「久しぶりラグナ」
え?なにこのかわいい生物。ラグナは思った。
あんぐりと口を開けた彼を見て、ふわりと笑ったままのアーリアが小首をかしげる。
「っ」
ずっと望んでいたその姿に、小さな彼女の体を抱き寄せ、ラグナはめちゃくちゃにアーリアの頭を撫でまわした。
ご満悦なラグナの一方で、ぐわんぐわんと揺れる頭にアーリアは眉根を寄せた。それを不機嫌そうにスコールは見る。
「なんのために呼んだんだ。なんのために」相手がラグナでなければ、大統領でなければ、きっとこう言っていたに違いない。
イデアの家でエスタからの通信をキャッチしたスコールたちは、アルティミシアを倒す作戦があると聞きエスタへと来ていた。
ラグナからは解放されたが、今度はキロスに撫でられている、そんなアーリアが最初に切り出す。
「で、アルティミシアをどうやって倒すの?」
再びアーリアが小首をかしげる。
「出番でおじゃるか?」
先のことも忘れ、笑顔で声を張り上げたオダインを見、アーリアの顔から笑顔が消えた。やはりオダインの事は嫌いなままらしいアーリアの様子に、慌てた様子のラグナが詳しくは俺が説明をすると声を上げた。
そして、ラグナはにっと歯茎を見せて笑うと、アーリアをポンと撫ぜた。
「作戦はよ!ラグナロクの中でしようぜ!」
はあ、と隠さずスコールはため息をついた。知ってはいたが、この男は自由すぎる。
「きゃっ」
さっさと前を歩きだす大統領を見て、ウォードがアーリアを抱え上げる。つまりは、彼も子供好きなのだ。アーリアをかまい倒す、二人ばかりずるい、と考えていたのは内緒である。
目を白黒させながらも、抵抗しない彼女を肩の上へと座らせる。体こそ小さめとはいえ16歳の少女を肩に載せてもびくともしないウォードに、そういえば彼は巨大なハープーンを武器として使っていたっけとアーリアは思い出す。今ではもう戦うことはないとは言っていたが訓練は続けているのだろう。安定を求めて回した手が、しっかりとした筋肉の感触を伝えた。
何も言葉が思い浮かばず、曖昧な笑みでウォードを見下ろすと、彼はゆっくりと笑みを浮かべた。
「ありがとうウォード」
よかったとか、笑顔の方がいいとかきっとそんな感じの事を言われたのだと、アーリアは思った。小走りのラグナに対し、ウォードは徒歩であるがそんなことは欠片も感じさせず、やはり一歩が大きいんだろうなと考えながら、楽し気に彼に揺られた。
しかし、楽しい時間というものはあっという間で、ラグナロクの入口へとついてしまう。何とか抱えたまま入りたいウォードであったが、彼の身長だけでもかがまなければ入れない。
「・・・」
「入れないね」
とん、と軽やかに着地して、アーリアはウォードに礼を言う。
「またね、抱えてくれる?」
”もちろん”と、言わんばかりにウォードは肩をたたいた。それを、懐かしいとアーリアは思った。
昔ね、そう言いかけてアーリアは止める。
一番に話すと約束をした。
ふるふると頭を軽く振ってその考えを消し去る。思い出が紐づいて、するすると止まらない。
そんなアーリアをしり目に、先頭を歩くラグナがここだ!と声を上げる。そこは乗客用椅子の並ぶエリアで、窓を背景にラグナは皆の顔を見回すと、深呼吸を一つ、ゆっくりと語り始めた。
作戦内容は、エルオーネの捕らえられているルナティック・パンドラへと向かい、アデルを倒す。そして、唯一の魔女となったリノアを操ろうとするアルティミシアを利用する。意図的に時間圧縮を行い未来へたどり着きアルティミシア本体を倒すんだと彼は言う。
アルティミシアのいる遠い未来、―――彼らの誰もが本来ならば存在できるはずのない時間にたどり着くには、お互いの存在を信じあうことが重要だ。
時間圧縮の世界では、仲間のいる場所、仲間の事、そう言う事を考え目指せばどんな世界でもたどり着ける。
「だから、アーリア。
アーリアはここに残れ」
スコールの初めて見るまじめな顔で、ラグナはアーリアの両肩に手を置いた。
対して、アーリアは静かに首を横に振り答えとした。
(2016/09/04)
え?なにこのかわいい生物。ラグナは思った。
あんぐりと口を開けた彼を見て、ふわりと笑ったままのアーリアが小首をかしげる。
「っ」
ずっと望んでいたその姿に、小さな彼女の体を抱き寄せ、ラグナはめちゃくちゃにアーリアの頭を撫でまわした。
ご満悦なラグナの一方で、ぐわんぐわんと揺れる頭にアーリアは眉根を寄せた。それを不機嫌そうにスコールは見る。
「なんのために呼んだんだ。なんのために」相手がラグナでなければ、大統領でなければ、きっとこう言っていたに違いない。
45.愛と勇気の大作戦
イデアの家でエスタからの通信をキャッチしたスコールたちは、アルティミシアを倒す作戦があると聞きエスタへと来ていた。
ラグナからは解放されたが、今度はキロスに撫でられている、そんなアーリアが最初に切り出す。
「で、アルティミシアをどうやって倒すの?」
再びアーリアが小首をかしげる。
「出番でおじゃるか?」
先のことも忘れ、笑顔で声を張り上げたオダインを見、アーリアの顔から笑顔が消えた。やはりオダインの事は嫌いなままらしいアーリアの様子に、慌てた様子のラグナが詳しくは俺が説明をすると声を上げた。
そして、ラグナはにっと歯茎を見せて笑うと、アーリアをポンと撫ぜた。
「作戦はよ!ラグナロクの中でしようぜ!」
はあ、と隠さずスコールはため息をついた。知ってはいたが、この男は自由すぎる。
「きゃっ」
さっさと前を歩きだす大統領を見て、ウォードがアーリアを抱え上げる。つまりは、彼も子供好きなのだ。アーリアをかまい倒す、二人ばかりずるい、と考えていたのは内緒である。
目を白黒させながらも、抵抗しない彼女を肩の上へと座らせる。体こそ小さめとはいえ16歳の少女を肩に載せてもびくともしないウォードに、そういえば彼は巨大なハープーンを武器として使っていたっけとアーリアは思い出す。今ではもう戦うことはないとは言っていたが訓練は続けているのだろう。安定を求めて回した手が、しっかりとした筋肉の感触を伝えた。
何も言葉が思い浮かばず、曖昧な笑みでウォードを見下ろすと、彼はゆっくりと笑みを浮かべた。
「ありがとうウォード」
よかったとか、笑顔の方がいいとかきっとそんな感じの事を言われたのだと、アーリアは思った。小走りのラグナに対し、ウォードは徒歩であるがそんなことは欠片も感じさせず、やはり一歩が大きいんだろうなと考えながら、楽し気に彼に揺られた。
しかし、楽しい時間というものはあっという間で、ラグナロクの入口へとついてしまう。何とか抱えたまま入りたいウォードであったが、彼の身長だけでもかがまなければ入れない。
「・・・」
「入れないね」
とん、と軽やかに着地して、アーリアはウォードに礼を言う。
「またね、抱えてくれる?」
”もちろん”と、言わんばかりにウォードは肩をたたいた。それを、懐かしいとアーリアは思った。
昔ね、そう言いかけてアーリアは止める。
一番に話すと約束をした。
ふるふると頭を軽く振ってその考えを消し去る。思い出が紐づいて、するすると止まらない。
そんなアーリアをしり目に、先頭を歩くラグナがここだ!と声を上げる。そこは乗客用椅子の並ぶエリアで、窓を背景にラグナは皆の顔を見回すと、深呼吸を一つ、ゆっくりと語り始めた。
作戦内容は、エルオーネの捕らえられているルナティック・パンドラへと向かい、アデルを倒す。そして、唯一の魔女となったリノアを操ろうとするアルティミシアを利用する。意図的に時間圧縮を行い未来へたどり着きアルティミシア本体を倒すんだと彼は言う。
アルティミシアのいる遠い未来、―――彼らの誰もが本来ならば存在できるはずのない時間にたどり着くには、お互いの存在を信じあうことが重要だ。
時間圧縮の世界では、仲間のいる場所、仲間の事、そう言う事を考え目指せばどんな世界でもたどり着ける。
「だから、アーリア。
アーリアはここに残れ」
スコールの初めて見るまじめな顔で、ラグナはアーリアの両肩に手を置いた。
対して、アーリアは静かに首を横に振り答えとした。
(2016/09/04)