Eternal Oath

石の親子の彼が進んで行ったと言う洞窟を一人進む。途中罠がいくつかあり、石の親子が彼を心配した理由も分る。

―――カコン

「っと」

小さな動作音と共に、床が抜けた。オーソドックスにその穴の下にはびっしりと棘が敷いてあり、白骨が一体。
なんだこれは?
その白骨のベルトに、きらりと銀のアクセサリーが輝いていた。リィオの手に収まると指輪は剣へと姿を変えた。

「これがARMか」

自分の意志に呼応して姿を変えるアクセサリー。新しいおもちゃを手にした子供の用にリィオは笑った。

01.魔法使いと金の少年


洞窟の奥では、金髪の少年とピンク色の髪の魔女の二人が、大きなブリキ人形と戦っていた。
金髪の少年がハンマーでブリキ人形を叩き、やったと声をあげる。

もしも、彼の仲間だったら油断するなと怒鳴ったのだろう。

「っ!ぼうや!!」
「え?」

倒れた体をゆっくりと起こしたブリキ人形の手は的確に少年の体を狙う。

約束だからな、と小さくごちてリィオは走った。振り上げられた剣はキィンと耳障りな音をたて、ブリキ人形の手のひらに傷をつける。ひるんだその手を足掛かりに、巨体を駆け上がる。
首にARMの剣を突き刺せば、ブリキ人形は軽い音を立て、ブレスレットへと姿を変えた。


そして、体ごとリィオは少年を振り向いた。


「すっ・・・っげぇ!」


訝しげに見る魔女(彼女がドロシーだろう)と、同じく訝しげに見守る丸い物体、そしてキラキラとした目で少年(彼がギンタだ)三者三様に、乱入してきたリィオを見つめる。
フードを深くかぶり、顔かたちは殆ど分らない。そのうえ大ぶりな肩当に足首まで垂れるマントの体系すらも分らない風体だった。
背は、ドロシーよりもこぶし一つ分大きいくらいか。


「君が”ギンタ”か?」


その人物男にしては高く女にしては低い声で尋ねる。


「ああ!そうだ!」
「あんた誰なのよ!」


彼は一瞬視線をドロシーへ向けて、もう一度少年を見た。


「自分はリィオ
外の親子に頼まれてギンタを助けにきた」
「助けに?なんでよ?」
「いや、自分は迷子でね、町の場所とか教えてもらった礼
外の親子からの願いだ」

あっけらかんと答えた彼に、ドロシーは少し嫌そうに表情を変えた。
”外の親子”は石の親子だと気付いたからだ。
一方ギンタは、完全にリィオを信じた。リィオを見る目が仲間を見るものへと変わった。



「ふぅんまあいいわ
バッボは手に入れられたしね」
「いやじゃ!こいつのARMになるのだけは嫌じゃ!」


リィオから視線を外し、ドロシーがバッボと呼んだ丸い物体に手をかける。それに対し、バッボは激しく抵抗をした。半ば奪い取るようにバッボに手を伸ばすが、その重さに耐えきれずドロシーの手から地面へ落ちた。
そうとう重そうだと、地面に落ちる音を聞いてリィオは思った。


「そうだ!リィオ
礼を重んじるとはなかなかの紳士じゃ!
お主ならワシの家来にしてやってもいいぞ!」
「いや、自分は紳士なんかじゃない
しがない傭兵さ
それに自分じゃお前は持てないよ」

ちゃりと、バッボから伸びる鎖を持ち上げ、リィオは持てないとアピールをする。ドロシーがそうであった様に、バッボが持ち上がる気配はない。


「まぁいいわ
リィオ、だっけ?と・・・」
「バッボじゃ!それだけは思い出せる!」
「なんだ、記憶喪失なのか?」
「ああ!!」
「あんたじゃなくて!」

反れていく会話に、苛々とドロシーが声があげる。彼女はギンタにバッボを預けると告げると箒にまたがってどこかへ飛んで行った。
すっかり仲間扱いだ、フードを抑えリィオはため息一つ。


(2016/05/05)