Eternal Oath

「名前はリィオ、アリスちゃんと船ちゃんの護衛よ」

その人物の肩に腕を回すと、シルビアはウインクして見せた。相当気に入りなのだろうう、ハートマークを飛ばしながら怪しげなフードの人物を前に押し出す。

「シルビア、自分はいいよ
アリスと違ってただの雇われ者だ」

シルビアとは対照的、冷静にリィオと呼ばれた人物はそう言った。

芸人の傭兵


「なぁ、リィオはなんでおっさんに雇われてるんだ?」
「・・・唐突だな」

 それは、航海中の船上で始まった。シルビアが船に乗っている時や、港に停泊しているときがリィオ の休みで、魔導書を読んでいる所をカミュたちが捕まえたのだ。
 フードの中も気にはなるが、それ以上に共にする時間が少なく未だ良くわからない、リィオが気になって気になって仕方がない。そうランランと目を輝かせるのはベロニカだ。

「詮索はダメよ」

 げ。おっさん。
 ちぇ、良いところだったのに、彼は舌打ちをして立ち上がる。次の目的地まで暇だって言うのにこれから何をしようか。


「お前と会ってからのことなら別に構わないだろ?」

 暇をもて余してることを察したリィオからの助け船。忘れたいことはたくさんあったが、そのなかにシルビアの仕事は入っていない。
 なんだかんだ聞き耳をたてていたイレブンや、興味津々のベロニカは視線をリィオに戻した。むろん、カミュも興味津々といった感じで腰を下ろす。この怪しげな人物と、変わった芸人はいったいどこで知り合ったのか、ちっとも想像できなくて首を捻った。


リィオ がそう言うなら」
 あれは、一年くらい前かしら。


 お前が話すんかいと、仲間たちは思ったが話は気になるので口をつぐんだ。



 シルビアは世界中を笑顔にするための旅をしていた。サーカスを開く度見られるたくさんの人々の笑顔が彼は好きだった。
 そんな折りに訪れたのは、武道大会で有名な街の近くにある村であった。大会の季節ではなかったが、武道家の中で有名な街であるからリィオのようにフードに帯刀の人物が歩いていても気にもとめない。大会の時期でなくても、その街を訪れる武道家は多かったからだ。

「キャー!!!」
「うわぁあ!!」

 街道に悲鳴が響いた。商人だろうか、荷台を引く馬車と人がキラーパンサーに囲まれている。
 当然、助けるためにシルビアは駆け寄ったが、存外多い魔物の数になかなか近づけずにいた。それにしても、街道にこんなに多くの魔物がでるのは珍しい。やはり世界に何が異変が起きているのかと、そう考えていた矢先のことだった。

 「ベギラゴン!」その声はよく通り、追うように紅蓮の炎が商人までの路を作った。魔法を使ったのは、街道を歩く姿を見かけた気のするフードの人物。
 一通り魔物を倒すとその人物は、商人とシルビアを交互に見て「怪我はないか?」と微笑んだ。



「まるで勇者のローシュちゃんのようだったわ
王子様ってあんな感じなのかしら」

うっとりと目を閉じて、頬まで染めて見せる。恋する乙女かよ、とはツッこまない。なぜなら彼は乙女でもあるからだ。


「おい、脚色が多過ぎて別の話になってるぞ」
「あたしにはそう見えたの!

それでね、傭兵してるって聞いてすぐに雇ったのよ」

 イレブンちゃんの旅に付いてきたのと同じような理由ねと、人差し指を立てた瞬間に「陸がみえたでがすよ」とアリスの声。



「どっから脚色なんだよ」
 リィオはアリス護衛の仕事へ、シルビアは舵取りに向かい、自然と解散となった。


(2017/08/28)