大統領の影武者から守れたことに私はひどく安堵した。
十二歳の頃とは違う。
あの時よりずっと強いし・・・何でもできる。
今度こそ、守ってみせる。
リノアからの新しい指示は、テレビの放送局に乱入し、ティンバーの独立発言を全国放送すること。
そんな彼女達の元にワッツが駆け寄ってきたのは、まさに放送局と目と鼻の先までたどり着いたところだった。
「大統領がスタジオ入りしたッス。警備兵がものすごく増えてるからもう突入は無理ッス!」
その言葉に、リノアは仕方ないよねと漏らし、計画の中止を指示する。アーリア以外の面々はコロコロ変わる作戦に、不快げに顔を歪めた。
憧れであったSeeDとしての仕事が、あまりにもままごとじみて見える事に酷く苛立ったのだ。
一方アーリアは、リノアの言動こそ遊びじみているがその気持ちは本物だと気付いていた。だからこそ、こちらを案じて作戦を変えたリノアに眉をひそめる。
「(同じだ)」
彼女も一人で全部抱えてた。
口では明るいことたくさん言っていたけれど、ずっと彼女は自分ばかりが傷つくことを選んだ。
一歩。二歩。アーリアはリノアに近づき、その手を取る。自分より少し高い位置のリノアの眼を見上げた。
「リノアは我慢しなくていい
私達はプロだから
リノアの為に働くよ
リノアを守るよ」
リノアが望むなら放送局へ突っ込んでも構わない。スコール達は私が守るからと彼女は言う。
スコール達は初めて見る饒舌なアーリアに、驚きで二人を見つめた。
リノアはリノアで、その言葉に違和感を覚えている。
”リノアの為に働く”それはいい。ただ、”我慢しなくていい””守る”と言う言葉は自分に言われたような気がしなかったのだ。
その目は遠く、リノア自身を見てなどいなかったのだ。
―――それは誰に言ってるの?
尋ねようとした言葉は、街頭テレビから流れる放送に邪魔された。
「―――ザァァア」
「あ・・」
ノイズに見上げたテレビに写ったのは、久々の電波放送に興奮ぎみのアナウンサーが、デリング大統領へとマイクを渡しているまさにその場面。
デリング大統は自身の大使として”魔女”を指名するという話をし始める。遠回しな世界征服の宣言であった。
「サイファー!」
大きな音がテレビから響き、セルフィとゼルが声を上げた。サイファーの名前に、アーリアは弾かれる様にリノアから視線を外した。
テレビにはデリング大統領の首にガンブレードを当てるサイファーが居た。
どうしようとスコールを伺うセルフィーに、スコールは静かに首を振る。サイファーを止めることはアーリア達の仕事ではない。
画面では興奮したサイファーを、キスティスが止めていた。そしてくるりとキスティスがカメラに振り返った。
―――ティンバー班テレビ見てるなら来て頂戴!許可はもらってるわ!
仕事だとスコールと目を合わせ頷く。適当な物陰にリノアを隠し、アーリア達は放送局へと入る。
テレビで見た時より焦った様子のサイファーとキスティスがそこにはいた。
「さあ、こいつをどうする計画なんだ!?」
そのセリフに、ある程度聡い者は、サイファーがリノアの為にここまで来たのだと気付く。
ピクリとアーリアの眉が動いたが、それに気づく者は誰もいない。
「わかったぜ!!おまえはリノ「ゼル先輩黙っててください!」・・・っ!」
サイファーから目を外さないまま、アーリアは冷静に頭に血の上ったゼルを止める。
このままだとガーデンのことどころか森のフクロウの事までしゃべってしまいそうだ。
スコールも同じことを考えているらしく表情は苦々しい。
「なんでだよ!」
「先輩!」
「アーリアだって!」
「ゼル!」
頼むから、それだけは言わないでくれ、と。アーリアとスコールは思う。
頭に血の上ったゼルは、三人の事を冷血だとでも思っているのだろう。手を握り締めていた。
「あいつを止めて、ガーデンに連れ帰らなきゃいけねぇの分ってるだろ!?」
「「やめろ!言うな!」」
スコールとアーリアの願いも虚しく、ゼルはガーデンの者が大統領に剣を向けたとそう告げた。
―――くくく
デリングの笑い声に、ゼルも漸く自分の失言に気付く。
だが、それらはすべて後の祭りで。
スコールとアーリアの二人は溜息を飲み込み大統領を睨みつけた。
どうすればサイファーを助けられるのか。
気づけばアーリアはそればかり考えてた。
(2015/01/01)
(2016/08/14修正)
十二歳の頃とは違う。
あの時よりずっと強いし・・・何でもできる。
今度こそ、守ってみせる。
15.不安の理由
リノアからの新しい指示は、テレビの放送局に乱入し、ティンバーの独立発言を全国放送すること。
そんな彼女達の元にワッツが駆け寄ってきたのは、まさに放送局と目と鼻の先までたどり着いたところだった。
「大統領がスタジオ入りしたッス。警備兵がものすごく増えてるからもう突入は無理ッス!」
その言葉に、リノアは仕方ないよねと漏らし、計画の中止を指示する。アーリア以外の面々はコロコロ変わる作戦に、不快げに顔を歪めた。
憧れであったSeeDとしての仕事が、あまりにもままごとじみて見える事に酷く苛立ったのだ。
一方アーリアは、リノアの言動こそ遊びじみているがその気持ちは本物だと気付いていた。だからこそ、こちらを案じて作戦を変えたリノアに眉をひそめる。
「(同じだ)」
彼女も一人で全部抱えてた。
口では明るいことたくさん言っていたけれど、ずっと彼女は自分ばかりが傷つくことを選んだ。
一歩。二歩。アーリアはリノアに近づき、その手を取る。自分より少し高い位置のリノアの眼を見上げた。
「リノアは我慢しなくていい
私達はプロだから
リノアの為に働くよ
リノアを守るよ」
リノアが望むなら放送局へ突っ込んでも構わない。スコール達は私が守るからと彼女は言う。
スコール達は初めて見る饒舌なアーリアに、驚きで二人を見つめた。
リノアはリノアで、その言葉に違和感を覚えている。
”リノアの為に働く”それはいい。ただ、”我慢しなくていい””守る”と言う言葉は自分に言われたような気がしなかったのだ。
その目は遠く、リノア自身を見てなどいなかったのだ。
―――それは誰に言ってるの?
尋ねようとした言葉は、街頭テレビから流れる放送に邪魔された。
「―――ザァァア」
「あ・・」
ノイズに見上げたテレビに写ったのは、久々の電波放送に興奮ぎみのアナウンサーが、デリング大統領へとマイクを渡しているまさにその場面。
デリング大統は自身の大使として”魔女”を指名するという話をし始める。遠回しな世界征服の宣言であった。
「サイファー!」
大きな音がテレビから響き、セルフィとゼルが声を上げた。サイファーの名前に、アーリアは弾かれる様にリノアから視線を外した。
テレビにはデリング大統領の首にガンブレードを当てるサイファーが居た。
どうしようとスコールを伺うセルフィーに、スコールは静かに首を振る。サイファーを止めることはアーリア達の仕事ではない。
画面では興奮したサイファーを、キスティスが止めていた。そしてくるりとキスティスがカメラに振り返った。
―――ティンバー班テレビ見てるなら来て頂戴!許可はもらってるわ!
仕事だとスコールと目を合わせ頷く。適当な物陰にリノアを隠し、アーリア達は放送局へと入る。
テレビで見た時より焦った様子のサイファーとキスティスがそこにはいた。
「さあ、こいつをどうする計画なんだ!?」
そのセリフに、ある程度聡い者は、サイファーがリノアの為にここまで来たのだと気付く。
ピクリとアーリアの眉が動いたが、それに気づく者は誰もいない。
「わかったぜ!!おまえはリノ「ゼル先輩黙っててください!」・・・っ!」
サイファーから目を外さないまま、アーリアは冷静に頭に血の上ったゼルを止める。
このままだとガーデンのことどころか森のフクロウの事までしゃべってしまいそうだ。
スコールも同じことを考えているらしく表情は苦々しい。
「なんでだよ!」
「先輩!」
「アーリアだって!」
「ゼル!」
頼むから、それだけは言わないでくれ、と。アーリアとスコールは思う。
頭に血の上ったゼルは、三人の事を冷血だとでも思っているのだろう。手を握り締めていた。
「あいつを止めて、ガーデンに連れ帰らなきゃいけねぇの分ってるだろ!?」
「「やめろ!言うな!」」
スコールとアーリアの願いも虚しく、ゼルはガーデンの者が大統領に剣を向けたとそう告げた。
―――くくく
デリングの笑い声に、ゼルも漸く自分の失言に気付く。
だが、それらはすべて後の祭りで。
スコールとアーリアの二人は溜息を飲み込み大統領を睨みつけた。
どうすればサイファーを助けられるのか。
気づけばアーリアはそればかり考えてた。
(2015/01/01)
(2016/08/14修正)