Eternal Oath

目が覚めて、一瞬ここが神羅ビルだと空目した。

クラウドが出てくる夢も見たし、全部熱の所為かな。


「帰りたい、のかな」


―――どこに?


「決まってる、エアリスの所に」

23.大脱出


どうやら怪我は誰かが治療してくれたようだ。
ただ、魔女のつけた傷だからか、魔法で治すことはできなかった。
熱もあるのか、頭もくらくらする。

それでも

「でなきゃ」


当然の様に武器はとられている。
だが、それはアーリアにはなんでもないことだ。


……ファイガ


魔法で扉を壊し進んでいく。
この手の牢獄には魔法封じが掛けられているものだから、強めの魔法を放ったが、普通の威力がでた。何らかの理由で、魔法封じは切られているらしい。

熱でぐらつく体を何とか引きずり、廊下にでる。なぜか見張りの兵士もいない。
さて、上に行くべきか下に行くべきか。
普通に考えれば出口は下だけれど・・・。


「上・・・か」


アーリアにはここが地中だと言う事が分った。
涙と熱で、歪む視界。壁を支えに歩きながら円状の廊下を進む。
階段を上ると、なぜアーリアのフロアに兵士が居なかったのかがわかった。

一つ上のフロアで繰り広げられていたのは銃撃戦だった。
階段の影に座り込み、息をひそめる。
どうやら誰かが脱走し兵士はそれを追っていたらしい。銃は持っていないのか脱走者たちは反撃をできないようだ。
かといって銃でやられるほど脱走者も弱くなく膠着状態が続いているらしい。


―――ガウン、ガウン・・・・


数発の銃声が聞こえ、一瞬銃撃が止んだ。
アーヴァイン!?と声をかける声が聞こえる。
その声に脱走者がスコール達だと考え、アーリアは伏せながらそちらへ移動する。


アーリア!」
「けがは?」


気付いたゼルが、声を上げる。
心配したリノアが真っ先に近づくが、逆にアーリアがリノアに怪我がないか調べていた。確かめる様に、腕をつかまれた瞬間、彼女の手の熱さにリノアは驚く。


「すごい熱・・・」


額に触れ、リノアが呟く。
その手が気持ちよくて、思わず目を閉じる。ふらりと崩れ落ちそうになり、気持ちを立て直す。
そんな二人の様子に気づかず、スコールはリノアを案内人にアーリアとゼルを連れて上へ向かうと指示をだす。

リノアが何か言う前に、それに答えてアーリアは行ってしまう。
彼女は心配そうなリノアを見、”大丈夫”とだけ口パクで言った。


「大丈夫なわけないじゃない!」


隠れる身だと言うのに大声で叫んだリノアに、スコールとゼルの呆れた視線が飛ぶ。
声に駆けつけた兵士を倒してから、スコールは”どうしたんだ”と歩きながら尋ねた。

アーリア、熱あるの」
「気にしないで、大丈夫だから」

驚き、二人を振り返れば確かに辛そうな表情に青い顔をしたアーリアがいた。
しかし、それに気付いたとは言え、スコールにもゼルにもどうしようもない。
今は脱獄中であり、いつ敵が現れるかもわからないからだ。
アーリアを背負い、みんなでまた捕まるわけにはいかない。

「大丈夫
後少しなんでしょ?」

SeeDでもないリノアがアーリアを背負い歩けるはずもなく。
また、パーティを二つに分け、アーリアを待機させることも戦力的に出来れば避けたい。

結局は、アーリアの”大丈夫”に頼ることしかず、四人は階段を上り続ける。


(2015/01/01)
(2016/08/14修正)