「寒い・・・」
「大丈夫か?リィオ」
リィオたちは現在氷の城に潜入している。誰よりも着込んでいる癖に、寒がるリィオにギンタは心配げだ。
事の始まりは数時間前まで遡る。いつもの様に、ギンタ発案の筋トレを済ませた四人は次の町をめざし歩いていた。
そこに倒れていたのは一匹の犬。彼は、”姫様”の付き人(犬)で、王妃にその身を狙われている姫を連れて逃げて来たと言う。
「姫、か」
「ギンタやリィオはお姫様ってあったことがあるんすか?」
「俺か?俺の世界には姫とかはいなかった」
「自分も、あったことはないな」
二人の言葉にジャックは安堵の表情を浮かべた。
姫を見たことないのは田舎者の自分だけであったらどうしようかと思った。
「そっかぁ」
「お主はあったことないのか?」
「ないっす」
バッボの問いに、ジャックも首を振る。ここに居る全員が初めての姫との遭遇だ。
そして各々初めてのお姫様に思いをはせる。どんな人なのか、と。
小さな声で、話しながら階段を上ること数階分。一同は真っ暗な部屋へとたどり着いた。
その中でリィオはいくつかの気配と一つの魔力を感じ臨戦態勢を取った。
「随分暗い所に出たな」
「ギンタ」
前に出るギンタを、リィオは手で制する。瞬間、鋭い殺気と共に、リィオの喉元にナイフが当てられた。
「動くな」
「ん?」「へ?」
ナイフの持ち主の声には、覚えがあって。ギンタは思わず声をあげる。そして、ギンタの声に覚えているのだろう、つられてナイフの持ち主も声を上げた。
一歩遅れて、暗闇に目が慣れたリィオもその人相を捕え構えを解いた。
「「あー!!!」」
「ギンタ―!」
「ドロシーだドロシー」
ぱっとギンタが笑顔を浮かべる。ドロシーがギンタに抱き着いた。
「知り合い?キレーな人っすね」
「魔女だ
魔女ドロシー」
ジャックの問いに答えたのはリィオだけ。バッボはドロシーに敵対心を募らせているし、ギンタはドロシーとの会話に夢中だ。敵陣だと言うのに、気を許しているギンタに溜息をつきつつリィオは成り行きを見守る。
ドロシーの他に9人ほどの気配を感じるが、雑魚なのであろう人数が多いこちらに手を出してくることはない。
ドロシーはその気配に気付いているのだろうか、言葉巧みにこの城で起きている問題を聞き出していた。
食えない女だ。
「なるほどねぇ、それで季節外れの雪と氷なわけか・・・」
この城には、追い込まれたお姫様が眠っていると知ってしまった。しかし都合の良いことに、ドロシーはそれでこの城に対する興味を失ったようだ。
ARMを狙っていると言っていたからてっきり金目当てだと思っていた。
「助けに行くなら確かに急いだほうがいいわよ
この状態の中心地であるその子は、完全に氷漬けのはず
熟練の術者でも半日で心臓は止まるわね」
「・・・っ」
「ふぅん」
「いくぞ!バッボ!リィオ!ジャック!」
「了解」
半日で死ぬという言葉に反応したギンタ。リィオはそれに戸惑う事もなく後に続く。
彼らが背を向けた直後立ち始めた殺気にリィオはギンタとジャックから一歩距離を取った。急ぐ三人はそれに気づかない。
気付いたのは、ただ一人。
その一人はピンクのおさげを指ではじくと、”行け”とリィオに目くばせする。手助けをするという意味だと受け取り、殺気だちはじめた9人はそのまま、リィオはギンタを追った。
(2016/05/05)
「大丈夫か?リィオ」
リィオたちは現在氷の城に潜入している。誰よりも着込んでいる癖に、寒がるリィオにギンタは心配げだ。
06.二人の魔法使い
事の始まりは数時間前まで遡る。いつもの様に、ギンタ発案の筋トレを済ませた四人は次の町をめざし歩いていた。
そこに倒れていたのは一匹の犬。彼は、”姫様”の付き人(犬)で、王妃にその身を狙われている姫を連れて逃げて来たと言う。
「姫、か」
「ギンタやリィオはお姫様ってあったことがあるんすか?」
「俺か?俺の世界には姫とかはいなかった」
「自分も、あったことはないな」
二人の言葉にジャックは安堵の表情を浮かべた。
姫を見たことないのは田舎者の自分だけであったらどうしようかと思った。
「そっかぁ」
「お主はあったことないのか?」
「ないっす」
バッボの問いに、ジャックも首を振る。ここに居る全員が初めての姫との遭遇だ。
そして各々初めてのお姫様に思いをはせる。どんな人なのか、と。
小さな声で、話しながら階段を上ること数階分。一同は真っ暗な部屋へとたどり着いた。
その中でリィオはいくつかの気配と一つの魔力を感じ臨戦態勢を取った。
「随分暗い所に出たな」
「ギンタ」
前に出るギンタを、リィオは手で制する。瞬間、鋭い殺気と共に、リィオの喉元にナイフが当てられた。
「動くな」
「ん?」「へ?」
ナイフの持ち主の声には、覚えがあって。ギンタは思わず声をあげる。そして、ギンタの声に覚えているのだろう、つられてナイフの持ち主も声を上げた。
一歩遅れて、暗闇に目が慣れたリィオもその人相を捕え構えを解いた。
「「あー!!!」」
「ギンタ―!」
「ドロシーだドロシー」
ぱっとギンタが笑顔を浮かべる。ドロシーがギンタに抱き着いた。
「知り合い?キレーな人っすね」
「魔女だ
魔女ドロシー」
ジャックの問いに答えたのはリィオだけ。バッボはドロシーに敵対心を募らせているし、ギンタはドロシーとの会話に夢中だ。敵陣だと言うのに、気を許しているギンタに溜息をつきつつリィオは成り行きを見守る。
ドロシーの他に9人ほどの気配を感じるが、雑魚なのであろう人数が多いこちらに手を出してくることはない。
ドロシーはその気配に気付いているのだろうか、言葉巧みにこの城で起きている問題を聞き出していた。
食えない女だ。
「なるほどねぇ、それで季節外れの雪と氷なわけか・・・」
この城には、追い込まれたお姫様が眠っていると知ってしまった。しかし都合の良いことに、ドロシーはそれでこの城に対する興味を失ったようだ。
ARMを狙っていると言っていたからてっきり金目当てだと思っていた。
「助けに行くなら確かに急いだほうがいいわよ
この状態の中心地であるその子は、完全に氷漬けのはず
熟練の術者でも半日で心臓は止まるわね」
「・・・っ」
「ふぅん」
「いくぞ!バッボ!リィオ!ジャック!」
「了解」
半日で死ぬという言葉に反応したギンタ。リィオはそれに戸惑う事もなく後に続く。
彼らが背を向けた直後立ち始めた殺気にリィオはギンタとジャックから一歩距離を取った。急ぐ三人はそれに気づかない。
気付いたのは、ただ一人。
その一人はピンクのおさげを指ではじくと、”行け”とリィオに目くばせする。手助けをするという意味だと受け取り、殺気だちはじめた9人はそのまま、リィオはギンタを追った。
(2016/05/05)