Eternal Oath

「で、分るのか分らないのか?」

こつん、と地面に横たわる男の頭を蹴りながらリィオは尋ねる。恐怖に顔を濡らした男は、震える声で何やらARMで通話する。
そしてやっと答えた。


「じょ、情報屋によると黒髪のやたら強い男が似たようなARMを持っていたと」
「で?そいつはどこに?」

分りません。そう言った男の頭をもう一度蹴り上げリィオは、大通りへと足を向ける。もうすぐ約束の時間だ。

05.魔法使いの宝物


約束の場所へ向かうと、なぜかぼろぼろのギンタとジャックがいた。
表通りを探してたはずの彼らがなぜこんな姿になるのか。しかもギンタは濡れている。

「どうしたんだ?」

しばし考え、リィオは素直に聞くことにした。
話を聞けば、門番ピエロの持ち主と会ったと言う。裏路地のボスから聞いた特徴とも合致する黒髪の男だったらしい。
その男はチェスの駒を倒すためギンタをこの世界へ呼んだのだと語った。そして、ギンタの弱さを嘆き、過去チェスの駒の首領のARMだったバッポの封印を解いたことに対する遺憾を口にしたと言う。


「なんだ?その勝手な野郎」

赤の他人に手前の事情押し付けて上から目線で説教?
曲がりなりにも傭兵として戦っていたリィオにとってそれは信じられない事だった。戦場にたつと言う事は命を懸けるということだ。リィオたちは自分の意思で、金と引き換えにそれを行ってきた。命を金で売ってきたからこそ、ただでそれを搾取しようとする人間に憤りを感じた。
平和な、争いのない世界から無理やり連れてこられて戦いを強制されたギンタ。それは、人さらいと何が違うと言うのか。


「それで、リィオ
「なんだ」

「俺、強くなりたい!」


バッボの事を壊されそうになったから。自分の守りたいものを守れるようになりたい。
そう、ギンタは強い目でリィオを見上げた。自分に向けられた理不尽を嘆くのではなく、まっすぐ前を見続けるギンタを純粋に守りたいとそう思った。

そんなギンタをまっすぐ見おろし(もっとも、フードの所為でギンタからは分らなかったが)、黙ったまま、リィオはゆっくりと膝を折った。


「ギンタ」
「な、なんだ」

「自分を、雇う気はないか?」


宝物を拾い上げるくらい丁寧に彼の手を取る。


「え?でも、俺金なんか・・・」
「報酬は、”門番ピエロについてギンタが知りえた内容について”でどうだ?」


ギンタは嬉しそうに笑う。


「いいのか!?」
「じゃあ、これからよろしく
ギンタ・・・あと、バッボとジャックも」
「「なんで・・・」」
「ん?」
「なんでワシではなくギンタの家来になるのじゃ!」「おいらはついでっすか」


”らしい”二人の言葉。
あははは
声をあげて、リィオが笑う。その声は高く軽やかで、まるで女性の声のようだとギンタは思った。


(2016/05/05)