Eternal Oath

薄桃色とともにお前が消えてしまうのではないかと思った。

その時、私は漸く気づいたんだ。
お前がすでに”ただの同行者”ではないことに。

薄桃色の―――


「サクラ?」
「ああ」


私たちの視線の先には大きな薄桃色の木。
ドマにしか生息しないというその木は今満開を迎えていた。

ハラハラと舞うその花びらはわずかに私の頬をなぞり、地に落ちる。


「・・・ぁ」


ふと、隣をみると、舞い散る桃色の中彼は静かに花を見上げていた。
その下では、彼の愛犬が自身に積る花びらを振り落としている。


ふいに風が吹く。
漆黒が桃色に埋め尽くされた。


―――ああ、恐ろしい。


「シャドっ」


私は奴に手を伸ばした。


「なんだ」
「いや・・・」


私の手には、彼の黒衣。
上から聞こえる低い声にひどく安堵した。


ひらひらひらひら花びらが舞う。


「・・・俺は」

「?」

「ここにいる」


「っ!?」


思わず手を離した。
そう、先ほど私が手を伸ばしたのは。


―――花びらとともに消えてしまうのではないかと


そう思ったから。


心を見透かされているかのようなシャドウの言葉に、私の顔が熱を放つのがわかった。
それを見た奴は、覆面の下で僅かに笑う。


「そうか」

それを隠すように、私は桜に視線を戻した。

きれいな薄桃色の花。





シャドウの手が私の頭に触れる。


「シャド?」

”どうしたんだ?”


「・・・」


シャドウは答えない。
しかし、奴の手に乗る花びらから察するに、私の頭の花びらを払い落したのだろう。
同様に肩の花びらも払われた。


「ふ・・・」


笑みを浮かべながら、私はシャドウの肩に残る花びらを払う。
残念ながら奴の頭には手が届かない。

その分はシャドウが自分で払った。


「・・・さて」

”行こうか”


私たちは同時に桜に背を向けた。
もうそろそろ歩きはじめないと、町にはたどり着けない。

野営などまっぴらごめんだ。



町を目指し歩く私の隣には、いつもと同じく一人と一匹。

(2011/09/19)

素敵サイト『聖なる灰』様との相互記念に贈らせていただきます。
大変時間がかかってしまい申し訳ありません。
そして、すごく季節はずれですみません。

ずっとストーキングしてきたサイト様なので相互とっても嬉しいです!
これからもよろしくお願いします。