風神と雷神の二人がガルバディア軍へと入り、初めに与えられた任務はバラムでのエルオーネ捜索と港の焼き払い。
そこで彼らはスコール達と再開するものの、SeeDである彼らにかなうはずもなく、負けてしまう。
「ちょっと待って
アーリアが居なくなってしまったの、あなた達何か知らない?」
「アーリアお前らと一緒に行動するようになってから辛そうだもんよ!
死に掛けてるのも、泣いてるのも俺たち初めてみたもんよ!
アーリアはサイファーと居たほうが幸せだもんよ!」
「雨達供、アーリア不幸!」
怪我をした体を引きずり、風神と雷神はそう吐き捨てて去って行った。
目を覚ますと、そこは知らない部屋で。最近こんなことばっかり、と目をこする。
風神と雷神の二人に裏切られた悲しさは不思議となかった。二人がどうしてこんなことをしたのか。なんとなくアーリアには分ったからだ。
「アーリア」
「・・・サイ、ファー」
小さな音を立て、入ってきたのはサイファーだった。立場こそ昔とは違えど、その眼は昔と同じだった。そのことに、アーリアは一つ安堵を漏らす。
優しい手が、アーリアの怪我を確かめていた手が、不意に離される。
「ねぇ、サイ「魔女が呼んでる」」
その言葉に、アーリアは開いた口を閉じた。サイファーは返事も聞かず、彼女の手を引き歩き始めた。
戸惑う彼女を連れながら、サイファーはゆっくり口を開く。
「安心しろ、俺がお前を守ってやる」
「・・・?」
”助けて”そう言っているように、アーリアには聞こえた。
自身を掴むその手が震えている気がして、彼女は強くその手を握り返す。
どこかで目にしたことのあるこの場所は、どうやらガルバディアガーデンだったらしく、学園長室へと連れて行かれる。魔女はアーリアを見ると冷たい目を彼女に向けた。
「お前は
・・・
お前の力で、過去を見ることはできるか」
その言葉にバッとサイファーを振り向くが、彼はまっすぐ魔女を見ていた。それからゆっくり魔女へ視線を戻し、緩く首を横へ振った。
アーリアの使う魔法はただの自然の力を引き出す知識であり、魔女の魔法ほど汎用性はない。そんな魔女にできないことができるのか、それはアーリアには分らなかった。
「でも、自然の豊かな場所・・・花畑とか
そう言う所連れて行ってもらえればできるかもしれない
この星にその力があればだけど」
魔女の体からふと魔力があふれ出し、そして下がれと命令をだした。そんな魔女の本心を測り兼ね、アーリアはサイファーを仰ぎ見る。こちらはこちらで微妙な表情をしていて。
「(何を迷っているんだろう)」
行きと同じように握られた手にも、捕えられているという事実もなにも怖くはない。
ただサイファーが心配だった。きっと風神たちもこんな気持ちなのだろう。
「サイファー、見張っておけ」
「・・・分った」
魔女は豊かな土地を探すことにしたのだろう。部屋を出ようとしたサイファーにそう投げかけた。
部屋に戻る道中ずっと、アーリアは考え込んでいた。魔女の本心は、世界征服などと言う物ではないとそう思ったのだ。
何故魔女は過去などを欲しがった?
「・・・、アーリア」
「っなに」
「着いたぞ」
考え込むアーリアの背をサイファーが押した。扉を開け、彼女を部屋へと入れる。捕虜に対する態度とは到底思えない優しい手つきであった。
だから彼女はもう一度口を開いてみることにしたのだ。
「ねぇ、サイファー
サイファーは、なんであの人の騎士をしているの」
おそらくサイファーは今の状態が正しくないと思っているのだろう。悩んで、苦しんで、それでもアーリア達の敵に回る。
魔法を掛けられているのかもしれないし、そうじゃないのかもしれない。
ただ、どちらであってもサイファーの心はつらいのだろうとそう思った。
「俺は・・・っ」
「サイファー?」
途端に頭を抱えた。ああ、やはり魔法を掛けられているのかもしれない。アーリアはサイファーを心配そうに見上げた。
ブツブツと、サイファーは何かを反芻しやがてアーリアに視線を合わせる。
「夢だった・・・それだけじゃない・・?
そうだ―――先生
魔女は、ママ先生
孤児院で、俺たちを育ててくれた」
「孤児院?」
「俺と・・・スコールと、先生、チキン野郎、伝令の女、狙撃手
みんな一緒だった」
その言葉にアーリアは難しい顔をする。その記憶は本物なのかどうか、彼女には分らなかったからだ。
偽物にしろ本物にしろ、彼はその記憶に苦しめられている。
先生は俺が守る、消え入りそうな声で告げられた言葉は、やはり助けを呼ぶ声に似ていた。
(2015/01/14)
(2016/08/14修正)
そこで彼らはスコール達と再開するものの、SeeDである彼らにかなうはずもなく、負けてしまう。
「ちょっと待って
アーリアが居なくなってしまったの、あなた達何か知らない?」
「アーリアお前らと一緒に行動するようになってから辛そうだもんよ!
死に掛けてるのも、泣いてるのも俺たち初めてみたもんよ!
アーリアはサイファーと居たほうが幸せだもんよ!」
「雨達供、アーリア不幸!」
怪我をした体を引きずり、風神と雷神はそう吐き捨てて去って行った。
32.助けてよ
目を覚ますと、そこは知らない部屋で。最近こんなことばっかり、と目をこする。
風神と雷神の二人に裏切られた悲しさは不思議となかった。二人がどうしてこんなことをしたのか。なんとなくアーリアには分ったからだ。
「アーリア」
「・・・サイ、ファー」
小さな音を立て、入ってきたのはサイファーだった。立場こそ昔とは違えど、その眼は昔と同じだった。そのことに、アーリアは一つ安堵を漏らす。
優しい手が、アーリアの怪我を確かめていた手が、不意に離される。
「ねぇ、サイ「魔女が呼んでる」」
その言葉に、アーリアは開いた口を閉じた。サイファーは返事も聞かず、彼女の手を引き歩き始めた。
戸惑う彼女を連れながら、サイファーはゆっくり口を開く。
「安心しろ、俺がお前を守ってやる」
「・・・?」
”助けて”そう言っているように、アーリアには聞こえた。
自身を掴むその手が震えている気がして、彼女は強くその手を握り返す。
どこかで目にしたことのあるこの場所は、どうやらガルバディアガーデンだったらしく、学園長室へと連れて行かれる。魔女はアーリアを見ると冷たい目を彼女に向けた。
「お前は
・・・
お前の力で、過去を見ることはできるか」
その言葉にバッとサイファーを振り向くが、彼はまっすぐ魔女を見ていた。それからゆっくり魔女へ視線を戻し、緩く首を横へ振った。
アーリアの使う魔法はただの自然の力を引き出す知識であり、魔女の魔法ほど汎用性はない。そんな魔女にできないことができるのか、それはアーリアには分らなかった。
「でも、自然の豊かな場所・・・花畑とか
そう言う所連れて行ってもらえればできるかもしれない
この星にその力があればだけど」
魔女の体からふと魔力があふれ出し、そして下がれと命令をだした。そんな魔女の本心を測り兼ね、アーリアはサイファーを仰ぎ見る。こちらはこちらで微妙な表情をしていて。
「(何を迷っているんだろう)」
行きと同じように握られた手にも、捕えられているという事実もなにも怖くはない。
ただサイファーが心配だった。きっと風神たちもこんな気持ちなのだろう。
「サイファー、見張っておけ」
「・・・分った」
魔女は豊かな土地を探すことにしたのだろう。部屋を出ようとしたサイファーにそう投げかけた。
部屋に戻る道中ずっと、アーリアは考え込んでいた。魔女の本心は、世界征服などと言う物ではないとそう思ったのだ。
何故魔女は過去などを欲しがった?
「・・・、アーリア」
「っなに」
「着いたぞ」
考え込むアーリアの背をサイファーが押した。扉を開け、彼女を部屋へと入れる。捕虜に対する態度とは到底思えない優しい手つきであった。
だから彼女はもう一度口を開いてみることにしたのだ。
「ねぇ、サイファー
サイファーは、なんであの人の騎士をしているの」
おそらくサイファーは今の状態が正しくないと思っているのだろう。悩んで、苦しんで、それでもアーリア達の敵に回る。
魔法を掛けられているのかもしれないし、そうじゃないのかもしれない。
ただ、どちらであってもサイファーの心はつらいのだろうとそう思った。
「俺は・・・っ」
「サイファー?」
途端に頭を抱えた。ああ、やはり魔法を掛けられているのかもしれない。アーリアはサイファーを心配そうに見上げた。
ブツブツと、サイファーは何かを反芻しやがてアーリアに視線を合わせる。
「夢だった・・・それだけじゃない・・?
そうだ―――先生
魔女は、ママ先生
孤児院で、俺たちを育ててくれた」
「孤児院?」
「俺と・・・スコールと、先生、チキン野郎、伝令の女、狙撃手
みんな一緒だった」
その言葉にアーリアは難しい顔をする。その記憶は本物なのかどうか、彼女には分らなかったからだ。
偽物にしろ本物にしろ、彼はその記憶に苦しめられている。
先生は俺が守る、消え入りそうな声で告げられた言葉は、やはり助けを呼ぶ声に似ていた。
(2015/01/14)
(2016/08/14修正)