Eternal Oath

ヴェストリの洞窟から帰ってきてからリィオの様子はおかしかった。
口数は少なく、舌打ちは多く、誰が見ても機嫌の悪い様相だ。

「何があったんだ?」
「・・・・・・・・別に」

「間が」


それは、ウォーゲーム開催の知らせを受けるまで続いた。

13.魔法使いとウォーゲーム


ナナシのアンダータに連れられて、ついたのはレギンレイヴ城。こじんまりした城はところどころ破壊され兵士も疲れ切った表情だ。
この城を舞台にウォーゲームは開催される。


「ふん・・・」


ここに集まったのは腕章をつけた”クロスガード”と呼ばれる自警団がほとんどだった。例外は、リィオ達の所属するメルと、アルヴィスだけだ。
リィオはその姿を見てわずかに反応する。

「あいつ・・・」


ギンタを襲った男だとリィオは気づいたからだ。


「あーーー!」
「アルヴィス!久しぶりぃ!!」


ギンタは笑いかけた。
リィオは毒気をぬかれ、ふっと笑いを漏らす。自分は、ギンタのこう言うところに惹かれたのだ。

さて、純粋な雇い主のためにリィオは動くことにする。
ポンと軽くジャックの頭をなぜると、アルヴィスに憤慨していた彼は何故とリィオを見上げた。


「共闘する以上は仲間だろ?
ジャック、バッボ」
「でも、おいらは鳥にされたこと恨んでるっスからね」
「わしもじゃ!」

「はいはい、それよりゲームの前にテストあるみたいだよ」


そんな彼らの背を押し、チェスの説明通りマジックストーンの置かれた台座へと足を進めた。
そっとマジックストーンを手に取る。リィオ達に続くようにクロスガード達もマジックストーンを拾い上げ、参加者が全員手にしたことを確認すると静かに開始の言葉が告げられる。


試験はポーン兵と一対一の戦闘を行うことだった。リィオをはじめとしたメルのメンバーには準備運動程度のものであったが、クロスガ―ド達は一人も帰ってこなかった。


「ガイラさんが帰ってこない」


ガイラとは前回のウォーゲームの生き残りだ。どうやら、実力者は死んだだけではなく衰えてもいるらしい。
そういえばアランも先のゲームの功労者だったか。アランはあの爺さんよりは強そうだったな。リィオはこきりと首の関節を鳴らした。


「不利だな・・・」


チェス曰くはずれのナイトクラスと戦っていたガイラは、死んではないもののゲーム参加の資格を得ることはできなかった。
ゲームに参加できるのはリィオの他、メルのメンバーとアルヴィスの7人。女子供が大半を占めるメンツはリィオから見ても頼りなく映る。


「(でも)」


リィオは知っている。ギンタが、ジャックが強いことを。たったの半年でもう剣ではギンタに勝てなくなってしまった。
聴衆と同じようにチェスがこちらを舐めているようなら、十分勝機はある。


「自分は、自分のできることをするだけだ」
「へ?」
「いや、なんでもない」


すべては初めて頭を下げた雇い主のために。


(2016/05/05)