Eternal Oath

 人差し指を唇に当てて、「内緒だよ」と微笑んだ。
 それがあまりにもリタらしくなく、マッシュは無言で頷くことしかできなかった。

聖杯を君に


「兄哥」

来た。そんな期待の視線をマッシュは向けた。
一方で、エドガーは何でもない風に「なんだ?」と微笑んだ。そこに期待の色が混ざっているのか否かは読み取れない。

「誕生日、おめでとうございます」
「・・・祝ってもらうような年ではないけれどもね
ありがとう」
らしくない言葉は照れ隠し。本当に兄貴はリタに弱いんだな。なんて、マッシュは微笑ましく二人を見守った。
早熟で国を背負う重責をおっていた兄が、自らの感情すらも御せない様な相手に出会えたことを幸いに思う。そんな兄貴の姿が俺にとっては誕生日プレゼントみたいなもんだな、と。

さて、そんなお相手リタであるが後ろ手に何やらもじもじと此方を伺っている。そこに何があってもなくても、エドガーは喜ぶのであろうけれども余計な口は挟まないほうがいいのだろう。


「これっ!プレゼントです!」

緊張ゆえの大声で、差し出したのは2つのグラスだった。

それを落とさぬようしっかりとエドガーとマッシュは受け取った。


プレゼントを用意していたのは知っていたけど、俺も?予想外の展開に、マッシュは目を瞬かせた。


「二人で飲めるように」

訪れた沈黙に彼女はおっかなびっくりといった感じで言う。

「俺のも?」
「当たり前じゃないですか」
彼女の主はエドガーであるが、マッシュだって誕生を祝いたい程度に大切なのだ。


「~~っ!!ありがとな!!」
「っわ!?
マッシュさん!!?」

予想外な分嬉しさはひとしおで、マッシュは衝動的にリタをなぜ回した。どうしてエドガーが彼女をかわいがって止まないのかがよく分かる。


「マッシュ」

その手を掴み、避難げにエドガーが名を呼んだ。
これは、俺のだ。
 言葉にせずとも雄弁に瞳が語る。

「ああ、悪い」


「いや

―――リタ

先の声色とはまったく違う、甘さを含んだ声で、至極当然の様に肩を抱き寄せ頭をなぜた。
寂しくもあるが、マッシュはその光景に安心するようになっていた。



だから、もう一度笑みを浮かべて。

「「ありがとう」」

二人そろってそう言った。


(2017/08/16)