Eternal Oath

膝をついたまま魔女が右手を上げた。その手から光が放たれると、スコール達は吹き飛んだ。
それでもアーリアが目を覚ますことができたのは、吹き飛ばされた際近くにいたスコールが庇ったからである。
病み上がりにリミット技を使った影響か、体中が悲鳴を上げた。それでも、アーリアは顔をあげ、魔女を確認しようとした。

目に入ったのは、リノアに覆いかぶさるサイファーの姿。その姿はキスシーンの様に見えた。

39.リノア


「・・・っ、アーリア!」
「っ!!?」


自身を呼ぶ声に私は飛び起きた。そのまま気絶してしまったのだと、手元に武器を探るがさわりとした感覚が手のひらに広がるだけだった。
違和感を覚え周りを見回せば、心配そうに私を覗き込んでいたカドワキ先生とキスティス先生と目が合う。よくよく見回せば、見慣れた風景。ああ、保健室だと私が理解するまでそう時間はかからなかった。


「・・・みんなは?」
「はぁ、こんな時ぐらい自分の心配できないのかね」


慌ててみんなの安否を聞けば、なぜかカドワキ先生に溜息をつかれた。
その反応に、みんなは無事なのかと思った。しかし、それは早計だったとそうキスティス先生が告げた。


「それが、リノアが―――」


言葉で人が殺せるとするならば、その時私は死んでもおかしくなかったと思う。そのくらい、その言葉は辛く信じがたいものだった。

飛び起きる様にベッドから降りると、まだふら付く足で二人の静止を振り切って走った。嘘であってほしいと思う心と同時に、感じる嫌な気配。それは、キスティス先生の言葉を肯定するもの。
それでも、信じられないという気持ちだけで私は走った。

「リノアは!?」

小さな音を立てて自動ドアが開く、その数秒すらおしくて、ドアが開き切る前に私はリノアの傍らに立つスコールに声をかけた。
スコールはこちらをちらりと見ると、小さく首を振った。それが答えだった。転ぶ様にリノアの側に膝をついて、その顔に触れると冷たい感触。ただ、死んではいないようだ。それだけが救いだった。


「どうして・・・」
「分らない」


どうして、魔女の気配がリノアからするの!?
そう叫びたいのをぐっと抑え、私は立ち上がった。自分を落ち着けるために、深く息を吸って吐く。肋骨でも折れているのか、胸の辺りがきしりと痛んだ。

私の最後の記憶は、あのサイファーとリノアのキスシーン。サイファーは魔女の騎士だったことを考慮すれば、あれは何か魔女にとって意味のある行動だったのではないか。

アーリア・・・?」

こういう時、クラウドたちはどうしていた?
口元に手をあて、それだけを思い起こす。不思議とエアリスの事は思い出さず、今やらなければならない事だけが分った。

大丈夫、”今度は”大丈夫。


「スコール、イデア・・・イデアを探そう」


スコールの腕を引っ張って、立たせる。ここで沈んでいてもできる事などなにもない。


「・・・」
「リノアは、カドワキ先生に任せよう
ここで、うじうじしてても何も始まらないよ」


スコールと自分自身を奮い立たせるために私は強い言葉を選んだ。
それでも、立ち上がることのないスコールにしびれを切らせて、私は彼の手を掴んだ。


(2016/02/28)