Eternal Oath

アーリア達は追われるように、ティンバーを後にした。

16.フラッシュバック


結局あの後、サイファーは魔女に連れていかれた。
大統領が危険にさらされ殺気立つティンバーから、アーリア達はキスティスと共に電車でティンバーを去る。
行先はガルバディアガーデン。そこで、バラムからの指示を仰ぐと言う判断だ。

途中匿ってもらっていた家では、サイファーやガーデンを心配する発言をしていた面々も電車内では静かだ。
それは、一番よくしゃべるセルフィが窓の外を眺めに車室へ入ってしまったことと、同じくよくしゃべるゼルが落ち込み黙り込んでしまっていることが原因の一つだ。


そしてもう一つの原因は―――アーリアの追い詰められた表情にあった。


「・・・」


落ち込んでいるはずのゼルより緊迫した雰囲気を彼女は放っていた。
元々白い顔は、さらに白く、青くなり、指先が白くなるほど強く自身の腕を掴んでいた。顔は窓の外に向けられているが、風景など見ていないことは明らかだった。


「・・・」


サイファーが魔女に浚われてからアーリアはずっと最悪の状態を考えていた。
サイファーが処刑されガーデンが攻め滅ぼされる光景だ。

「(サイファーが死んだら・・・どうすればいい?

どうしたら助けられる?)」

電車がガルバディアの近くにつき、下車をする。このまま、森を抜ければすぐにガルバディアガーデンだ。



「(いやだ)」


体温が失われていく感覚が、何度もアーリアの体に思い起こされる。

そのうち電車のゆれがボートのそれに思えてくる。
・・・ガルバディアガーデンへと続く森が、眠りの森に見えた。

森に入るなり倒れる様に倒れた仲間にとうとう彼女は座り込む。
震えそうな足を、動き出しそうな足を何とか押さえつけて。死なないでとこぼれかけた声を抑えた。
アーリアは外に居たため知らなかったが、ティンバー行きの電車の中でも起こった現象らしい。そんな説明が彼女の耳を右から左へと抜けていく。



「(これは、違う
大丈夫、大丈夫)」

何度も自分にそう言い聞かせる。



起きたままのリノアとセルフィはその異変に、気付いたけれど気付かなかった。
二人はアーリアの異変をガーデンに害を及ぼそうとしたガルバディアへの怒りだと誤解していたのだ。
なぜなら、彼女は今のメンバーの中であまりに突出した能力を持っていたためおびえる姿を想像できなかったのだ。


或は、サイファーなら気付いたのかもしれない。
彼女は怯えている、と。


(2015.01.01)
(2016.08.14修正)