Eternal Oath

「もういいだろ?」

影縛りシャドウ・スナップの言葉とともに、ラプンツェルの影にリィオの剣がつきたてられた。

23.魔法使いが語る


ぴくりとも動かなくなったラプンツェルを尻目にリィオが振り返った。振り返った際に顔にかかった髪を耳にかける。見れば見るほど欠点のない顔立ちに、思わずメルのメンバーは黙り込む。

「これは精神魔法の一種で、対象者の動きを封じる魔法」
「へえーすごいんだな!」

「なんだいこれは!」
「ただ尋問用の魔法だから基本的にうるさい」

小指を耳に突っ込んで、もう少しラプンツェルから離れようとリィオ。ラプンツェルが元気なことからまだ試合が終了していないと判断しポズンは困惑顔。試合をと、止めたら後でと返された。この選手嫌い、ポズンはそう思った。



「自分についてって話すの始めてだからうまく話せるかわからないけど」

そう彼、もとい彼女は切り出した。


「まず、自分もギンタと同じ異世界から来た人間だ」
もっとも、ギンタとは別の世界だし別のルートできたけどな。


自分の世界はメルヘヴンとは少し似ている。自分の世界もいくつかの城が国々を納めていて、人間とその他の種族が住んでいた。ドラゴンとかな。
そして、ARMの代わりに魔法を使って人々は暮らしてるんだ。ARMと同じように戦闘に使わない普通の人でも使えるものから自分が使った様な戦闘に特化したものまで色々ある。

自分は、その世界で傭兵をしていた。

魔法は、傭兵なら全員使える・・・と言いたいところだがそうでもない。剣を極める奴もいたし、魔法を極める奴もいた。
魔法は詠唱時間があるし、こちらのARMのような・・・精霊や魔族の力を秘めた剣もあったからどちらが強いとは言えなかったんだ。

魔族?
ああ、魔族っていうのはそうだなメルヘヴンで言うチェスかのようなものかな?人間ではないが。
モンスター・・・?似ているが違う。言うならば実態のある幽霊といったものか。完全なる無を望んで、全てを滅ぼし自らを消すことすらも良しとした存在。


っと、話を戻すか。
で、そう傭兵をしていた自分がなんでメルヘヴンにいるのか、だな。自分はその日も傭兵として線上に出ていた。そこに先に話した魔族がいてだな、魔族は幽霊みたいなものって言っただろ?だからただの剣では倒せないんだよ。
魔族は本体をアストラルサイド、うーんなんて言ったらいいか、精神の世界、っていうのか?―――に実態があるんだ。で、倒すには精神を攻撃する魔法がほぼ必須なんだが・・・おそらくコレが原因だ。

ギンタがメルヘヴンに来た時間と、自分がメルヘヴンに来た時間がほとんど同じだったからな。魔族も変な召喚魔法をつかっていたし、そちらが作った時空の穴と変に干渉しあったんだろうな。

こちらに来て自分はすぐ異世界だと気づいて、異世界の人間だなんて気づかれたら面倒だからな。同じように何も知らないギンタにくっついて行動していた。

ああ、ちなみに自分は魔力の増強も身体能力の向上もなかったみたいだ。



「で、以上なんだが質問は―――あいつを片づけてからにするか」


話すだけ話すと、リィオはラプンツェルを引き出した。

「本来はこんなに悠長に話をしていられる魔法じゃないんだけどな」

リィオがARMを知らなかったように、ラプンツェルは魔法を知らない。明かりさえあれば簡単に解けるような拘束も、彼女にはどうしようもない。

殺すのは簡単だけれど、きっとリィオの雇い主はそれを良しとはしないのだろう。ドロシーの人殺しを止めたように自分のことも止めたそうにしている。


「分かってるよギンタ
烈閃槍エルメキア・ランス

リィオの右手から放たれた閃光がラプンツェルを穿った。途端ぐるりと白目をむいてラプンツェルが倒れるが、外傷はこれっぽっちもない。
ドロシーが駆け寄りなにやら確認している。どうやら死んではいないようでギンタもほっと一息ついた。


「精神を傷つけるだけの魔法だし、弱く撃ったから明日明後日には元に戻るさ」


ポズンの勝利を告げる声を背にリィオはメルへと戻っていった。


(2016/05/05)