―――慣れすぎている。
キスティスはそう思った。
近しい人の裏切り。敵陣に捕まる恐怖。曲がりなりにも教師をしていた自分ですら、こんな状況で冷静に動く自信はない。なぜならそれは、すべて自身の経験したことのないものだからだ。
彼女だって、初めてで。―――初めてのはずで。キスティスの記憶が正しければ彼女が入学したのは13歳だったのだから。
―――どうして
彼女はこんなにも戦場に慣れているのか。
―――どうして
彼女はいつも自分を犠牲にしようとするのか。
いくつもの疑問が沸々と沸き、それを理性で押し殺す。キスティスは、黙ってアーリアを見つめた。銃こそ構えているが、先ほどからモンスター以外との戦闘はないため彼女の出番は殆どない。
「あ、そこ左に曲がってください
そこの階段の踊り場で兵をやり過ごしたらこの道まっすぐです」
―――兵の動きが単純でわかりやすいから、ちゃんと躱せば見張り兵以外には見つからずに魔女の所までたどり着けますよ。
そう言った彼女の言葉通り、今の所ガルバディア兵と遭遇していない。
近しい人に裏切られ、敵陣に囚われて。単独で脱走したことだけでも信じがたいのに、兵の動きや魔女の居場所まで特定している。
頼もしいと同時に、大きな疑問を残さざるを得ない。キスティス以外の面々もそうなのだろう、複雑そうな顔で彼女を見ていた。もっとも、リノアだけはアーリアすごいとはしゃいでいたが。
「すごいねー」
誰もが口を噤む中、声を上げたのはアーヴァイン。声こそ明るいがその本心は詮索だろう。
「まさか、アーリアが銃使えるなんて思わなかったよー
一回も見たことなかったしさ」
「これは・・・対人用ですから」
”対人用?”
彼女は今まで、ガルバディア兵相手でも剣を使用していた。首をかしげたのはアーヴァインも同じようで、どうゆうこと?とアーリアに尋ねる。
「私は力も弱い、剣だってそんなに上手くない
魔法はそれなりに使えるけど、喉を潰されたら私は殆ど戦えない
昔の仲間に言われたんです
”私がアーリアを捕まえる立場だったらまず喉を潰す
だから、小さくて威力のある武器を持て
必ず相手に隙ができるから”って」
―――彼女は一体どんな人生を歩んできたのだろう
10歳そこそこの少女に、銃を持たせる環境。そうまでしないと身を守れない状況が、彼らには想像できない。
魔女戦争で孤児となった彼らですら、イデアと言う大人に、ガーデンと言う組織に守られ今まで育てられてきたのだから。
ああそういえば、私達は彼女の出身地すら知らない。
「仲間?」
「うん」
リノアの問いに、懐かしそうにアーリアが頷いた。更に質問を重ねようとしたリノアを、口に指をあてることでアーリアは黙らせる。
リノアに小さく笑い。
「長いから、これが終わったらね」
そう言った。僕は?と声を上げたアーヴァインにも勿論教えるとそう笑った。
(2015/07/11)
(2016/08/14修正)
キスティスはそう思った。
近しい人の裏切り。敵陣に捕まる恐怖。曲がりなりにも教師をしていた自分ですら、こんな状況で冷静に動く自信はない。なぜならそれは、すべて自身の経験したことのないものだからだ。
彼女だって、初めてで。―――初めてのはずで。キスティスの記憶が正しければ彼女が入学したのは13歳だったのだから。
37.ちぐはぐ少女
―――どうして
彼女はこんなにも戦場に慣れているのか。
―――どうして
彼女はいつも自分を犠牲にしようとするのか。
いくつもの疑問が沸々と沸き、それを理性で押し殺す。キスティスは、黙ってアーリアを見つめた。銃こそ構えているが、先ほどからモンスター以外との戦闘はないため彼女の出番は殆どない。
「あ、そこ左に曲がってください
そこの階段の踊り場で兵をやり過ごしたらこの道まっすぐです」
―――兵の動きが単純でわかりやすいから、ちゃんと躱せば見張り兵以外には見つからずに魔女の所までたどり着けますよ。
そう言った彼女の言葉通り、今の所ガルバディア兵と遭遇していない。
近しい人に裏切られ、敵陣に囚われて。単独で脱走したことだけでも信じがたいのに、兵の動きや魔女の居場所まで特定している。
頼もしいと同時に、大きな疑問を残さざるを得ない。キスティス以外の面々もそうなのだろう、複雑そうな顔で彼女を見ていた。もっとも、リノアだけはアーリアすごいとはしゃいでいたが。
「すごいねー」
誰もが口を噤む中、声を上げたのはアーヴァイン。声こそ明るいがその本心は詮索だろう。
「まさか、アーリアが銃使えるなんて思わなかったよー
一回も見たことなかったしさ」
「これは・・・対人用ですから」
”対人用?”
彼女は今まで、ガルバディア兵相手でも剣を使用していた。首をかしげたのはアーヴァインも同じようで、どうゆうこと?とアーリアに尋ねる。
「私は力も弱い、剣だってそんなに上手くない
魔法はそれなりに使えるけど、喉を潰されたら私は殆ど戦えない
昔の仲間に言われたんです
”私がアーリアを捕まえる立場だったらまず喉を潰す
だから、小さくて威力のある武器を持て
必ず相手に隙ができるから”って」
―――彼女は一体どんな人生を歩んできたのだろう
10歳そこそこの少女に、銃を持たせる環境。そうまでしないと身を守れない状況が、彼らには想像できない。
魔女戦争で孤児となった彼らですら、イデアと言う大人に、ガーデンと言う組織に守られ今まで育てられてきたのだから。
ああそういえば、私達は彼女の出身地すら知らない。
「仲間?」
「うん」
リノアの問いに、懐かしそうにアーリアが頷いた。更に質問を重ねようとしたリノアを、口に指をあてることでアーリアは黙らせる。
リノアに小さく笑い。
「長いから、これが終わったらね」
そう言った。僕は?と声を上げたアーヴァインにも勿論教えるとそう笑った。
(2015/07/11)
(2016/08/14修正)