「ここは・・・?」
あれは夢だったのだろうか。
夢にしては出来すぎてるなぁ。
目が覚めた瞬間目に入ったのは、白い天井。視線を横へずらせば、校門のところに居た教師がこちらを心配そうに見つめていた。
「目が覚めたんだね」
すぐに教師がカドワキを呼びに行き、カドワキが側に来る。
簡単に脈や熱を測り、一息つく。
「どのくらい、・・・寝てました」
「大体5日くらいかな」
予想外に長い時間にアーリアは眼を見開く。
ミサイルは、ミサイル班のみんなはと、矢継ぎ早に質問をする。
ミサイルはガーデンを動かせたことにより阻止できた事。
ミサイル班は無事に帰ってこれた事。
そして、動き出したガーデンが制御不能となりFHに突っ込んだこと。
苦笑いをしつつも丁寧にカドワキと教師は教えてくれた。
「あれ、怪我治ってる・・?」
「ああ、それはねみんなが回復魔法を掛けていったんだよ」
凄まじく効きが悪かったから学園中の人が総出だったと言うカドワキに、驚いた様にアーリアは眼を見開き瞬かせる。自分でかけた時は気が付かなかったが、少しは魔法が効いていたらしい。あるいは、時の経過で魔女の魔法が弱まったのかもしれない。
しげしげと傷のあった部分を見つめるアーリアに、カドワキは苦笑いのまま言葉をかける。
「みんな感謝していたよ
アーリアのおかげでガーデンが助かったって」
「・・・そう、ですか」
「大体無茶をし過ぎだよ
怠さとか、熱とか、元々あっただろう」
そうだったような、そうじゃなかったような。
手を口に当てて黙り込む。カドワキの説教は自分の体を大事にしろと言うもので、アーリアは困ったように頷いた。
「当分はバトルも無茶も禁止だよ」
「分りました」
こくりと頷くアーリアを確認し、カドワキはようやくベッドから出る許可を出した。
入れ替わりで、教師が入ってくる。
「寮まで戻るのか?」
「はい」
「送って行こう」
教師の言葉に甘え共に寮へと向かう事にする。
久々に動いたためか、立とうとしてふらつく体を教師が支えた。
抱えようかと言う申し出をやんわり断って、アーリアは歩き始めた。
「君のおかげで、私は間違いを犯さずにすんだ」
「え・・・?」
「ありがとう」
歩きながら教師に告げられた言葉に、またアーリアは驚く。
教師は穏やかに微笑むと、彼女の頭をぽんと撫でた。
驚いたままの彼女を寮へ送り届けると、教師は仕事へと戻って行く。
その姿を見送ったアーリアは、うまく動かない体を動かして身支度をする。
「ふー・・・」
シャワーを浴び、着替えを終えると、ベッドへと倒れこむ。
一人で考えていると夢のことばかり思い出しそうで、無理やりスコールたちのことを考えた。
スコール達はFHへ降りていると聞いたし、自分もFHへ行った方がいいのだろうか。
そこまで考え目を閉じる。
体がだるい。
「んー」
やっとの思いで、体を持ち上げてよたよたと歩き始める。
学園中で声を掛けられ、混乱しながらもFHへ降りる。
海に浮かぶ、人工島であるFH。
沈みかけた日が、島をぐるりと囲む太陽光発電装置に照らされていた。
休憩を兼ね、座り込み、その景色を眺める。
「これは、これで綺麗・・・なのかな」
「FHは初めてかね」
「はい」
隣へいいか、と突然話かけてきた老爺は座り込む。
話を聞けばこの町の責任者であるという老爺―ドープ―に、アーリアは驚く。
一方ドープも彼女がガーデンの人間だと知りとても驚いていた。
「何か?」
「いや、済まない
君があの武装集団とは違う様に見えてね」
武装集団という否定的な言葉に、FHは平和を好む町だったとアーリアは思い出す。
それでも隣から立とうとしないドープに彼女はゆっくりと語り掛けた。
「最初は・・・自分を守るために武力は必要でした
でも、最初はすごく嫌だったんです
剣を振ることも戦う事も怖かった
でも友人を守るために剣を振るうのは怖くなった・・・守れたことをうれしいと思いました」
「暴力は暴力を生むだろう」
「話して、理解して
そうだったらとてもよかったと思います
でも、彼女は生まれた瞬間から狙われる立場の人間で
彼女は少し特別な血が入ってて、研究材料として軍に狙われていたんです」
その言葉にドープは眉を潜める。何か思うところがあるのだろう。
暴力は暴力を生む。確かにそうだけれど、暴力でなければ立ち向かえないときもある。
「剣をとって分ったことがあるんです」
「・・・なんだね」
「私が今まで身を置いていた安全は、誰かが戦って作ったものだってことです
町の一つにしたって、誰かがモンスターを倒して作り上げた場所で
町から町の移動だって、誰かが守ってくれたからできた事なんです」
「そう、だな」
「だから、今、私が剣を持っているからこそできることがあると思うんです
何かを守りたいと、そう思うんです」
そうアーリアは夕日を見つめる。
(2015/01/01)
(2016/08/14修正)
あれは夢だったのだろうか。
夢にしては出来すぎてるなぁ。
27.夕闇の真
目が覚めた瞬間目に入ったのは、白い天井。視線を横へずらせば、校門のところに居た教師がこちらを心配そうに見つめていた。
「目が覚めたんだね」
すぐに教師がカドワキを呼びに行き、カドワキが側に来る。
簡単に脈や熱を測り、一息つく。
「どのくらい、・・・寝てました」
「大体5日くらいかな」
予想外に長い時間にアーリアは眼を見開く。
ミサイルは、ミサイル班のみんなはと、矢継ぎ早に質問をする。
ミサイルはガーデンを動かせたことにより阻止できた事。
ミサイル班は無事に帰ってこれた事。
そして、動き出したガーデンが制御不能となりFHに突っ込んだこと。
苦笑いをしつつも丁寧にカドワキと教師は教えてくれた。
「あれ、怪我治ってる・・?」
「ああ、それはねみんなが回復魔法を掛けていったんだよ」
凄まじく効きが悪かったから学園中の人が総出だったと言うカドワキに、驚いた様にアーリアは眼を見開き瞬かせる。自分でかけた時は気が付かなかったが、少しは魔法が効いていたらしい。あるいは、時の経過で魔女の魔法が弱まったのかもしれない。
しげしげと傷のあった部分を見つめるアーリアに、カドワキは苦笑いのまま言葉をかける。
「みんな感謝していたよ
アーリアのおかげでガーデンが助かったって」
「・・・そう、ですか」
「大体無茶をし過ぎだよ
怠さとか、熱とか、元々あっただろう」
そうだったような、そうじゃなかったような。
手を口に当てて黙り込む。カドワキの説教は自分の体を大事にしろと言うもので、アーリアは困ったように頷いた。
「当分はバトルも無茶も禁止だよ」
「分りました」
こくりと頷くアーリアを確認し、カドワキはようやくベッドから出る許可を出した。
入れ替わりで、教師が入ってくる。
「寮まで戻るのか?」
「はい」
「送って行こう」
教師の言葉に甘え共に寮へと向かう事にする。
久々に動いたためか、立とうとしてふらつく体を教師が支えた。
抱えようかと言う申し出をやんわり断って、アーリアは歩き始めた。
「君のおかげで、私は間違いを犯さずにすんだ」
「え・・・?」
「ありがとう」
歩きながら教師に告げられた言葉に、またアーリアは驚く。
教師は穏やかに微笑むと、彼女の頭をぽんと撫でた。
驚いたままの彼女を寮へ送り届けると、教師は仕事へと戻って行く。
その姿を見送ったアーリアは、うまく動かない体を動かして身支度をする。
「ふー・・・」
シャワーを浴び、着替えを終えると、ベッドへと倒れこむ。
一人で考えていると夢のことばかり思い出しそうで、無理やりスコールたちのことを考えた。
スコール達はFHへ降りていると聞いたし、自分もFHへ行った方がいいのだろうか。
そこまで考え目を閉じる。
体がだるい。
「んー」
やっとの思いで、体を持ち上げてよたよたと歩き始める。
学園中で声を掛けられ、混乱しながらもFHへ降りる。
海に浮かぶ、人工島であるFH。
沈みかけた日が、島をぐるりと囲む太陽光発電装置に照らされていた。
休憩を兼ね、座り込み、その景色を眺める。
「これは、これで綺麗・・・なのかな」
「FHは初めてかね」
「はい」
隣へいいか、と突然話かけてきた老爺は座り込む。
話を聞けばこの町の責任者であるという老爺―ドープ―に、アーリアは驚く。
一方ドープも彼女がガーデンの人間だと知りとても驚いていた。
「何か?」
「いや、済まない
君があの武装集団とは違う様に見えてね」
武装集団という否定的な言葉に、FHは平和を好む町だったとアーリアは思い出す。
それでも隣から立とうとしないドープに彼女はゆっくりと語り掛けた。
「最初は・・・自分を守るために武力は必要でした
でも、最初はすごく嫌だったんです
剣を振ることも戦う事も怖かった
でも友人を守るために剣を振るうのは怖くなった・・・守れたことをうれしいと思いました」
「暴力は暴力を生むだろう」
「話して、理解して
そうだったらとてもよかったと思います
でも、彼女は生まれた瞬間から狙われる立場の人間で
彼女は少し特別な血が入ってて、研究材料として軍に狙われていたんです」
その言葉にドープは眉を潜める。何か思うところがあるのだろう。
暴力は暴力を生む。確かにそうだけれど、暴力でなければ立ち向かえないときもある。
「剣をとって分ったことがあるんです」
「・・・なんだね」
「私が今まで身を置いていた安全は、誰かが戦って作ったものだってことです
町の一つにしたって、誰かがモンスターを倒して作り上げた場所で
町から町の移動だって、誰かが守ってくれたからできた事なんです」
「そう、だな」
「だから、今、私が剣を持っているからこそできることがあると思うんです
何かを守りたいと、そう思うんです」
そうアーリアは夕日を見つめる。
(2015/01/01)
(2016/08/14修正)