Eternal Oath

だって、彼女はこんなに暖かい。

05.ひどく暖かな


クラス替えから一カ月。

彼女も僕も相変わらず・・・ではなかった。


「水鏡君」

といつものように話しかけてくる訳でもなく。
クラスにいる女子と話すわけでもなく。

最近彼女はクラスの男(名前は忘れた)とよく話している。



「~だよね?」
「ぅん・・・でも・・・」


断片的に聞こえる会話からは内容を推測することは難しく。

それでも、彼女の表情だけは良く見えて。


その表情は困っているように見えた。



さん!」



思ったよりも大声がでたが、もういい。


「水鏡君?」


彼女が困惑した顔で、振り向く。


「あの榎本さん、今度の日曜日一緒に「ごめんなさい、どうしたの?水鏡君」」


さんは男の声を遮る。

その表情は困惑が残るものの安堵の色が見え、僕は内心ほっとする。


「いや・・・ちょっといいか」
「うん。
ごめんなさい」


もう一度彼女は男に謝り席を立つ。
そしてそのまま教室を出た。


「ありがとう。
ちょっと困ってたんだ。
何話していいのか分かんないし」


開口一番に彼女はそう言った。


「そうか、よかった」


こんなことなら最初から声をかければよかったか。


「あの・・・水鏡君」
「なんだ?」


「・・・その・・名前・・・・・」

彼女は仄かに顔を朱に染めて。
僕がさっき呼んだことに対して聞く。


「すまない、嫌だったか?」
「ううん。
だけど・・・ちょっとびっくりしたかな?」


そう言って、いつものように笑う。




初めて呼んだ君の名は、ゆっくりと波紋を広げ―――


「ねえ、水鏡君。

せっかくだし私も名前で呼んでいい?」


―――僕の心を満たしてく。




ああ、この感情は柳さんに抱いたソレにとてもよく似ている。


(2011/08/07)