「取引だギンタ」
ホーリーARMを使う代わりに、ポーン兵に傷をいやすARMを使うわせろとイアンは提案した。
大変甘い自分の雇い主はそれに二つ返事でOKをだす。
「(まぁいい、この程度の相手なら対して障害にならないだろう)」
自分がこの判断を後悔するのはこれからずっと先の事。
ギンタとついでにジャックの所為っようを見届けると、アランはエドワードに戻ってしまった。
メルヘヴンを守ると言う意味を込め”メル”と名づけられた集団は、エドワードのARMで海を渡る。
「・・・・」
魔法で浮かぶカーペットは酷く頼りなく、リィオはフードの下で眉を顰めた。異世界でさえなければ魔法を使って飛べるのに。
揺らすなと思っても、カーペットの上で跳ねまわるギンタには伝わらない。
速く大陸に着けと祈るのは、リィオだけでなく同じくカーペットの頼りなさに怯えるジャックもだ。一方スノウは慣れた様子で、前方に視線を飛ばしている。
「あ!!見て!!
地上―――ヒルド大陸だよ!!」
その言葉にリィオとジャックの二人は弾かれる様に前を見た。
やっと降りられる。
そう安心したのもつかの間の事だった。
―――ヒュン
風を切る音に、リィオはギンタとスノウをマントで庇った。
幸いなことに遠くから投げられた槍はARMではなかったらしく、誰も傷つけることはない。カーペットを打ち落とすにとどまった。
もっとも、落下によって擦り傷ができたため全くの無傷と言う訳にはいかなかったが。
「下がれ、エドワード」
「まって!」
今にも切りかかりそうなリィオを止めたのはスノウだった。リィオのマントを掴み首を振る。
何故、そう尋ねようとした言葉は、相手の言葉に打ち消された。
「キミら、チェスやろ?」
「俺たちはメルだ!チェスはお前らだろうが!」
独特の訛りで発せられた男の言葉は、リィオの動きを止めるのには十分なものだった。
ナナシと名乗った男は、ARMでチェスに壊された街をギンタに見せるとギンタたちを砦の裏へと案内した。
そこに広がっていたのは無数の墓。しくしくとすすり泣く声は墓参りをしている者たちの声だ。要するにここもチェスの襲撃を受けたのだろう。
リィオとギンタはチェスの駒という軍団がどうしてこんなに恐れられているのかを思い知る。このような光景をチェスはいくつも作ってきたのだろう。
「やるせないな・・・」
傭兵という職業柄何度も見てきた光景だが、決して気持ちのいいものではない。
「自分は―――やつらを絶対に許さへん」
こんなことをしてチェスは何が目的なのだろうか。まさか無を欲しているとかそんなことではあるまいと、そう眉をひそめたリィオに答えるようにエドワードがギンタへと説明を始めた。
―――チェスの駒は6年前突然現れ街や村を襲った。
それは世界の半数にもおよび、人々に恐怖を存分に抱かせると彼らは一つのゲームを提案した。
「”ウォーゲーム”です」
まず、小さくもはっきりとしたエドワードの声が響いた。次に、大きな音があたりに響く。思い切りギンタが壁を殴った音だ。
ギンタを見つめたままリィオがゆっくりと口を開く。
「自分も戦うよ、ギンタ」
君がそれを望むなら。
どこまでも優しく正しい君を好ましいとリィオは思う。
(2016/05/05)
ホーリーARMを使う代わりに、ポーン兵に傷をいやすARMを使うわせろとイアンは提案した。
大変甘い自分の雇い主はそれに二つ返事でOKをだす。
「(まぁいい、この程度の相手なら対して障害にならないだろう)」
自分がこの判断を後悔するのはこれからずっと先の事。
11.盗賊と魔法使い
ギンタとついでにジャックの所為っようを見届けると、アランはエドワードに戻ってしまった。
メルヘヴンを守ると言う意味を込め”メル”と名づけられた集団は、エドワードのARMで海を渡る。
「・・・・」
魔法で浮かぶカーペットは酷く頼りなく、リィオはフードの下で眉を顰めた。異世界でさえなければ魔法を使って飛べるのに。
揺らすなと思っても、カーペットの上で跳ねまわるギンタには伝わらない。
速く大陸に着けと祈るのは、リィオだけでなく同じくカーペットの頼りなさに怯えるジャックもだ。一方スノウは慣れた様子で、前方に視線を飛ばしている。
「あ!!見て!!
地上―――ヒルド大陸だよ!!」
その言葉にリィオとジャックの二人は弾かれる様に前を見た。
やっと降りられる。
そう安心したのもつかの間の事だった。
―――ヒュン
風を切る音に、リィオはギンタとスノウをマントで庇った。
幸いなことに遠くから投げられた槍はARMではなかったらしく、誰も傷つけることはない。カーペットを打ち落とすにとどまった。
もっとも、落下によって擦り傷ができたため全くの無傷と言う訳にはいかなかったが。
「下がれ、エドワード」
「まって!」
今にも切りかかりそうなリィオを止めたのはスノウだった。リィオのマントを掴み首を振る。
何故、そう尋ねようとした言葉は、相手の言葉に打ち消された。
「キミら、チェスやろ?」
「俺たちはメルだ!チェスはお前らだろうが!」
独特の訛りで発せられた男の言葉は、リィオの動きを止めるのには十分なものだった。
ナナシと名乗った男は、ARMでチェスに壊された街をギンタに見せるとギンタたちを砦の裏へと案内した。
そこに広がっていたのは無数の墓。しくしくとすすり泣く声は墓参りをしている者たちの声だ。要するにここもチェスの襲撃を受けたのだろう。
リィオとギンタはチェスの駒という軍団がどうしてこんなに恐れられているのかを思い知る。このような光景をチェスはいくつも作ってきたのだろう。
「やるせないな・・・」
傭兵という職業柄何度も見てきた光景だが、決して気持ちのいいものではない。
「自分は―――やつらを絶対に許さへん」
こんなことをしてチェスは何が目的なのだろうか。まさか無を欲しているとかそんなことではあるまいと、そう眉をひそめたリィオに答えるようにエドワードがギンタへと説明を始めた。
―――チェスの駒は6年前突然現れ街や村を襲った。
それは世界の半数にもおよび、人々に恐怖を存分に抱かせると彼らは一つのゲームを提案した。
「”ウォーゲーム”です」
まず、小さくもはっきりとしたエドワードの声が響いた。次に、大きな音があたりに響く。思い切りギンタが壁を殴った音だ。
ギンタを見つめたままリィオがゆっくりと口を開く。
「自分も戦うよ、ギンタ」
君がそれを望むなら。
どこまでも優しく正しい君を好ましいとリィオは思う。
(2016/05/05)