「サイファーを助けに来たんだよ」
サイファーの目の前、アーリアがそう言った。一瞬眉根を寄せた彼は、すぐに眉を吊り上げてガンブレードを抜く。
「助ける?何を言ってやがる俺は「助けに、来たの」」
威嚇のため振り回されたガンブレードに圧されること無く、アーリアはもう一度言った。
ルナティックパンドラの奥、アデルを守るように通路を守っていたのはサイファーであった。予想通りの展開に、アーリアは手のひらをぎりりと握りしめた。
大丈夫。絶対に大丈夫。何度も自分に言い聞かせるのは、説得だなんて初めてする事だから。
いつだって一方的に狙われてきた彼女が敵と話をするなんてことは無かった。それでも説得しようと思うのは、辛そうな彼を覚えているからだ。
(サイファーは私の声聞いてくれるかな?魔女の力は、魔法だけじゃ解けないから―――話聞いてくれるといいな)それは星が教えてくれたこと。持ち主が死んでも星に帰ることのない魔女の力は、アーリアが使う魔法とは真逆であり、ある種ジェノバのような異質さをはらむものだった。故に、アーリアの用いる魔法だけでは消すことが難しい。
「ね、サイファー」
少しだけ声を震わせて、アーリアが一歩前へと進み出た。そんな彼女の後ろでは風神と雷神の協力によって助けられたエルオーネがこの作戦の説明を受けている。
そんなエルオーネには目もくれず、サイファーはまっすぐアーリアへと視線を向けた。
「何をしているの?
魔女はもうイデアじゃない、守りたかったママ先生じゃないんだよ」
アーリアが小さく項垂れた。その言葉に驚いたのは風神と雷神の二人で、自分たちの知らないような、そんなことまでアーリアに話していたのだと目を見開く。
一方でサイファーは、興奮した様子で舌打ちをする。それから自信満々な笑を作って手を広げてみせた。
「騎士は廃業した、今の俺は若き革命家ってとこだな」
「革命?」
「俺は、いつまでもでかいことやってたいんだよ!止まって「サイファー!」」
大声に思わず黙るサイファーに、アーリアはゆっくりと顔をあげた。彼の見たことのない表情は、今にも泣き出しそうな笑顔。
魔女によって無理矢理に理由付けされた言動なんか見ていたくなかった。
「もう止めよう。帰ろうよ」
「何を言ってやがる。今更どこにも行けるわけねぇだろ
もう戻れねぇんだよ」
「―――だから、
サイファーを助けに来たんだよ」
サイファーの目の前、アーリアがそう言った。一瞬眉根を寄せた彼は、すぐに眉を吊り上げてガンブレードを抜く。
「助ける?何を言ってやがる俺は「助けに、来たの」」
威嚇のため振り回されたガンブレードに圧されること無く、アーリアはもう一度言った。
「だって、そうじゃなきゃ私の夢、叶わないもん」
「夢」
「うん。覚えてる?」
アーリアが小首を傾げ、サイファーは思わずと言った感じで首を降った。そして、はっと正体を取り戻すと、だから?と続きを促す。
「だからね、サイファーがいなきゃだめなんだよ
私の夢、サイファーがいなくちゃ叶わない」
アーリアの泣きそうな顔がどんどん必死になっていくのと反比例して、サイファーの表情は辛そうなものへと変わっていく。
「サイファーと一緒にいたいよ」
ね、と続ける。
サイファーはもう何も言えなくなっていた。アーリアの願いを叶えたいと、彼女を大切に思っていたはずなのに、どうしてこんな事になってしまったのだろう。
その思いから、サイファーはアーリアに手を伸ばした。
「夢は、仲間と一緒に、暮らすこと」
あの日のアーリアの台詞をサイファーが言った。そこでアーリアは笑顔を見せる。
「うん。サイファーと一緒にいたいの」
サイファーの、伸ばしたままの手がアーリアの肩に触れる。その肩を引き寄せ抱きよせれば、いつかと同じ体温がした。
「サイ「アーリア」」
小さく名前を呼んだ。「助けてくれ」と、もっと小さく耳元で言われた言葉はアーリアにしか聞こえていなかっただろう。
アーリアの手がサイファーの背にまわった。
「うん。
サイファー、大好き」
そう言ったのを皮切りに、アーリアが紡いだ詠唱はサイファーの知らないものであった。しかし、不思議と不安はなく緩やかにサイファーの意識は闇に沈んでいった。
(2017/05/23)
サイファーの目の前、アーリアがそう言った。一瞬眉根を寄せた彼は、すぐに眉を吊り上げてガンブレードを抜く。
「助ける?何を言ってやがる俺は「助けに、来たの」」
威嚇のため振り回されたガンブレードに圧されること無く、アーリアはもう一度言った。
47.君を助けに来ました。
ルナティックパンドラの奥、アデルを守るように通路を守っていたのはサイファーであった。予想通りの展開に、アーリアは手のひらをぎりりと握りしめた。
大丈夫。絶対に大丈夫。何度も自分に言い聞かせるのは、説得だなんて初めてする事だから。
いつだって一方的に狙われてきた彼女が敵と話をするなんてことは無かった。それでも説得しようと思うのは、辛そうな彼を覚えているからだ。
(サイファーは私の声聞いてくれるかな?魔女の力は、魔法だけじゃ解けないから―――話聞いてくれるといいな)それは星が教えてくれたこと。持ち主が死んでも星に帰ることのない魔女の力は、アーリアが使う魔法とは真逆であり、ある種ジェノバのような異質さをはらむものだった。故に、アーリアの用いる魔法だけでは消すことが難しい。
「ね、サイファー」
少しだけ声を震わせて、アーリアが一歩前へと進み出た。そんな彼女の後ろでは風神と雷神の協力によって助けられたエルオーネがこの作戦の説明を受けている。
そんなエルオーネには目もくれず、サイファーはまっすぐアーリアへと視線を向けた。
「何をしているの?
魔女はもうイデアじゃない、守りたかったママ先生じゃないんだよ」
アーリアが小さく項垂れた。その言葉に驚いたのは風神と雷神の二人で、自分たちの知らないような、そんなことまでアーリアに話していたのだと目を見開く。
一方でサイファーは、興奮した様子で舌打ちをする。それから自信満々な笑を作って手を広げてみせた。
「騎士は廃業した、今の俺は若き革命家ってとこだな」
「革命?」
「俺は、いつまでもでかいことやってたいんだよ!止まって「サイファー!」」
大声に思わず黙るサイファーに、アーリアはゆっくりと顔をあげた。彼の見たことのない表情は、今にも泣き出しそうな笑顔。
魔女によって無理矢理に理由付けされた言動なんか見ていたくなかった。
「もう止めよう。帰ろうよ」
「何を言ってやがる。今更どこにも行けるわけねぇだろ
もう戻れねぇんだよ」
「―――だから、
サイファーを助けに来たんだよ」
サイファーの目の前、アーリアがそう言った。一瞬眉根を寄せた彼は、すぐに眉を吊り上げてガンブレードを抜く。
「助ける?何を言ってやがる俺は「助けに、来たの」」
威嚇のため振り回されたガンブレードに圧されること無く、アーリアはもう一度言った。
「だって、そうじゃなきゃ私の夢、叶わないもん」
「夢」
「うん。覚えてる?」
アーリアが小首を傾げ、サイファーは思わずと言った感じで首を降った。そして、はっと正体を取り戻すと、だから?と続きを促す。
「だからね、サイファーがいなきゃだめなんだよ
私の夢、サイファーがいなくちゃ叶わない」
アーリアの泣きそうな顔がどんどん必死になっていくのと反比例して、サイファーの表情は辛そうなものへと変わっていく。
「サイファーと一緒にいたいよ」
ね、と続ける。
サイファーはもう何も言えなくなっていた。アーリアの願いを叶えたいと、彼女を大切に思っていたはずなのに、どうしてこんな事になってしまったのだろう。
その思いから、サイファーはアーリアに手を伸ばした。
「夢は、仲間と一緒に、暮らすこと」
あの日のアーリアの台詞をサイファーが言った。そこでアーリアは笑顔を見せる。
「うん。サイファーと一緒にいたいの」
サイファーの、伸ばしたままの手がアーリアの肩に触れる。その肩を引き寄せ抱きよせれば、いつかと同じ体温がした。
「サイ「アーリア」」
小さく名前を呼んだ。「助けてくれ」と、もっと小さく耳元で言われた言葉はアーリアにしか聞こえていなかっただろう。
アーリアの手がサイファーの背にまわった。
「うん。
サイファー、大好き」
そう言ったのを皮切りに、アーリアが紡いだ詠唱はサイファーの知らないものであった。しかし、不思議と不安はなく緩やかにサイファーの意識は闇に沈んでいった。
(2017/05/23)