Eternal Oath

「サイファー!スコール!!」
「おう」

保健室に駆け込んだアーリアに、一人は軽く片手をあげ、一人はばつが悪そうに額の傷を抑えて答える。
半分喧嘩のような特訓でサイファーとスコールは眉間に同じような切り傷を付けたらしい。

それはSeeD試験の行われる朝のことだった。

08.SeeD試験


「どうして、こうなったの?」


SeeD試験はその日の午後からであった。サイファーもスコールも試験には支障はでないだろうと聞いた。
アーリアは、僅かに高ぶる心を抑える為自室で丹念に準備をしている。


「うん。大丈夫」

―――怖くない、怖くない、怖くない。みんな強いから大丈夫。


大きく深呼吸して部屋をでる。

集合場所である案内板の前にはスコールと彼の担当教員であるキスティスがいた。アーリアの集合場所もここであり、と言うことはスコールと同じ班なのだろうと推測する。


「こんにちは、アーリア
「こんにちは」


まだ随分遠くを歩いていると言うのに目ざとくアーリアを見つけたキスティスが声を掛けた。
予想通りスコールが同じ班のようで、スコールが彼女を見てよろしくと小さく声を上げた。

「「よろしく」」
はもって挨拶した二人に、キスティスともう一人の笑いが重なる。

「先生・・・ゼル。」
何が面白いのだとスコールは不機嫌に声を漏らした。

「わりぃわりぃ
ぴったりだから面白くて・・・
俺も同じ班だ。よろしくなアーリア
「よろしくお願いします。ゼル先輩」


そんな事は気にも留めずに彼はアーリアと握手を交わそうと手を伸ばした。
反射的に差し出したアーリアの手をつかんだのはゼルではない。


「・・・サイファー」
ゼルを見下ろすようににらみつけて、彼女の手を離した。
所在なさげにおろされたゼルの手を見て満足げに鼻を鳴らす。

どうやらこの班の班長はサイファーのようだ。
握手を止められたゼルは、彼に食って掛かるが鼻で笑われて余計に声を荒げた。
そんな二人に呆れつつ止めないスコールとアーリア
この四人が実地試験での班だった。

「はいはい、試験だってこと忘れないでね」
手をたたいて、キスティスが移動を促した。




ここからは班員全員で行動。

車でバラムまで行き、そこからは船で目的へと向かうことになるようだ。
その船の中で四人に初めて今回の任務の説明がなされる。
任務はドール公国に侵略してきたガルバディア軍の撃退。
とは言え、SeeD候補生にそんなに重要な任務が与えられるわけもなくサイファー率いるB班は中央広場での待機が任務内容。

要するに見張りと時間稼ぎが彼らに与えられた任務だ。


つまんねぇな。
船の中深くソファに腰かけたサイファーを尻目にアーリアが立ち上がる。


「班長、外見てくるね」
「ああ」
甲板に出たアーリアの目に見慣れない建物と炎が見え始め、目的地近くまできた彼に報告。
誰にもばれないように、アーリアは強く剣を握りしめた。


「心配すんじゃねぇ」


それに気づいたサイファーはアーリアの頭をぽんと撫でた。
楽しそうにクツクツ笑ったサイファーが「行くぞ!」と指示をだし、B班の試験が始まった。

船から駆け下り数十メートル。目の前には数人のガルバディア兵。

まっさきに躍り出たのはアーリアで、兵士の体を撫で切った。
いつもは誰かがいた彼女の目の前。
今日はアーリアが先頭を走る。




「っち、どいつもこいつも手ごたえがねえ」
「いいことじゃない?」

他の兵士は三人が片して、サイファーがため息一つ。
ガルバディア兵はあまり強くはなさそうで、アーリアもため息をついた。

「この任務なら、みんな大丈夫そうだね」
薄く笑ってアーリアは返す。


「・・・病み上がりだしね」
サイファーとスコールの額を見て自身の額をとんとんと二回叩く。今朝の決闘を思い出し、二人は同時に顔を顰めそれぞれアーリアから視線を逸らした。
お前冗談いうんだなと、ゼルが笑った。


―――うん。大丈夫


「あー!笑っ「だまれチキン野郎」―――っなにしやが「ゼルうるさい」スコール!」
「三人とも静かにしてないと見つかっちゃうよ」


いつもと同じやりとりに今日は一人加えて、アーリアは人差し指を唇に当てた。


(2014/12/25)
(2016/12/20修正)
(2023/11/28修正2)