「・・・っ」
シャドが眠るとき良く魘されている事は知っていた。
だから、今日も放っておく・・・そう言うつもりだった。
その日は、シャドが随分酒を飲んでいた。
宿の都合で一つしか取れなかった部屋の片側に、倒れる様に横になり、深く息を吐く。
奴に付き合い随分飲んでしまった。
シャドの方も酒を片づけ就寝したようだ。
少々だるいが、ランプを消さなければならない。
「・・・っ」
薄く漏れた声にベッドサイドのランプを消そうとする私の手が止まった。
魘されている声を聞くのはこれが初めてではない。
シャドが眠るとき良く魘されている事は知っていた。
だから、今日も放っておく・・・そう言うつもりだった。
いつもと違ったのは、シャドが起きる気配がした事。
思わずシャドの方を向けば目が合い、ランプへ伸ばした手をそのまま、固まる。
「・・・・ぁ」
私の口から出たのは間抜けな声で、ピクリとシャドの体が反応した。
橙色の光がゆらゆらとシャドの顔を照らす。
その光がやけに揺らめいて見えるのは決して酒が入っていると言う理由だけではないだろう。
「リズ」
ふらりと立ち上がった。珍しく表情からその真意を読む事が出来ない。
「・・・」
―――いつも魘される
「シャド」
―――それは
「お前も」
―――誰かを・・・
問いには答えぬまま、ランプの光が遮られる。
上体を上げようとベッドの上についた手が、シーツの上を虚しく滑った。
「っつ」
「・・・」
何をやっているのだと、そんな目でこちらを見て、シャドは覆面を乱暴に取りはらった。
ぎしりと二人分の重さに悲鳴を上げるベッドの音を聞きながら、私は今度こそランプの光を消す。
闇に包まれる刹那、橙の寂しそうな素顔が見えた。
(2014/07/28)
続きます。(続きはR-18)
シャドが眠るとき良く魘されている事は知っていた。
だから、今日も放っておく・・・そう言うつもりだった。
橙が写す
その日は、シャドが随分酒を飲んでいた。
宿の都合で一つしか取れなかった部屋の片側に、倒れる様に横になり、深く息を吐く。
奴に付き合い随分飲んでしまった。
シャドの方も酒を片づけ就寝したようだ。
少々だるいが、ランプを消さなければならない。
「・・・っ」
薄く漏れた声にベッドサイドのランプを消そうとする私の手が止まった。
魘されている声を聞くのはこれが初めてではない。
シャドが眠るとき良く魘されている事は知っていた。
だから、今日も放っておく・・・そう言うつもりだった。
いつもと違ったのは、シャドが起きる気配がした事。
思わずシャドの方を向けば目が合い、ランプへ伸ばした手をそのまま、固まる。
「・・・・ぁ」
私の口から出たのは間抜けな声で、ピクリとシャドの体が反応した。
橙色の光がゆらゆらとシャドの顔を照らす。
その光がやけに揺らめいて見えるのは決して酒が入っていると言う理由だけではないだろう。
「リズ」
ふらりと立ち上がった。珍しく表情からその真意を読む事が出来ない。
「・・・」
―――いつも魘される
「シャド」
―――それは
「お前も」
―――誰かを・・・
問いには答えぬまま、ランプの光が遮られる。
上体を上げようとベッドの上についた手が、シーツの上を虚しく滑った。
「っつ」
「・・・」
何をやっているのだと、そんな目でこちらを見て、シャドは覆面を乱暴に取りはらった。
ぎしりと二人分の重さに悲鳴を上げるベッドの音を聞きながら、私は今度こそランプの光を消す。
闇に包まれる刹那、橙の寂しそうな素顔が見えた。
(2014/07/28)
続きます。(続きはR-18)