Eternal Oath

「お邪魔します」

緊張しながらさんが入ってくる。

この家に人を呼んだのは始めてのことで。
さん同様僕も、若干の緊張を覚えていた。

06.ハニー・トラップ


「綺麗な部屋だね」
「そうか?」

「うん」


今日彼女が来ることになったのは、中間テストの勉強のためだ。


「どうぞ」

僕はさんに席を進める。


「ありがとう。
あ、これ大したものじゃないんだけどよければ食べて」
「ああ、ありがとう」


さんは僕に手土産を渡すと、教科書を机に広げる。
僕も紅茶を二人分つぐと、本棚から教科書をだす。

今日の目的は勉強なので、僕もさんも無言でノートに向かう。


「あの、凍季也くん
ここ分かる?」
「どれ?・・・ああこれは―――」


彼女は必死に問題を解いて、時々僕に質問をする。

僕は彼女より早く勉強にくぎりをつける。
ちらりとさんを見ると、彼女はまだノートに向かっていた。


「・・・」


真剣なその眼はノートと教科書の上を往復して、こちらを向くことは決してない。
僕はそんなさんの様子に、くすりと微笑む。

そして、無くなってしまった彼女の紅茶をつぎなおすためにキッチンへむかう。




さん・・・?」

戻ると、さんは寝ていた。

どうやら僕が席をたったすぐ後に、勉強が終わったみたいだ。
お湯をきらせていたため、紅茶の用意に時間がかかったのも原因であろう。

最近あまり寝てないようだし(テストの勉強だろうか?隈がでていた。)、疲れていたのだろう。
むしろ、よくあんなに集中して勉強できたものだ。


さん」
「・・・んぅ」


軽く揺らすが起きる気配はない。
僕は自分で用意した紅茶を飲みながら、その寝顔を見つめる。


僕はさんから眼をそらし、教科書を眺める。


―――これ以上眺めていたら、危険だ。


「・・・ん」

さんが小さく呻く。

教科書の内容など殆ど頭に入らない。
やはり、僕の家で勉強会など断ればよかったのかもしれない。

それでも笑顔で申し出たさんを断ることは、今の僕には難しく。


「・・・水か・・

・・・ぅん・・・凍・・季也君」
さん」

急いで、さんを起こす。
かわいそうだが、これ以上は 僕 が 無理だ。


「・・・んにぃ?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ごめんなさい」

「今日は終わりにしようか」
「ごめんなさい・・・」


顔を真っ赤にして謝る彼女がかわいくて。

―――勘弁してくれ。



そして、近くだと言う彼女の家まで、僕は彼女を送る。

僕は帰るとすぐに椅子に座りこむ。


「はぁ」


僕らしく無いな。
これだから恋だの愛だのは―――。


(2011/08/12)