夕食に現れたリィオはローブもフードも脱ぎ去り、ノースリーブにパンツという女性用のシンプルな服装をしていた。髪も切ったのかのばしっぱなしからすっきりとしたロングヘア―にカットされている。
「「「「・・・」」」」
完璧に女のそれに黙るのは男性陣。
「っちょっとリィオ!あんた女だったの!!?」
「聞いてない!!」
そして声を上げたのは女性陣だった。
「いや、そもそも自分が男なんて一度も言ってないだろ?」
リィオは何時もと同じように酒を片手に肉をつまんだ。
余談だが、本日はメルのメンバーとガイラとエドワードのみでの立食パーティが開かれていた。すべてレスターヴァの姫の好意である。
「そうだけど・・・」
「顔は晒す気はなかったんだけどな」
「なんで?」
固まったままのギンタの代わりに質問しているのはスノウだ。男性陣は未だ信じられないような目でリィオを遠巻きに見ている。
ドロシーはスノウほどではないが、異世界の魔法が気になるらしくリィオについて回っていた。
リィオは酒を飲みつつ適当に二人の相手をする。
「女っていうだけでがたが言うやつが多いからな」
「ってやっぱり隠してたんじゃないさ」
ばれたかなんて、何時もと同じしぐさでも受ける印象は全く違った。
傭兵時代女ってだけで契約料を値切られることはざらにあった。現に彼らだってリィオのことをその強さから男だとばかり思っていた。裏を返せば女がそんなに強いとは思っていなかったのだ。
更に女の一人旅は盗賊や山賊に狙われやすくなる。リィオのように見目の整ったものならば尚更だった。
故にリィオはずっと正体不明の人物を続けていたのだ。
「リィオも帰りたいのか?」
「どうだろうな
自分はギンタと違って待ってる人もいないから」
酒に口をつけながらリィオはギンタを見下ろす。その表情からは何も読み取れなかった。
「親は?」
「さあ?」
自分6歳より前の記憶がないんだよな。気づいたら傭兵のおっちゃんに拾われてて・・・だからたぶん戦争かなんかで死んだんだと思う。
そこまで言って、リィオはからからと笑って酒を置いた。かんっと高い音が響く。
「おっちゃんも、何年か前に死んで
だから本当に自分を待っている人なんかいないんだ
傭兵が一人のたれ死んだって思われるだけさ」
泣きそうにギンタが眉を寄せた。その顔をみて落とすようにふっとリィオが笑う。それは本当にこの世界に来てしまったことを気にしていないという意味だった。
しかし、ギンタが悲しんだのはそんな理由ではなかった。
「だって、そんなのリィオ・・・
悲しいじゃないか」
「悲しい?」
「そんなの、リィオがいないみたいだ・・・」
リィオの服の端をうつむいたギンタがつかんだ。優しすぎる主にリィオはできる限り優しい表情を作った。ギンタの手をゆっくりと離すと、宝物のようにその手を拾い上げた。そして、ギンタに雇われたあの日のように跪いて神妙な顔つきになった。
「ありがとうギンタ」
優しい言葉。正しい心。傭兵としての生活ではめったに目にかかれないものだった。だからギンタの気持ちはリィオにとって宝物になった。
「君と会えた
それだけで十分すぎるくらい十分だ」
一転ギンタは顔を青から赤に変えてそっぽを向く。指で鼻の下を強く擦ったのは率直すぎる言葉が恥ずかしすぎるからだ。
「リィオ、ストレートすぎ」
「言えることはすぐ言うようにしてるんだ
明日生きてるとは限らないからな」
そう言って笑うリィオはやっぱりリィオで。
それを悲しいとギンタは思った。
(2016/05/05)
「「「「・・・」」」」
完璧に女のそれに黙るのは男性陣。
「っちょっとリィオ!あんた女だったの!!?」
「聞いてない!!」
そして声を上げたのは女性陣だった。
24.魔法使い
「いや、そもそも自分が男なんて一度も言ってないだろ?」
リィオは何時もと同じように酒を片手に肉をつまんだ。
余談だが、本日はメルのメンバーとガイラとエドワードのみでの立食パーティが開かれていた。すべてレスターヴァの姫の好意である。
「そうだけど・・・」
「顔は晒す気はなかったんだけどな」
「なんで?」
固まったままのギンタの代わりに質問しているのはスノウだ。男性陣は未だ信じられないような目でリィオを遠巻きに見ている。
ドロシーはスノウほどではないが、異世界の魔法が気になるらしくリィオについて回っていた。
リィオは酒を飲みつつ適当に二人の相手をする。
「女っていうだけでがたが言うやつが多いからな」
「ってやっぱり隠してたんじゃないさ」
ばれたかなんて、何時もと同じしぐさでも受ける印象は全く違った。
傭兵時代女ってだけで契約料を値切られることはざらにあった。現に彼らだってリィオのことをその強さから男だとばかり思っていた。裏を返せば女がそんなに強いとは思っていなかったのだ。
更に女の一人旅は盗賊や山賊に狙われやすくなる。リィオのように見目の整ったものならば尚更だった。
故にリィオはずっと正体不明の人物を続けていたのだ。
「リィオも帰りたいのか?」
「どうだろうな
自分はギンタと違って待ってる人もいないから」
酒に口をつけながらリィオはギンタを見下ろす。その表情からは何も読み取れなかった。
「親は?」
「さあ?」
自分6歳より前の記憶がないんだよな。気づいたら傭兵のおっちゃんに拾われてて・・・だからたぶん戦争かなんかで死んだんだと思う。
そこまで言って、リィオはからからと笑って酒を置いた。かんっと高い音が響く。
「おっちゃんも、何年か前に死んで
だから本当に自分を待っている人なんかいないんだ
傭兵が一人のたれ死んだって思われるだけさ」
泣きそうにギンタが眉を寄せた。その顔をみて落とすようにふっとリィオが笑う。それは本当にこの世界に来てしまったことを気にしていないという意味だった。
しかし、ギンタが悲しんだのはそんな理由ではなかった。
「だって、そんなのリィオ・・・
悲しいじゃないか」
「悲しい?」
「そんなの、リィオがいないみたいだ・・・」
リィオの服の端をうつむいたギンタがつかんだ。優しすぎる主にリィオはできる限り優しい表情を作った。ギンタの手をゆっくりと離すと、宝物のようにその手を拾い上げた。そして、ギンタに雇われたあの日のように跪いて神妙な顔つきになった。
「ありがとうギンタ」
優しい言葉。正しい心。傭兵としての生活ではめったに目にかかれないものだった。だからギンタの気持ちはリィオにとって宝物になった。
「君と会えた
それだけで十分すぎるくらい十分だ」
一転ギンタは顔を青から赤に変えてそっぽを向く。指で鼻の下を強く擦ったのは率直すぎる言葉が恥ずかしすぎるからだ。
「リィオ、ストレートすぎ」
「言えることはすぐ言うようにしてるんだ
明日生きてるとは限らないからな」
そう言って笑うリィオはやっぱりリィオで。
それを悲しいとギンタは思った。
(2016/05/05)