私には描く事しかできないから。
「咲先輩は文化祭何かだしたんですか?」
「うん」
私が文化祭に出すのはスケッチが何点かと人物画。
今まで描いてきた絵を全て出すつもりだ。
「やった!
私咲先輩の絵大好きなんです!!」
そういって喜ぶ柳ちゃんに私はいつもと同じ様に笑ってみせた。
胸の小さな痛みに気づかなかったふりをして。
美術部に案内すると彼女は真っ先に私の絵を見に行った。
それが嬉しくてこそばゆい。
”すごい”とか”綺麗”とか、そんなことを言いながら柳ちゃんは私の絵を見てくれた。
足を止めることなく柳ちゃんは展示物を見る。
「あ」
止まることの無かった彼女の足が止まった。
「水鏡先輩・・・」
柳ちゃんは小さく呟く。
視線の先には、私の描いた凍季也君の絵。
前描いたのとは違う、けれど前と同じくほほえんだ凍季也君。
あの話を聞いて、凍季也君と話さなくなって。
それでも私は凍季也君の事が好きだった。
彼が柳ちゃんの事を好きでも、私はまだ一緒にいたい。
そう思ったから。
「凍季也君に伝わればいいって思ったの」
そう言って、私は絵を撫でた。
(2013/08/10)
10.もう一度
「咲先輩は文化祭何かだしたんですか?」
「うん」
私が文化祭に出すのはスケッチが何点かと人物画。
今まで描いてきた絵を全て出すつもりだ。
「やった!
私咲先輩の絵大好きなんです!!」
そういって喜ぶ柳ちゃんに私はいつもと同じ様に笑ってみせた。
胸の小さな痛みに気づかなかったふりをして。
美術部に案内すると彼女は真っ先に私の絵を見に行った。
それが嬉しくてこそばゆい。
”すごい”とか”綺麗”とか、そんなことを言いながら柳ちゃんは私の絵を見てくれた。
足を止めることなく柳ちゃんは展示物を見る。
「あ」
止まることの無かった彼女の足が止まった。
「水鏡先輩・・・」
柳ちゃんは小さく呟く。
視線の先には、私の描いた凍季也君の絵。
前描いたのとは違う、けれど前と同じくほほえんだ凍季也君。
あの話を聞いて、凍季也君と話さなくなって。
それでも私は凍季也君の事が好きだった。
彼が柳ちゃんの事を好きでも、私はまだ一緒にいたい。
そう思ったから。
「凍季也君に伝わればいいって思ったの」
そう言って、私は絵を撫でた。
(2013/08/10)