やけに重い瞼を開けて見たのは、スコールがアーリアを庇っている所だった。
なんで俺じゃねぇんだ。
そんな考えが頭をよぎり思わず苦笑する。
俺は”魔女の騎士”で、彼女は”悪の傭兵”なんだ。
目こそ開いたが体は動かないサイファーの前でバトルは続いていた。
「サンダガ」
アーリアか魔女かどちらのものか分らない魔法が派手に目の前を包む。
雷によりおきた煙が消えると、魔法で出した雷の槍を構える魔女と、ショートソードを構えたアーリアが現れる。どうやら先ほどの魔法はアーリアが放ったようだ。
やったか、と目を凝らす視線を魔女に送っていた。
”あぶねぇ!”
そうサイファーは叫びたかった。
振りかぶられた雷の槍はリノアのほうへ向けられていた。
「リノア!よけろ!」
代わりに叫んだのはスコールで、リノアの方へ走り出そうとするが到底間に合いそうに無い距離だ。
アーヴァインもまた、遠く銃を打っていた為守ることはかなわない。
「きゃぁ!」
頭を抱える様にしゃがみこんだ彼女を守ったのは近くに居たアーリアで。
走って、息も絶え絶えにリノアの前に立ちふさがる。
とっさの事に剣も構えられず、リノアの目の前で彼女は雷に脇腹を貫かれた。
「リ、ノア」
振り向いて、リノアの無事を確認すると、アーリアは笑った。
その笑顔は、心底嬉しそうな、昔サイファーが欲したあの笑顔だった。
リノアが伸ばした手は空を切り、ぐらりとアーリアが倒れこむ。
「アーリア・・・」「「アーリア!!!」」
サイファーの呟きは誰にも届かず。リノアや駆けつけたゼル達の声にそれはかき消された。
そこからはなし崩しだった。
一番の戦力であるアーリアが負傷。
彼女をかばいながら戦う面々は徐々に押され、今度はスコールが魔女の氷に貫かれた、それが止めだった。
* * *
「っ」
突如サイファーの突然体が軽くなる。
不機嫌そうな魔女が、役立たずめ、と吐き捨てた事から彼女に治されたのだろうと察した。
「そこの男から、SeeDの意味を聞き出せ」
「意味・・・?」
SeeDになったら何か聞かされるのだろうかとサイファーは地面に伏すスコールを見下ろす。
魔女が手を翳すと、スコールの傷も治癒された。まだ死んでは困るということだろう。
サイファーは倒れたスコールたちから視線を外すとまっすぐ彼女の元へと向かう。魔女はアーリアを治さない。
「どけ」
ガルバディア兵をどかせるとアーリアを抱き上げる。兵士とはいえ他の男に彼女を触らせる事はしたくなかった。
抱き上げた体は軽く、血液が減ったせいか体温は低い。このまま放っておけば死んでしまうだろう。
ガルバディア牢獄に軍医を用意しておくように命令し、手持ちのケアルをかえるが、魔女がつけた傷だからか、効き目はすさまじく弱かった。
「ん・・・」
腕の中でアーリアが身じろいだ。傷が痛いのだろうか。
より慎重にサイファーは車に彼女を運び入れた。
魔女の手前連れて行く先は牢獄だが、サイファーはアーリアを拷問する気はない。魔女も彼女を治療しなかったと言うことは、その必要はないということだろう。
サイファーはそっとアーリアの髪を一房取ると口づけた。
(2015/01/01)
(2016/08/14修正)
なんで俺じゃねぇんだ。
そんな考えが頭をよぎり思わず苦笑する。
俺は”魔女の騎士”で、彼女は”悪の傭兵”なんだ。
21.騎士の憂鬱
目こそ開いたが体は動かないサイファーの前でバトルは続いていた。
「サンダガ」
アーリアか魔女かどちらのものか分らない魔法が派手に目の前を包む。
雷によりおきた煙が消えると、魔法で出した雷の槍を構える魔女と、ショートソードを構えたアーリアが現れる。どうやら先ほどの魔法はアーリアが放ったようだ。
やったか、と目を凝らす視線を魔女に送っていた。
”あぶねぇ!”
そうサイファーは叫びたかった。
振りかぶられた雷の槍はリノアのほうへ向けられていた。
「リノア!よけろ!」
代わりに叫んだのはスコールで、リノアの方へ走り出そうとするが到底間に合いそうに無い距離だ。
アーヴァインもまた、遠く銃を打っていた為守ることはかなわない。
「きゃぁ!」
頭を抱える様にしゃがみこんだ彼女を守ったのは近くに居たアーリアで。
走って、息も絶え絶えにリノアの前に立ちふさがる。
とっさの事に剣も構えられず、リノアの目の前で彼女は雷に脇腹を貫かれた。
「リ、ノア」
振り向いて、リノアの無事を確認すると、アーリアは笑った。
その笑顔は、心底嬉しそうな、昔サイファーが欲したあの笑顔だった。
リノアが伸ばした手は空を切り、ぐらりとアーリアが倒れこむ。
「アーリア・・・」「「アーリア!!!」」
サイファーの呟きは誰にも届かず。リノアや駆けつけたゼル達の声にそれはかき消された。
そこからはなし崩しだった。
一番の戦力であるアーリアが負傷。
彼女をかばいながら戦う面々は徐々に押され、今度はスコールが魔女の氷に貫かれた、それが止めだった。
* * *
「っ」
突如サイファーの突然体が軽くなる。
不機嫌そうな魔女が、役立たずめ、と吐き捨てた事から彼女に治されたのだろうと察した。
「そこの男から、SeeDの意味を聞き出せ」
「意味・・・?」
SeeDになったら何か聞かされるのだろうかとサイファーは地面に伏すスコールを見下ろす。
魔女が手を翳すと、スコールの傷も治癒された。まだ死んでは困るということだろう。
サイファーは倒れたスコールたちから視線を外すとまっすぐ彼女の元へと向かう。魔女はアーリアを治さない。
「どけ」
ガルバディア兵をどかせるとアーリアを抱き上げる。兵士とはいえ他の男に彼女を触らせる事はしたくなかった。
抱き上げた体は軽く、血液が減ったせいか体温は低い。このまま放っておけば死んでしまうだろう。
ガルバディア牢獄に軍医を用意しておくように命令し、手持ちのケアルをかえるが、魔女がつけた傷だからか、効き目はすさまじく弱かった。
「ん・・・」
腕の中でアーリアが身じろいだ。傷が痛いのだろうか。
より慎重にサイファーは車に彼女を運び入れた。
魔女の手前連れて行く先は牢獄だが、サイファーはアーリアを拷問する気はない。魔女も彼女を治療しなかったと言うことは、その必要はないということだろう。
サイファーはそっとアーリアの髪を一房取ると口づけた。
(2015/01/01)
(2016/08/14修正)