩を止められたことも、皮肉を返されたことも、全部が気にくわなくて、サイファーは音がしそうなほど強くアーリアを睨んだ。「ねえ」―――と、そんな彼の白い服の袖口を、細い指がひっぱる。
「そんなに戦いたいなら手合せって形にして外でやりなよ」
意外さに言われたサイファーだけでなく、スコールまでも目を見開いて、彼女を見やった。人形のような顔が言葉を紡ぐ。
「そうしたら誰もとめないからさ」
自己主張をせず、無表情、その上なんでも教師の言うことを聞いていた、彼女らしからぬ言葉だ。
満足そうにアーリアを見ている、少し離れた場所へ立った教師がこの言葉を聞いたら腰を抜かしてしまうかもしれないと、どこか冷静にサイファーは考えた。
「はっ」
笑みをひとつ吐き捨てて、そう言うことも言えるんだなとか、そう言う考え方は悪くねぇとか、そんな言葉をサイファーは飲み込んだ。
(2014/12/25)
(2016/08/24修正)
(2023/11/28修正2)