だって、彼女はこんなに暖かい。
クラス替えから一カ月。
彼女も僕も相変わらず・・・ではなかった。
「水鏡君」
といつものように話しかけてくる訳でもなく。
クラスにいる女子と話すわけでもなく。
最近彼女はクラスの男(名前は忘れた)とよく話している。
「~だよね?」
「ぅん・・・でも・・・」
断片的に聞こえる会話からは内容を推測することは難しく。
それでも、彼女の表情だけは良く見えて。
その表情は困っているように見えた。
「咲さん!」
思ったよりも大声がでたが、もういい。
「水鏡君?」
彼女が困惑した顔で、振り向く。
「あの榎本さん、今度の日曜日一緒に「ごめんなさい、どうしたの?水鏡君」」
咲さんは男の声を遮る。
その表情は困惑が残るものの安堵の色が見え、僕は内心ほっとする。
「いや・・・ちょっといいか」
「うん。
ごめんなさい」
もう一度彼女は男に謝り席を立つ。
そしてそのまま教室を出た。
「ありがとう。
ちょっと困ってたんだ。
何話していいのか分かんないし」
開口一番に彼女はそう言った。
「そうか、よかった」
こんなことなら最初から声をかければよかったか。
「あの・・・水鏡君」
「なんだ?」
「・・・その・・名前・・・・・」
彼女は仄かに顔を朱に染めて。
僕がさっき呼んだことに対して聞く。
「すまない、嫌だったか?」
「ううん。
だけど・・・ちょっとびっくりしたかな?」
そう言って、いつものように笑う。
初めて呼んだ君の名は、ゆっくりと波紋を広げ―――
「ねえ、水鏡君。
せっかくだし私も名前で呼んでいい?」
―――僕の心を満たしてく。
ああ、この感情は柳さんに抱いたソレにとてもよく似ている。
(2011/08/07)
05.ひどく暖かな
クラス替えから一カ月。
彼女も僕も相変わらず・・・ではなかった。
「水鏡君」
といつものように話しかけてくる訳でもなく。
クラスにいる女子と話すわけでもなく。
最近彼女はクラスの男(名前は忘れた)とよく話している。
「~だよね?」
「ぅん・・・でも・・・」
断片的に聞こえる会話からは内容を推測することは難しく。
それでも、彼女の表情だけは良く見えて。
その表情は困っているように見えた。
「咲さん!」
思ったよりも大声がでたが、もういい。
「水鏡君?」
彼女が困惑した顔で、振り向く。
「あの榎本さん、今度の日曜日一緒に「ごめんなさい、どうしたの?水鏡君」」
咲さんは男の声を遮る。
その表情は困惑が残るものの安堵の色が見え、僕は内心ほっとする。
「いや・・・ちょっといいか」
「うん。
ごめんなさい」
もう一度彼女は男に謝り席を立つ。
そしてそのまま教室を出た。
「ありがとう。
ちょっと困ってたんだ。
何話していいのか分かんないし」
開口一番に彼女はそう言った。
「そうか、よかった」
こんなことなら最初から声をかければよかったか。
「あの・・・水鏡君」
「なんだ?」
「・・・その・・名前・・・・・」
彼女は仄かに顔を朱に染めて。
僕がさっき呼んだことに対して聞く。
「すまない、嫌だったか?」
「ううん。
だけど・・・ちょっとびっくりしたかな?」
そう言って、いつものように笑う。
初めて呼んだ君の名は、ゆっくりと波紋を広げ―――
「ねえ、水鏡君。
せっかくだし私も名前で呼んでいい?」
―――僕の心を満たしてく。
ああ、この感情は柳さんに抱いたソレにとてもよく似ている。
(2011/08/07)