「・・・ナナシ、パス」
少しだけ迷った後、リィオはナナシへ自身のARMを投げ渡した。ARMが手を離れたことでシンクロが切れ途端に寒さが軽減される。
今度から寒い場所に赴くときは、あのARMはおいていこう。そうしよう。
そう固く誓ったウォーゲームの二戦目。相手はナイト。
「リィオ!なにを!!」
「だから、自分の秘密を教えるって言ってるだろ」
すらりとブレードを抜いてリィオが言った。ただの剣を抜いたリィオにラプンツェルは表情をゆがめる。
「4THバトル最終戦!
リィオV.Sラプンツェル!!!」
高らかに告げられた会戦にリィオはまず距離をとった。
まずは軽くと、ラプンツェルが右手を上げた。魔力に呼応して地面に氷の刃が生える。まっすぐ向かってくるそれを軽くよけ、リィオはなにやらぶつぶつと呟いている。
いやらしく指を立て、右手を頬へラプンツェルが当てる。ぴきぴきと音を立て氷の棘が隆起した。
「スパイクサンド!!」
ばぁんと大きな音と共に、リィオは氷の棘に押しつぶされた。
「リィオ!!」
あっけなさすぎる。
水晶を通して試合を眺めていたアランは、らしくもなくリィオの名前を呼んだ。いや、アランだけではないギンタやジャックもリィオの名前を叫ぶ。
「翔風界」
風の塊が氷を突き破った。聞いたことのない技名。風の結界を纏ったリィオが空を飛んでいた。
魔法だよ、地面に降り立ちリィオが言う。
「魔皇霊斬」
そのまま氷の上とは思えない足さばきでラプンツェルへリィオは走り寄る。
「ネイチャーARM―ヘアマスター―」
さすがに雑魚とは違い、接近戦でも相応の動きをラプンツェルは見せた。ARMで硬質化した髪を操りリィオを貫こうとする。
リィオはその髪を魔法で強化した剣で切り落とす。私の美しい髪云々と騒ぐラプンツェルが正直うるさい。
「っ!!?」
髪をよけたリィオの、ローブを髪が貫いた。驚いたようにそこを注視するリィオの頭を的確にラプンツェルは狙った。
「ぼさっとすんなや!」
ナナシの言葉にはっとした様子でリィオはそれをよけた。
かすった髪がフードを破る。
ふわり。
フードから絹糸のようにしなやかな黒髪が流れた。
フードと伸びっぱなしの黒髪から白い肌が覗く。そこにはギンタ達の想像したような傷跡も、アランの想像したあどけなさの残る顔もない。
「おっ」
観戦していたアランの口からたばこが落ちた。じりじりと火が地面を焦げ付かせる。
普段ならばそれを咎めるガイラもまた、あんぐりと口を上げて空に浮かぶ水晶を眺めていた。
水晶に映るリィオは、冷たいほど整った女の顔をしていた。
その端正な顔をヤンキーのようにゆがめて、リィオはフードの切れ端を鬱陶しそうに取り払った。
「っち、ここじゃ何の意味もないな
高かったのに・・・」
リィオの纏っていたローブはミスリル繊維に竜の髭を織り込んだ生地に宝石の護符を付与した特注品だ。屋敷一件程の値段がしたが、その分性能は高くただの剣の攻撃なら一切通さないだけではなく、威力の低い魔法くらいならはじき返す性能だった。
穴だらけになったローブを忌々し気になめして、リィオは剣を構えなおした。
(2016/05/05)
少しだけ迷った後、リィオはナナシへ自身のARMを投げ渡した。ARMが手を離れたことでシンクロが切れ途端に寒さが軽減される。
今度から寒い場所に赴くときは、あのARMはおいていこう。そうしよう。
そう固く誓ったウォーゲームの二戦目。相手はナイト。
22.魔法使いの正体は
「リィオ!なにを!!」
「だから、自分の秘密を教えるって言ってるだろ」
すらりとブレードを抜いてリィオが言った。ただの剣を抜いたリィオにラプンツェルは表情をゆがめる。
「4THバトル最終戦!
リィオV.Sラプンツェル!!!」
高らかに告げられた会戦にリィオはまず距離をとった。
まずは軽くと、ラプンツェルが右手を上げた。魔力に呼応して地面に氷の刃が生える。まっすぐ向かってくるそれを軽くよけ、リィオはなにやらぶつぶつと呟いている。
いやらしく指を立て、右手を頬へラプンツェルが当てる。ぴきぴきと音を立て氷の棘が隆起した。
「スパイクサンド!!」
ばぁんと大きな音と共に、リィオは氷の棘に押しつぶされた。
「リィオ!!」
あっけなさすぎる。
水晶を通して試合を眺めていたアランは、らしくもなくリィオの名前を呼んだ。いや、アランだけではないギンタやジャックもリィオの名前を叫ぶ。
「翔風界」
風の塊が氷を突き破った。聞いたことのない技名。風の結界を纏ったリィオが空を飛んでいた。
魔法だよ、地面に降り立ちリィオが言う。
「魔皇霊斬」
そのまま氷の上とは思えない足さばきでラプンツェルへリィオは走り寄る。
「ネイチャーARM―ヘアマスター―」
さすがに雑魚とは違い、接近戦でも相応の動きをラプンツェルは見せた。ARMで硬質化した髪を操りリィオを貫こうとする。
リィオはその髪を魔法で強化した剣で切り落とす。私の美しい髪云々と騒ぐラプンツェルが正直うるさい。
「っ!!?」
髪をよけたリィオの、ローブを髪が貫いた。驚いたようにそこを注視するリィオの頭を的確にラプンツェルは狙った。
「ぼさっとすんなや!」
ナナシの言葉にはっとした様子でリィオはそれをよけた。
かすった髪がフードを破る。
ふわり。
フードから絹糸のようにしなやかな黒髪が流れた。
フードと伸びっぱなしの黒髪から白い肌が覗く。そこにはギンタ達の想像したような傷跡も、アランの想像したあどけなさの残る顔もない。
「おっ」
観戦していたアランの口からたばこが落ちた。じりじりと火が地面を焦げ付かせる。
普段ならばそれを咎めるガイラもまた、あんぐりと口を上げて空に浮かぶ水晶を眺めていた。
水晶に映るリィオは、冷たいほど整った女の顔をしていた。
その端正な顔をヤンキーのようにゆがめて、リィオはフードの切れ端を鬱陶しそうに取り払った。
「っち、ここじゃ何の意味もないな
高かったのに・・・」
リィオの纏っていたローブはミスリル繊維に竜の髭を織り込んだ生地に宝石の護符を付与した特注品だ。屋敷一件程の値段がしたが、その分性能は高くただの剣の攻撃なら一切通さないだけではなく、威力の低い魔法くらいならはじき返す性能だった。
穴だらけになったローブを忌々し気になめして、リィオは剣を構えなおした。
(2016/05/05)