Eternal Oath

東日のさす、珍しく明るいところで目を覚ました。やけに明るく見えるのは、寝ぼけてローブが外れてしまったのか。
隣に感じる気配に雑魚寝など久々だとぼんやり思う。
さあ、みんなが起きる前にローブを被ってしまわねば。

―――ローブはどこだ?


「なにやってんだ?お前」


あ。

27.魔法使いと魔女の国


「がははははは!!」
「いつまで笑っているつもりだ」

言うとリィオは半眼で隣に立つアランを睨んだ。
アランは今朝方寝ぼけてローブをさがしていた所を見られてからずっとこの調子で笑い転げている。

「ちょいと、もう着いてるんだから静かにしなさいよ」

笑い続けるアランに、珍しく硬い表情でドロシーが注意をした。
昨日の晩に行われたドロシーの提案により、今一行は魔女の国―カルデア―を訪れていた。ひーひーと腹を抑えるアランの鳩尾に一発肘打ちを見舞うと、リィオは悪いなと口にする。


「ところで、どこへ向かってるんだ?
なぜみんなを連れてきた?」
「長老の所よ―――大切な話しがあるの」

そしてドロシーが指を指した。その先には、空に浮かぶ宮殿。
アンダータと唱えられたARMの力で、次の瞬間にはその場所に飛んでいた。



わ。小さな声を上げて目を輝かせたギンタとは対照的に、流石にと言うべきか、漸くと言うべきか、アランも笑いを止め真面目な顔であたりを見回す。いや、アランだけではない他の面々も物珍しそうにあたりを見ていた。

観光じゃないと再度注意したドロシーに連れられたどり着いた先は宮殿の一番奥で、巨大な扉を開けると儀式てもできそうな広い空間にいかにも魔法使いと言う風体の老人が一人佇んでいた。


「ドロシーか」
静かに、しかしはっきりと響く声で老人は呟いた。おそらく彼はドロシーが何を話に来たのかを察しているのだろう。

「帰ってきたということはつまり」
「はい、―――ディアナを見つけました
チェスの兵隊そのなかのクイーンです」

”ディアナ”―――その名に覚えがあったのはアランとスノウの二人だった。二人は同様に目を見開くと、スノウは暗い表情を、アランは怒りの表情を各々浮かべた。


「誰なんだ?」
「レスターヴァの王妃だ」
「王妃・・・スノウの継母か・・・」

繰り返し呟いたリィオはだからあの反応かと納得する。


「(優しかった継母と、優しかった王妃、か。)」


リィオには優しげな微笑でチェスを操るドロシー似の女が容易に想像できた。


「私の姉ディアナはカルデアからARMを盗み出すと
レスターヴァの王妃になった」
「それが、チェスのクイーンの正体という事か・・・
だから、前回の戦いではクイーンもキングも」


「ああ、見つからなかった


―――見つかるわけがねぇ、味方だと思ってた奴のなかにそいつはいたんだからな」



ぎりりと拳を握り締めたアランとは対照的に、どこか悲しい表情でドロシーは視線を大ジジ様と呼ばれた老人へと向ける。



「身内の不祥事は身内が片付ける、カルデアの掟じゃ

ドロシ―――ディアナを殺せるか?」



その声は静かに、しかし恐ろしい程の重みを抱いて、宮殿内に響き渡る。



「―――はい、殺します」


(2016/12/18)