誕生してすぐに、ネムにいくつかの情報が”記憶”として刷り込まれた。
それは、彼女の父親であるマユリのサポートに必要なものだ。
例えば、この男。この男は、ネムを作った張本人でネムの父親。名前は涅マユリ。
ネムがこの男に抱く感情は、絶対的な忠誠と信頼。この人の役に立ちたいと思うと、そう”記憶”を思い出す。そして、それができる様に作られた自分を嬉しく思う。
「ネム、お前は今日から十二番隊の副官だヨ」
「はい。マユリ様」
マユリは、突然ネムにそう告げた。突然の登用だが、十二番隊では一つの不満もおこらない。
それは、この隊長が恐れられているからであるとネムは”知って”いた。
何も言わずに、技術局へと向かおうとするマユリに、ネムもまた何も言わずについていく。彼は、日中の多くの時間を技術室で過ごす。よって、ネムもこれからの時間の殆どをそこで過ごすこととなるであろう。
技術局の中に居たのは、局員の人達。ネムは一人一人”記憶”を呼び起こし、名前と顔を確かめる。
技術局の中で重要なのは、阿近と言う男。昔からマユリの右腕を勤め、技術局の中枢を担う人物だ。
「局長、その人が」
「あァ、そうだヨ」
「すごいっすね」
どうなってんだ?
そう呟きながらじろじろとネムを観察する阿近。その視線は女を見つめるものではなく、物を見る視線であった。
この人にそれだけ興味を持たれる自分は、本当にマユリの傑作なのだと、そうネムは思った。
その後、マユリに実験体を命じられ、今日一日は阿近の実験体として過ごすことが決定した。どんなにどんなに無茶なことをされても体は壊れる事はない。
ネムの体を観察し、それを自身の義骸へと活かしていく。
「(この人がマユリ様の右腕・・・)」
感情の読めないネムの視線に、阿近が反応することは無い。阿近はネムの体に没頭していたからだ。
「何してんだ
新しい実験か?」
そんな彼に声をかけたのは鵯州。彼も技術局員。自らの体を改造し、見やすいようにと目玉が飛び出る様に変えたらしい。
彼が気付いた事により、技術局の局員全員にネムの存在が伝わった。マユリの最高傑作。最高の技術を使って作られた義骸と魂魄に、技術局は少し騒がしくなる。
しかし、それもネムに対しての実験が始まると静かになった。全員実験結果に釘付けだ。
静寂に、データの音、考察の声が時々混じる。
そんな静寂が破られたのはそれから、数時間後の事。定時の鐘がなり夜勤の隊士が出勤を始めた頃だった。
「ネムちゃんいるー?」
それはネム自身を呼ぶ女の声。裏口の方から顔を出したのは、水色の髪と瞳の女。
「(・・・・?)」
その女を見てネムは内心首をかしげる。彼女は”水原 涼香”、マユリの後輩、十一番隊の第四席。
断片的な情報はたくさん出てくる。しかし、彼女がどうして十二番隊やマユリと親し気なのか。どうして、実験を邪魔されても阿近達が起こることがないのか。それが、分らない。
「涼香、様」
分らないことだらけ。だけれど、彼女はそう呼ぶべきだと思った。
(2015/07/19)
(2023/12/03訂正)
それは、彼女の父親であるマユリのサポートに必要なものだ。
私の×××-前-
例えば、この男。この男は、ネムを作った張本人でネムの父親。名前は涅マユリ。
ネムがこの男に抱く感情は、絶対的な忠誠と信頼。この人の役に立ちたいと思うと、そう”記憶”を思い出す。そして、それができる様に作られた自分を嬉しく思う。
「ネム、お前は今日から十二番隊の副官だヨ」
「はい。マユリ様」
マユリは、突然ネムにそう告げた。突然の登用だが、十二番隊では一つの不満もおこらない。
それは、この隊長が恐れられているからであるとネムは”知って”いた。
何も言わずに、技術局へと向かおうとするマユリに、ネムもまた何も言わずについていく。彼は、日中の多くの時間を技術室で過ごす。よって、ネムもこれからの時間の殆どをそこで過ごすこととなるであろう。
技術局の中に居たのは、局員の人達。ネムは一人一人”記憶”を呼び起こし、名前と顔を確かめる。
技術局の中で重要なのは、阿近と言う男。昔からマユリの右腕を勤め、技術局の中枢を担う人物だ。
「局長、その人が」
「あァ、そうだヨ」
「すごいっすね」
どうなってんだ?
そう呟きながらじろじろとネムを観察する阿近。その視線は女を見つめるものではなく、物を見る視線であった。
この人にそれだけ興味を持たれる自分は、本当にマユリの傑作なのだと、そうネムは思った。
その後、マユリに実験体を命じられ、今日一日は阿近の実験体として過ごすことが決定した。どんなにどんなに無茶なことをされても体は壊れる事はない。
ネムの体を観察し、それを自身の義骸へと活かしていく。
「(この人がマユリ様の右腕・・・)」
感情の読めないネムの視線に、阿近が反応することは無い。阿近はネムの体に没頭していたからだ。
「何してんだ
新しい実験か?」
そんな彼に声をかけたのは鵯州。彼も技術局員。自らの体を改造し、見やすいようにと目玉が飛び出る様に変えたらしい。
彼が気付いた事により、技術局の局員全員にネムの存在が伝わった。マユリの最高傑作。最高の技術を使って作られた義骸と魂魄に、技術局は少し騒がしくなる。
しかし、それもネムに対しての実験が始まると静かになった。全員実験結果に釘付けだ。
静寂に、データの音、考察の声が時々混じる。
そんな静寂が破られたのはそれから、数時間後の事。定時の鐘がなり夜勤の隊士が出勤を始めた頃だった。
「ネムちゃんいるー?」
それはネム自身を呼ぶ女の声。裏口の方から顔を出したのは、水色の髪と瞳の女。
「(・・・・?)」
その女を見てネムは内心首をかしげる。彼女は”水原 涼香”、マユリの後輩、十一番隊の第四席。
断片的な情報はたくさん出てくる。しかし、彼女がどうして十二番隊やマユリと親し気なのか。どうして、実験を邪魔されても阿近達が起こることがないのか。それが、分らない。
「涼香、様」
分らないことだらけ。だけれど、彼女はそう呼ぶべきだと思った。
(2015/07/19)
(2023/12/03訂正)