―――ヴンっ
小さな音を立てると影が自分の姿を模った。
「そうか、”自分自身”と戦わせるつもりか」
影がARMを剣へと変え―――そこで止まる。困惑したように頭を抱えたそれはどう考えても普通ではない。
やがて、パァンと音を立て影は爆ぜてなくなった。
二回目の修練の門は2日ほどで終わりをつげた。シャドーマンが影をなさない以上リィオをこの世界にい続けさせる意味がない。
「ずっと気になっていた・・・お前は何者だ?」
「・・・」
ガイラの問いにだんまりを決めているリィオの表情はやはりわからない。
シャドーマンがマネできなかったことだけではない、初めからリィオの素性は矛盾に満ちていたとアランは思った。
彼は自分のことを傭兵だと名乗った。リィオほど強い傭兵ならばすぐに有名になるはずだ。けれど、アランもガイラも他の誰もリィオの名を知らなかった。
それにARMの使い方も知らない傭兵など聞いたこともない。
「このあたりが潮時か・・・」
腕を組みふぅとため息を一つ。いつもより低い声は諦めの証だった。
しかし、その雰囲気に悔しさや焦燥は感じられない。アランは一つ頷いた。
体ごとガイラを向くと、アランは笑う。
「こいつはチェスとは関係ねぇよ」
ガイラは苦い顔をした。アランを信じたい一方で、リィオはあまりにも怪しすぎた。
「次の試合で、全部話す」
上手く話せるかは分からないけどな。
そう笑う彼から一切の敵意は感じることはできずガイラもそれを了承した。
そして修練の門を発動させているガイラはそのまま、ウォーゲームの参加者であるアランとリィオは部屋やと戻る。それにしても、と隣を歩くリィオを見てアランは思う。どうして自分はこの男をかばったのかと。
態度に不審がなくとも、恰好が不審すぎる。そのうえ彼が嘘をついているのは明らかだった。
「?アラン?どうかしたのか?」
自然な動作でリィオがアランを見上げた。
この男はこんなにも小さかったのかとアランは思った。ドロシーよりもこぶし一つ分大きい程度。思い起こされるのはギンタ達を背にかばう姿ばかりで、こうして一人の人間としてリィオを見るのは初めてだと気づく。
こいつは思っていたより子供なのかもしれないなんて、見当はずれなことをアランは考える。そう見てみれば存外に低い背も高い声も説明がつく。
ぽん、と頭に手を置けば驚いたようにリィオは距離をとった。動物のような反応にアランはくつくつと笑って見せた。
急に何を。心底困惑した声はやっぱり子供のような声で。こんな子供を疑っていたことが馬鹿らしい。
「俺も案外何も見えてねぇんだなってだけだ」
ギンタに説教できた口じゃねぇな。
ギンタを守る強い存在、たったそれだけで簡単にリィオを屈強な男だと思い込んだ。
「そうか?」
触られたところを手で押さえて若干挙動不審なままリィオは首を傾げた。
挙動不審は部屋に戻っても続き、案外スキンシップに弱いとアランはまた一つリィオを知った。
(2016/05/05)
小さな音を立てると影が自分の姿を模った。
「そうか、”自分自身”と戦わせるつもりか」
影がARMを剣へと変え―――そこで止まる。困惑したように頭を抱えたそれはどう考えても普通ではない。
やがて、パァンと音を立て影は爆ぜてなくなった。
19.疑惑の魔法使い
二回目の修練の門は2日ほどで終わりをつげた。シャドーマンが影をなさない以上リィオをこの世界にい続けさせる意味がない。
「ずっと気になっていた・・・お前は何者だ?」
「・・・」
ガイラの問いにだんまりを決めているリィオの表情はやはりわからない。
シャドーマンがマネできなかったことだけではない、初めからリィオの素性は矛盾に満ちていたとアランは思った。
彼は自分のことを傭兵だと名乗った。リィオほど強い傭兵ならばすぐに有名になるはずだ。けれど、アランもガイラも他の誰もリィオの名を知らなかった。
それにARMの使い方も知らない傭兵など聞いたこともない。
「このあたりが潮時か・・・」
腕を組みふぅとため息を一つ。いつもより低い声は諦めの証だった。
しかし、その雰囲気に悔しさや焦燥は感じられない。アランは一つ頷いた。
体ごとガイラを向くと、アランは笑う。
「こいつはチェスとは関係ねぇよ」
ガイラは苦い顔をした。アランを信じたい一方で、リィオはあまりにも怪しすぎた。
「次の試合で、全部話す」
上手く話せるかは分からないけどな。
そう笑う彼から一切の敵意は感じることはできずガイラもそれを了承した。
そして修練の門を発動させているガイラはそのまま、ウォーゲームの参加者であるアランとリィオは部屋やと戻る。それにしても、と隣を歩くリィオを見てアランは思う。どうして自分はこの男をかばったのかと。
態度に不審がなくとも、恰好が不審すぎる。そのうえ彼が嘘をついているのは明らかだった。
「?アラン?どうかしたのか?」
自然な動作でリィオがアランを見上げた。
この男はこんなにも小さかったのかとアランは思った。ドロシーよりもこぶし一つ分大きい程度。思い起こされるのはギンタ達を背にかばう姿ばかりで、こうして一人の人間としてリィオを見るのは初めてだと気づく。
こいつは思っていたより子供なのかもしれないなんて、見当はずれなことをアランは考える。そう見てみれば存外に低い背も高い声も説明がつく。
ぽん、と頭に手を置けば驚いたようにリィオは距離をとった。動物のような反応にアランはくつくつと笑って見せた。
急に何を。心底困惑した声はやっぱり子供のような声で。こんな子供を疑っていたことが馬鹿らしい。
「俺も案外何も見えてねぇんだなってだけだ」
ギンタに説教できた口じゃねぇな。
ギンタを守る強い存在、たったそれだけで簡単にリィオを屈強な男だと思い込んだ。
「そうか?」
触られたところを手で押さえて若干挙動不審なままリィオは首を傾げた。
挙動不審は部屋に戻っても続き、案外スキンシップに弱いとアランはまた一つリィオを知った。
(2016/05/05)