「よう」
「ああ、おはようアラン」
リィオは部屋でも一切フードをとることはなかった。徹底した秘密主義には舌を巻く。
けれど犬の中から見ていてそんなことにはすっかり慣れてしまった。故にアランは自然な笑みで顔もしらない仲間に挨拶をした。
「今日はリィオも観戦するんか」
「ああ
アランがでるからね」
珍しい雰囲気にナナシは目を見張る。
心なしかはしゃいでいるように見えた。
「なんや自分
あのおっさんのファンなんか」
「違うよ
ただ、あいつが出てくるのも久しぶりだからな」
リィオも見極めたかったのだ。ウォーゲームの功労者の力量を。
* * *
リィオたちが見守る中第三回戦が始まった。
一回戦はルークとアランの戦い。相手が弱すぎたため完全な力量を見るには至らなかった。
二回戦のジャックも前回敗北したルークに勝ちこのままうまく行くかと思った時だった。
「これまずいんちゃう?」
「ああ、まずいな」
試合を見ていた二人の意見がぴたりと一致した。
空に浮かんだ試合を映す推奨には衰弱しきったスノウの姿。氷のARMを得意とする彼女には火山ステージは不得手なのだろう。
決して強い方ではないビショップにスノウは圧されている。
「・・・」
それでもあきらめずにスノウはガーディアンを出したが、あっけなくビショップ兵に砕かれた。ギブアップを告げたメルにおとなしくビショップ兵は引きさがった。
―――ヒュン
リィオたちの目の前にギンタが現れた。どうやらスノウを休ませることにしたらしい。
少しばかりギンタに元気がないのはやはりスノウが無理したのを気にしているのだろう。
ギンタはリィオを見、ナナシを見、もう一度リィオを見るとリィオに向かって口を開いた。
「スノウを頼む」
「なんで!」
「胸に手を当てて考えろ」
「つめたっ、リィオつめた!」
スノウとギンタの手前わざと明るくふるまっているだろうナナシに、そうと知りながらリィオは冷たく返した。ギンタもスノウも笑っているところをみるとその試みは上手くいったのだろう。
リィオはそんなギンタからスノウを受け取ると肩を組んだ。
「なんで抱き上げてやらへんの?
リィオも冷たいやん」
「自分は力がないんだよ」
その言葉を受けナナシは密かに目を見開いた。
剣を得意としているのに力が弱いとは不思議なことだ。まさか鍛えていないとはリィオの性格上考えられない。
「どうした?」
「いや、自分が運ぶわ」
「頼む」
あっさりと受け渡されたスノウは見た目通りの軽さで。動揺を隠すようにナナシは額のバンダナをずり下げた。
(2016/05/05)
「ああ、おはようアラン」
リィオは部屋でも一切フードをとることはなかった。徹底した秘密主義には舌を巻く。
けれど犬の中から見ていてそんなことにはすっかり慣れてしまった。故にアランは自然な笑みで顔もしらない仲間に挨拶をした。
17.魔法使いは見極める
「今日はリィオも観戦するんか」
「ああ
アランがでるからね」
珍しい雰囲気にナナシは目を見張る。
心なしかはしゃいでいるように見えた。
「なんや自分
あのおっさんのファンなんか」
「違うよ
ただ、あいつが出てくるのも久しぶりだからな」
リィオも見極めたかったのだ。ウォーゲームの功労者の力量を。
* * *
リィオたちが見守る中第三回戦が始まった。
一回戦はルークとアランの戦い。相手が弱すぎたため完全な力量を見るには至らなかった。
二回戦のジャックも前回敗北したルークに勝ちこのままうまく行くかと思った時だった。
「これまずいんちゃう?」
「ああ、まずいな」
試合を見ていた二人の意見がぴたりと一致した。
空に浮かんだ試合を映す推奨には衰弱しきったスノウの姿。氷のARMを得意とする彼女には火山ステージは不得手なのだろう。
決して強い方ではないビショップにスノウは圧されている。
「・・・」
それでもあきらめずにスノウはガーディアンを出したが、あっけなくビショップ兵に砕かれた。ギブアップを告げたメルにおとなしくビショップ兵は引きさがった。
―――ヒュン
リィオたちの目の前にギンタが現れた。どうやらスノウを休ませることにしたらしい。
少しばかりギンタに元気がないのはやはりスノウが無理したのを気にしているのだろう。
ギンタはリィオを見、ナナシを見、もう一度リィオを見るとリィオに向かって口を開いた。
「スノウを頼む」
「なんで!」
「胸に手を当てて考えろ」
「つめたっ、リィオつめた!」
スノウとギンタの手前わざと明るくふるまっているだろうナナシに、そうと知りながらリィオは冷たく返した。ギンタもスノウも笑っているところをみるとその試みは上手くいったのだろう。
リィオはそんなギンタからスノウを受け取ると肩を組んだ。
「なんで抱き上げてやらへんの?
リィオも冷たいやん」
「自分は力がないんだよ」
その言葉を受けナナシは密かに目を見開いた。
剣を得意としているのに力が弱いとは不思議なことだ。まさか鍛えていないとはリィオの性格上考えられない。
「どうした?」
「いや、自分が運ぶわ」
「頼む」
あっさりと受け渡されたスノウは見た目通りの軽さで。動揺を隠すようにナナシは額のバンダナをずり下げた。
(2016/05/05)