Eternal Oath

とても・・・きれいだ。

02.彼女の絵


突然だった。
彼女がキャンパスを持って僕の前に現れたのは。


「あの、水鏡君」
「なんだ?」

「絵のモデルになって下さい!」

は?

思わず間の抜けた返事になってしまったのは仕方がだろう。


そう言えば、彼女は美術部だったか。
別に断る理由はないが、受ける理由もない。


「駄目・・・かな?」


黙っている僕に彼女が言う。
その表情は明らかに落胆を示していて。


「なぜ僕を?」
「あの、美術部の課題で男の子を描かなきゃいけなくて

私あんまり男の子の友達っていないから」


”友達”
その言葉に驚いた。

そうか、友達か。
確かにそうなのかもしれないな。

烈火達以外にそういう人物ができるなんて思わなかった。


「分かった。
どうすればいい」


彼女の顔に笑顔が戻る。

受ける理由はないが、断る理由もないだろう。


「そこに座っててくれれば。
あと、動かないでね」


それだけ言うと、彼女はキャンパスを組み立て鉛筆を握る。
そこからはまるで別人だった。


まっすぐ僕を見つめる彼女の瞳はまるで別人で。




それから一時間。
一言も発することなく教室には鉛筆で絵を描く音だけが響いていた。


「できたー!!!」


ぴたりと手を止め、満足そうに微笑む榎本さん。

できたと言うので、その絵をのぞこうとしたら彼女に拒否された。


「駄目っ、まだできてないから」
「終ったのではないのか?」

「いま終ったのは下書きだから・・
明日まで待って」


恥ずかしそうに絵を隠す。

明日か。


「ごめんね、あと

ありがとう。水鏡君」


彼女があの優しい笑みを浮かべる。


「あ・・・」
「どうした?」
「ううん。なんでもない、明日楽しみにしててね」

* * *

翌日、彼女の手には一点の絵。


その中には微笑んだ僕がいた。

「昨日最後に水鏡君笑ってたでしょ?
すっごくきれいだったから

あんまり上手じゃないけど」


どうやら、無意識に笑っていたらしい。
それで、絵を少し改変したと。


でも、僕よりもずっとずっとこの絵はきれいだと思うんだ。


(2011/08/03)