「お邪魔します」
緊張しながら咲さんが入ってくる。
この家に人を呼んだのは始めてのことで。
咲さん同様僕も、若干の緊張を覚えていた。
「綺麗な部屋だね」
「そうか?」
「うん」
今日彼女が来ることになったのは、中間テストの勉強のためだ。
「どうぞ」
僕は咲さんに席を進める。
「ありがとう。
あ、これ大したものじゃないんだけどよければ食べて」
「ああ、ありがとう」
咲さんは僕に手土産を渡すと、教科書を机に広げる。
僕も紅茶を二人分つぐと、本棚から教科書をだす。
今日の目的は勉強なので、僕も咲さんも無言でノートに向かう。
「あの、凍季也くん
ここ分かる?」
「どれ?・・・ああこれは―――」
彼女は必死に問題を解いて、時々僕に質問をする。
僕は彼女より早く勉強にくぎりをつける。
ちらりと咲さんを見ると、彼女はまだノートに向かっていた。
「・・・」
真剣なその眼はノートと教科書の上を往復して、こちらを向くことは決してない。
僕はそんな咲さんの様子に、くすりと微笑む。
そして、無くなってしまった彼女の紅茶をつぎなおすためにキッチンへむかう。
「咲さん・・・?」
戻ると、咲さんは寝ていた。
どうやら僕が席をたったすぐ後に、勉強が終わったみたいだ。
お湯をきらせていたため、紅茶の用意に時間がかかったのも原因であろう。
最近あまり寝てないようだし(テストの勉強だろうか?隈がでていた。)、疲れていたのだろう。
むしろ、よくあんなに集中して勉強できたものだ。
「咲さん」
「・・・んぅ」
軽く揺らすが起きる気配はない。
僕は自分で用意した紅茶を飲みながら、その寝顔を見つめる。
僕は咲さんから眼をそらし、教科書を眺める。
―――これ以上眺めていたら、危険だ。
「・・・ん」
咲さんが小さく呻く。
教科書の内容など殆ど頭に入らない。
やはり、僕の家で勉強会など断ればよかったのかもしれない。
それでも笑顔で申し出た咲さんを断ることは、今の僕には難しく。
「・・・水か・・
・・・ぅん・・・凍・・季也君」
「咲さん」
急いで、咲さんを起こす。
かわいそうだが、これ以上は 僕 が 無理だ。
「・・・んにぃ?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ごめんなさい」
「今日は終わりにしようか」
「ごめんなさい・・・」
顔を真っ赤にして謝る彼女がかわいくて。
―――勘弁してくれ。
そして、近くだと言う彼女の家まで、僕は彼女を送る。
僕は帰るとすぐに椅子に座りこむ。
「はぁ」
僕らしく無いな。
これだから恋だの愛だのは―――。
(2011/08/12)
緊張しながら咲さんが入ってくる。
この家に人を呼んだのは始めてのことで。
咲さん同様僕も、若干の緊張を覚えていた。
06.ハニー・トラップ
「綺麗な部屋だね」
「そうか?」
「うん」
今日彼女が来ることになったのは、中間テストの勉強のためだ。
「どうぞ」
僕は咲さんに席を進める。
「ありがとう。
あ、これ大したものじゃないんだけどよければ食べて」
「ああ、ありがとう」
咲さんは僕に手土産を渡すと、教科書を机に広げる。
僕も紅茶を二人分つぐと、本棚から教科書をだす。
今日の目的は勉強なので、僕も咲さんも無言でノートに向かう。
「あの、凍季也くん
ここ分かる?」
「どれ?・・・ああこれは―――」
彼女は必死に問題を解いて、時々僕に質問をする。
僕は彼女より早く勉強にくぎりをつける。
ちらりと咲さんを見ると、彼女はまだノートに向かっていた。
「・・・」
真剣なその眼はノートと教科書の上を往復して、こちらを向くことは決してない。
僕はそんな咲さんの様子に、くすりと微笑む。
そして、無くなってしまった彼女の紅茶をつぎなおすためにキッチンへむかう。
「咲さん・・・?」
戻ると、咲さんは寝ていた。
どうやら僕が席をたったすぐ後に、勉強が終わったみたいだ。
お湯をきらせていたため、紅茶の用意に時間がかかったのも原因であろう。
最近あまり寝てないようだし(テストの勉強だろうか?隈がでていた。)、疲れていたのだろう。
むしろ、よくあんなに集中して勉強できたものだ。
「咲さん」
「・・・んぅ」
軽く揺らすが起きる気配はない。
僕は自分で用意した紅茶を飲みながら、その寝顔を見つめる。
僕は咲さんから眼をそらし、教科書を眺める。
―――これ以上眺めていたら、危険だ。
「・・・ん」
咲さんが小さく呻く。
教科書の内容など殆ど頭に入らない。
やはり、僕の家で勉強会など断ればよかったのかもしれない。
それでも笑顔で申し出た咲さんを断ることは、今の僕には難しく。
「・・・水か・・
・・・ぅん・・・凍・・季也君」
「咲さん」
急いで、咲さんを起こす。
かわいそうだが、これ以上は 僕 が 無理だ。
「・・・んにぃ?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ごめんなさい」
「今日は終わりにしようか」
「ごめんなさい・・・」
顔を真っ赤にして謝る彼女がかわいくて。
―――勘弁してくれ。
そして、近くだと言う彼女の家まで、僕は彼女を送る。
僕は帰るとすぐに椅子に座りこむ。
「はぁ」
僕らしく無いな。
これだから恋だの愛だのは―――。
(2011/08/12)