気まぐれか、それともレアARMを持つ敵でもいたのか。
どちらにせよ、今の所ドロシーはギンタの敵ではないとリィオは考える。
「魔女、か」
彼女はいったい何者なのか。石の親子が言ったほど悪い人物だとは思えない。
その男―アルヴィス―は、ギンタたちよりも早くその部屋にたどり着いた。ギンタへ弱いと告げた口で、今度は冷静に状況を分析する。
―――小雪ーーっ!!
「っの馬鹿・・・」
氷漬けの姫を誰かと見間違えたのだろう。リィオが止めるのを振り払ったギンタが飛び出しチェスの男に吹き飛ばされた。やはり、ギンタにはチェスの駒と戦う事など無理なのだろうか。
どうか、そうではありませんように。
―――ギンタ、落ち着け
「・・・怪しい男だな」
彼の肩に手を添え諌めたのはフードの人物。アルヴィスが、先日ギンタと戦ったときにはいなかった人物である。
深くかぶったフード、めったに見ない大ぶりな肩当、おまけに足元まで覆うマントまで着込んでいて表情どころか体型すらもわからなかった。
当然訝し気にアルヴィスはリィオを見据える。
―――落ち着いて下されギンタ殿!
―――あの方は「コユキ」という方ではありませぬぞ!
―――メルヘヴンの象徴と言える我国、レスターヴァの正統後継者スノウ姫でございます!
フードの男と犬の言葉でギンタは落ち着きを取り戻す。そして、はっきりとチェスと戦う意思を示した。
それは、アルヴィスにとっては嬉しいことではあるが今は不安の種でもある。なにより相手が悪い。チェスの駒でもギンタの目の前にいるのは三人ともピアス持ち。ギンタにはまだ早いだろう。
―――なら、こうしようぜ!ちっこいやつ!!
―――一対一でやらねぇかい!
―――・・・のった!
―――あめぇよ
一対一を申し出たルーク兵の横、ビショップ兵が飛び出した。
―――のけ!ギンタ!
―――キィン!
肩に乗せたままの手でギンタを押しのけたフードの男が、ARMを発動させた。耳障りな高音が響く。彼の相手は、ビショップ兵。フードの男と同じく、剣のARMの使い手らしい。
―――人がしゃべってる間は攻撃しない無いのが様式美ってものだろう?
―――知ったこっちゃねぇな
―――敵は皆殺しだ
―――全く、礼儀がなってない、ね!
―――キィン!
ビショップ兵の攻撃を弾きながら、フードの男はニィっと口角をあげる。二度目の金属音。
それを合図に、ルーク兵とギンタも戦闘を始めた。ギンタもフードの男も、ARMを使いこなせていないことは同じ。しかし、二人には大きな差があった。
―――あでっ!
ルーク兵の攻撃に、ギンタは大きく体制を崩す。鞭状のウェポンを使う彼の攻撃が見えていないらしい。
それでも持ち前の身体能力を活かし、何回か攻撃を当ててはいるが殆どダメージが与えられていない。
―――っと!ぶねぇぶねぇ
―――ARMも使いこなせてねぇ野郎に負けるわけにはいかないな!
一方、フードの男は軽快な剣捌きでビショップ兵と互角に切り合う。純粋な剣の腕ではフードの男に分がありそうだが、ARMの能力分負けていた。
(美しい)
無意識にそう考え、顎に手を当てる。怪しげな見た目にはそぐわない愚直で美しい太刀筋をフードの男は魅せた。
それは練習を突き詰めた者の動きであった。
「・・・」
「どうしたの?アル」
「っ、いや、何でもない」
妖精のベルの言葉に、アルヴィスはギンタに視線を戻す。
―――ドゴォ!
大きな音に、アルヴィスを見ていたベルもギンタに視線を戻した。
遠目でも分る巨大なバッボの姿。相打ち覚悟の攻撃にアルヴィスは掌を握りしめた。
「(ここで死ぬなんて許さない)」
(2016/05/05)
どちらにせよ、今の所ドロシーはギンタの敵ではないとリィオは考える。
「魔女、か」
彼女はいったい何者なのか。石の親子が言ったほど悪い人物だとは思えない。
07.彼から見た魔法使い
その男―アルヴィス―は、ギンタたちよりも早くその部屋にたどり着いた。ギンタへ弱いと告げた口で、今度は冷静に状況を分析する。
―――小雪ーーっ!!
「っの馬鹿・・・」
氷漬けの姫を誰かと見間違えたのだろう。リィオが止めるのを振り払ったギンタが飛び出しチェスの男に吹き飛ばされた。やはり、ギンタにはチェスの駒と戦う事など無理なのだろうか。
どうか、そうではありませんように。
―――ギンタ、落ち着け
「・・・怪しい男だな」
彼の肩に手を添え諌めたのはフードの人物。アルヴィスが、先日ギンタと戦ったときにはいなかった人物である。
深くかぶったフード、めったに見ない大ぶりな肩当、おまけに足元まで覆うマントまで着込んでいて表情どころか体型すらもわからなかった。
当然訝し気にアルヴィスはリィオを見据える。
―――落ち着いて下されギンタ殿!
―――あの方は「コユキ」という方ではありませぬぞ!
―――メルヘヴンの象徴と言える我国、レスターヴァの正統後継者スノウ姫でございます!
フードの男と犬の言葉でギンタは落ち着きを取り戻す。そして、はっきりとチェスと戦う意思を示した。
それは、アルヴィスにとっては嬉しいことではあるが今は不安の種でもある。なにより相手が悪い。チェスの駒でもギンタの目の前にいるのは三人ともピアス持ち。ギンタにはまだ早いだろう。
―――なら、こうしようぜ!ちっこいやつ!!
―――一対一でやらねぇかい!
―――・・・のった!
―――あめぇよ
一対一を申し出たルーク兵の横、ビショップ兵が飛び出した。
―――のけ!ギンタ!
―――キィン!
肩に乗せたままの手でギンタを押しのけたフードの男が、ARMを発動させた。耳障りな高音が響く。彼の相手は、ビショップ兵。フードの男と同じく、剣のARMの使い手らしい。
―――人がしゃべってる間は攻撃しない無いのが様式美ってものだろう?
―――知ったこっちゃねぇな
―――敵は皆殺しだ
―――全く、礼儀がなってない、ね!
―――キィン!
ビショップ兵の攻撃を弾きながら、フードの男はニィっと口角をあげる。二度目の金属音。
それを合図に、ルーク兵とギンタも戦闘を始めた。ギンタもフードの男も、ARMを使いこなせていないことは同じ。しかし、二人には大きな差があった。
―――あでっ!
ルーク兵の攻撃に、ギンタは大きく体制を崩す。鞭状のウェポンを使う彼の攻撃が見えていないらしい。
それでも持ち前の身体能力を活かし、何回か攻撃を当ててはいるが殆どダメージが与えられていない。
―――っと!ぶねぇぶねぇ
―――ARMも使いこなせてねぇ野郎に負けるわけにはいかないな!
一方、フードの男は軽快な剣捌きでビショップ兵と互角に切り合う。純粋な剣の腕ではフードの男に分がありそうだが、ARMの能力分負けていた。
(美しい)
無意識にそう考え、顎に手を当てる。怪しげな見た目にはそぐわない愚直で美しい太刀筋をフードの男は魅せた。
それは練習を突き詰めた者の動きであった。
「・・・」
「どうしたの?アル」
「っ、いや、何でもない」
妖精のベルの言葉に、アルヴィスはギンタに視線を戻す。
―――ドゴォ!
大きな音に、アルヴィスを見ていたベルもギンタに視線を戻した。
遠目でも分る巨大なバッボの姿。相打ち覚悟の攻撃にアルヴィスは掌を握りしめた。
「(ここで死ぬなんて許さない)」
(2016/05/05)