夜
「今日は・・・曇りかぁ」
空はずいぶん暗くなり。
もうすぐ一番星が上ろうとしている。
完全な闇に包まれる夜。
「霧月は」
「なに?」
「いや。
私は嫌いだった・・・」
夜が・・・だろうか。
それは、きっと私と同じ理由だろうな。
それは忍としては失格かも知れない思い。
けれど、たった一人で闇に残されることは辛くて仕方なかったのだ。
狭檻の中、小さな窓から飛び込んでくる少ない光さえ、私にとっては救いだった。
それは、紅麗にとってもきっと。
「私は今は、嫌いじゃないよ」
仮面で見えはしないが、紅麗が小さく微笑んだのが気配で分かった。
私は彼の手を握る。
もうすぐ、完全に闇に包まれるだろう。
「霧月」
「紅麗・・・」
じんわりとした温かさが、手のひらから伝わる。
―――ああ、ここに居る。
夜なんかもう怖くない。
(だってあなたが隣にいる。)
(2011/09/19)
元拍手のおまけ。