「十二番隊への書類です」
は?と返していた頃が懐かしい。そんな私です。
ここ数年の間に、このセリフにも慣れてしまいました。
「マーユーリーちゃん、書類ー」
声を上げると涼香はノックもそこそこに十二番隊の隊長室へと入った。
涼香とマユリの関係がばれて以来、十二番隊への書類を届けるのはすべて涼香の役目となっていた。
以前平子と仲が良いとばれたときのように、いやがらせや呼び出しなどが増えなくて良かったと思う。
代わりに書類運搬係にはされているが、大手を振って十二番隊へ遊びに行けるのでよしとする。
きちんとマユリからハンコを貰いそのうえ解剖もされない彼女の存在は瞬く間に全隊へと広まり、自然と十二番隊へ足を運ぶ機会も増えた。
そうして今日も、涼香はビーカーやら検体やらから目を放さないマユリを説得し、ハンコを押させ、ネムのいれたお茶を飲む。
「ネムちゃんのいれるお茶はおいしいねぇ」
ふにゃっと笑いネムにお礼を言う。
今飲んでいるそれが涼香用のそれで、わざわざネムが買ってきているものであることは彼女は知らない。
お茶を飲んで、新作の機械にはしゃいで、忙しいはずなのに一向に涼香は帰ろうとはしなかった。
「涼香さん?」
「何?ネムちゃん」
それを疑問に思ったネムは彼女に聞いた。
バツが悪そうに髪をいじり、帰りたくないと、涼香はため息をつく。
隊舎へ帰れば、涼香を待つのは書類の山と、目を血走らせる弓親、機嫌のわるい更木と一角であろう。
今日は一日書類との格闘で、彼女も書類仕事は好きではなかった。
「実に頭の悪いことだネ」
二人の会話を聞いていたマユリがそう言った。実験から目を離さずに続ける。
「ここにいればいいだけの話だろう?」
ああそっか。
その通りだと涼香は思う。
みなが恐れる技術局。書類すら届けたくないと思われるくらい局長室には来客はない。
ここにいれば少なくとも一時間はサボれるだろう。
どうせ、今日は定時には帰れないしなぁ。
「そ、だね。うん、そーする」
そうして、涼香は数時間の安息を選んだ。
サボると決めた涼香はネムによっかかる。困惑しつつも拒まないネム。
マユリは下がれとネムへ命令を下す。彼女はこれから技術局で実験体の仕事があった。
涼香はネムちゃんあとでお団子たべよーねとネムを見送り、マユリの隣まで移動した。
「暇ー」
「静かにしたまえヨ」
ぶっきらぼうな言葉に嬉しそうに破顔させる。
作業に区切りがつけば構ってくれるという意味だと知っているからだ。
今行っている実験を説明してくれたり、面白い道具をみせてもらったり、彼の話は面白いものばかりだった。
だからマユリからすこし離れ、マユリを待つ。
ふぁ。
小さく欠伸が口からでた。
よく考えればここ数日忙しくて、あまり寝ていない。
寝ちゃおうかな、と涼香は思う。どうせ今日も残業だし、さぼった分だけ仕事は進まない。
「・・・」
コックリ、コックリその揺れは大きくなり。
やがて瞼は完全に落ちる。
マユリは作業をやめ、そんな涼香に近づいた。
まだ眠りは浅いのだろう。僅かに身じろぐ。
髪をよければうっすらと隈が見えた。
「ん、・・・マユリちゃん?」
寝てろと言わんばかりに、マユリは涼香の髪をなぜる。
彼女は体を起こそうとした。構ってくれるのかと。
「眠いなら寝たまえヨ」
「んぅ・・・、起き、るよ?」
そんな言葉とは裏腹に涼香は眠りに入っていった。
(2013.08.09)
(2023/12/02訂正)
は?と返していた頃が懐かしい。そんな私です。
ここ数年の間に、このセリフにも慣れてしまいました。
「さぼっていいですかー?」
「マーユーリーちゃん、書類ー」
声を上げると涼香はノックもそこそこに十二番隊の隊長室へと入った。
涼香とマユリの関係がばれて以来、十二番隊への書類を届けるのはすべて涼香の役目となっていた。
以前平子と仲が良いとばれたときのように、いやがらせや呼び出しなどが増えなくて良かったと思う。
代わりに書類運搬係にはされているが、大手を振って十二番隊へ遊びに行けるのでよしとする。
きちんとマユリからハンコを貰いそのうえ解剖もされない彼女の存在は瞬く間に全隊へと広まり、自然と十二番隊へ足を運ぶ機会も増えた。
そうして今日も、涼香はビーカーやら検体やらから目を放さないマユリを説得し、ハンコを押させ、ネムのいれたお茶を飲む。
「ネムちゃんのいれるお茶はおいしいねぇ」
ふにゃっと笑いネムにお礼を言う。
今飲んでいるそれが涼香用のそれで、わざわざネムが買ってきているものであることは彼女は知らない。
お茶を飲んで、新作の機械にはしゃいで、忙しいはずなのに一向に涼香は帰ろうとはしなかった。
「涼香さん?」
「何?ネムちゃん」
それを疑問に思ったネムは彼女に聞いた。
バツが悪そうに髪をいじり、帰りたくないと、涼香はため息をつく。
隊舎へ帰れば、涼香を待つのは書類の山と、目を血走らせる弓親、機嫌のわるい更木と一角であろう。
今日は一日書類との格闘で、彼女も書類仕事は好きではなかった。
「実に頭の悪いことだネ」
二人の会話を聞いていたマユリがそう言った。実験から目を離さずに続ける。
「ここにいればいいだけの話だろう?」
ああそっか。
その通りだと涼香は思う。
みなが恐れる技術局。書類すら届けたくないと思われるくらい局長室には来客はない。
ここにいれば少なくとも一時間はサボれるだろう。
どうせ、今日は定時には帰れないしなぁ。
「そ、だね。うん、そーする」
そうして、涼香は数時間の安息を選んだ。
サボると決めた涼香はネムによっかかる。困惑しつつも拒まないネム。
マユリは下がれとネムへ命令を下す。彼女はこれから技術局で実験体の仕事があった。
涼香はネムちゃんあとでお団子たべよーねとネムを見送り、マユリの隣まで移動した。
「暇ー」
「静かにしたまえヨ」
ぶっきらぼうな言葉に嬉しそうに破顔させる。
作業に区切りがつけば構ってくれるという意味だと知っているからだ。
今行っている実験を説明してくれたり、面白い道具をみせてもらったり、彼の話は面白いものばかりだった。
だからマユリからすこし離れ、マユリを待つ。
ふぁ。
小さく欠伸が口からでた。
よく考えればここ数日忙しくて、あまり寝ていない。
寝ちゃおうかな、と涼香は思う。どうせ今日も残業だし、さぼった分だけ仕事は進まない。
「・・・」
コックリ、コックリその揺れは大きくなり。
やがて瞼は完全に落ちる。
マユリは作業をやめ、そんな涼香に近づいた。
まだ眠りは浅いのだろう。僅かに身じろぐ。
髪をよければうっすらと隈が見えた。
「ん、・・・マユリちゃん?」
寝てろと言わんばかりに、マユリは涼香の髪をなぜる。
彼女は体を起こそうとした。構ってくれるのかと。
「眠いなら寝たまえヨ」
「んぅ・・・、起き、るよ?」
そんな言葉とは裏腹に涼香は眠りに入っていった。
(2013.08.09)
(2023/12/02訂正)