港の焼き討ちを一旦止め、ガーデンはどこかを目的地に定め飛び始めた。
任務へ行っていた風神先輩と雷神先輩も帰ってきて、兵士と一緒に訓練をしている。
私は、部屋から出ることを許されないので、応接室でサイファーと過ごしていた。
どうするべきかを考えるが、魔女の力が分らない以上どうすることもできない。今はただ、状況が変わるのを待つべきだと、そう思った。
頭痛も収まったサイファーは、予想外のアーリアとの同行に内心安堵を覚えていた。難しい顔で黙り込む、そんな彼女の頭を撫ぜると、驚いた様にこちらを見上げ戸惑う様な笑顔を浮かべた。
聞いてはいたものの、アーリアの笑顔にサイファーはたじろぐ。笑う事ができる様になったのは良かったはずなのに、胸のモヤモヤがはれる事はない。”自分が”アーリアを変えたかったのだ。
「サイファー?」
「いや・・・・何があった?」
若干のイラつきを隠しサイファーはアーリアに尋ねる。少し迷った後、彼女は言葉を紡ぐ。
「色々
いつか帰るとしても、ここに居られなくなっても
それでも、みんなと仲良くしていきたいと思ったの
たぶんエアリスはあんな私を喜ばないから・・・」
嬉しそうに浮かべた笑顔は、確かにあの時サイファーが望んだものだ。
「サイファー」
紡がれるのも自分の名前。それなのに、モヤモヤは増えていくばかり。
無意識に眉間にしわを寄せそれを聞く。サイファーの様子には気づかずに、笑顔のままアーリアは続けた。
白いコートの袖をつかみその顔を見上げる。
「サイファーが居てくれたから
そう思えるようになった」
弾かれる様に、アーリアの体を引き寄せた。
―――もう、帰さない。帰したくない。スコール達の所にも、元の世界にも。
サイファーがきつくアーリアを抱きしめる。SeeD就任パーティの続きのようなその行動に彼女の頬は朱に染まった。
立場は変わってしまったけれど、アーリアもあの頃とは違う。だからこそ、今度はそれを拒否する事はできない。
拒否されない事に気を良くしたサイファーが腕の力を緩めると、アーリアがサイファーを見上げた。
「サイ、ファー・・・?」
学園で抱きしめた時に見た泣きそうな顔ではない。赤くなったその顔は、サイファーの欲を掻き立てる。
思わず、その顔に手をかけた。
―――トントン
瞬間、ドアから聞こえる音がアーリアを動かした。サイファーの腕を押しのけ距離をとる。入ってきたのは風神。彼女は赤くなったアーリアをみて首をかしげた。
「魔女、サイファー呼」
その言葉で、今の事などなかったかのようにサイファーの眼は魔女の騎士へと戻る。
それを見た、アーリアも残念な表情を顔に浮かべた。
「見張っておけ」
風神にそう告げるサイファーの表情は、少し辛そうだ。アーリアは困ったように眉尻を下げた。
”魔女”と聞いただけでサイファーは騎士になってしまったから。その表情で今の状況は彼の臨んだものではないのだと分ってしまった。
―――辛いと言うのなら
「次は私が」
「?」
「ううん」
サイファーには沢山助けてもらったから。
魔女から助けてあげる。
(2015/07/11)
(2016/08/14修正)
任務へ行っていた風神先輩と雷神先輩も帰ってきて、兵士と一緒に訓練をしている。
私は、部屋から出ることを許されないので、応接室でサイファーと過ごしていた。
どうするべきかを考えるが、魔女の力が分らない以上どうすることもできない。今はただ、状況が変わるのを待つべきだと、そう思った。
33.えがお
頭痛も収まったサイファーは、予想外のアーリアとの同行に内心安堵を覚えていた。難しい顔で黙り込む、そんな彼女の頭を撫ぜると、驚いた様にこちらを見上げ戸惑う様な笑顔を浮かべた。
聞いてはいたものの、アーリアの笑顔にサイファーはたじろぐ。笑う事ができる様になったのは良かったはずなのに、胸のモヤモヤがはれる事はない。”自分が”アーリアを変えたかったのだ。
「サイファー?」
「いや・・・・何があった?」
若干のイラつきを隠しサイファーはアーリアに尋ねる。少し迷った後、彼女は言葉を紡ぐ。
「色々
いつか帰るとしても、ここに居られなくなっても
それでも、みんなと仲良くしていきたいと思ったの
たぶんエアリスはあんな私を喜ばないから・・・」
嬉しそうに浮かべた笑顔は、確かにあの時サイファーが望んだものだ。
「サイファー」
紡がれるのも自分の名前。それなのに、モヤモヤは増えていくばかり。
無意識に眉間にしわを寄せそれを聞く。サイファーの様子には気づかずに、笑顔のままアーリアは続けた。
白いコートの袖をつかみその顔を見上げる。
「サイファーが居てくれたから
そう思えるようになった」
弾かれる様に、アーリアの体を引き寄せた。
―――もう、帰さない。帰したくない。スコール達の所にも、元の世界にも。
サイファーがきつくアーリアを抱きしめる。SeeD就任パーティの続きのようなその行動に彼女の頬は朱に染まった。
立場は変わってしまったけれど、アーリアもあの頃とは違う。だからこそ、今度はそれを拒否する事はできない。
拒否されない事に気を良くしたサイファーが腕の力を緩めると、アーリアがサイファーを見上げた。
「サイ、ファー・・・?」
学園で抱きしめた時に見た泣きそうな顔ではない。赤くなったその顔は、サイファーの欲を掻き立てる。
思わず、その顔に手をかけた。
―――トントン
瞬間、ドアから聞こえる音がアーリアを動かした。サイファーの腕を押しのけ距離をとる。入ってきたのは風神。彼女は赤くなったアーリアをみて首をかしげた。
「魔女、サイファー呼」
その言葉で、今の事などなかったかのようにサイファーの眼は魔女の騎士へと戻る。
それを見た、アーリアも残念な表情を顔に浮かべた。
「見張っておけ」
風神にそう告げるサイファーの表情は、少し辛そうだ。アーリアは困ったように眉尻を下げた。
”魔女”と聞いただけでサイファーは騎士になってしまったから。その表情で今の状況は彼の臨んだものではないのだと分ってしまった。
―――辛いと言うのなら
「次は私が」
「?」
「ううん」
サイファーには沢山助けてもらったから。
魔女から助けてあげる。
(2015/07/11)
(2016/08/14修正)