不器用なあなたと私の話
私は後数日で成人する。幸いグロッタの道具屋に就職が決まったから、成人してもこの孤児院には残るつもり。ようやく私もこの孤児院にお金を入れることができるようになって、それを嬉しく思う。
「リズもとうとう成人か」
部屋を訪ねると、ハン兄は開口一番にそう言った。早いな、なんて言いながらぽんと頭をなぜてくれる。
ハン兄はこの孤児院の出身で、現在は孤児院の運営をしている私よりいくつか年上の人だった。誠実なのに、不器用で、今私の成人祝いのプレゼントを隠したことも全部バレバレ。でも、私は気づかないふりをする。
成人しても、私、ここに残るよ、と答えれば少し安心したようにハン兄は頬をかいた。私よりずっとハン兄の方が寂しいみたいで可笑しかった。
「おう。家賃はいれてもらうぞ」
なんてたって家計は火の車だ。笑うハン兄が笑えないくらい悩んでいたのも気づいていたから、私はがんばって働こうと決意を新たにする。
私の誕生日はその翌日だった。
昨日ハンフリーさんが隠していたプレゼントは机の上に置かれていたし、みんなで用意したのだろう歪な紙の花がそこらかしこに飾られている。
「おめでとう」
ありがとうとハンフリーさんの顔を見ずに答えた。
「ちょっといいか」
ここには、ハンフリーさんと私だけ。ねえ、ハンフリーさん私も話があるの。
「もう、リズは家族じゃない」
言ってしまったと思ったのだろう。いや、もちろん孤児院の仲間だとはおもってるぞと、慌てたフォローをハンフリーさんは入れた。
もう、限界。
私気づいてたの、一年くらい前からハンフリーさんがよそよそしくなったことも、私の事見なくなったことも。寂しくて、悲しかった。
「俺と、っ!」
言わせる前に抱きついた。
もう一つだけ、気づいていたことがあったから。
「ハンフリーさん、大好き」
きっと、こういう事でしょう?
(2019/07/03)