Eternal Oath

「チェスに壊された村や町を見たよね?
お義母さまと戦うのはつらいけれど
お義母さまが原因で戦争が起こってるのだとしたら―――私はレスターヴァの後継者としてディアナを倒します」


「(殺すとは言わないんだな)」


ギンタを諭すスノウの声を聴きながら、そんなことをリィオは考えた。

28.魔法使いの本分


―――ドォン!

大きな破壊音が響いたのは、大ジジがディアナの迷惑の詫びにARMを授けると宣言した時だった。
カルデアの人間も考えあぐね―――いらないとの本人の申し出もあり、ARMは授けられないことになったリィオがブレードを抜き臨戦態勢をとる。こんなことをする奴らは一つしか思い浮かばなかった。


「チェスか」
「ディアナ、ついに自分の生まれた国まで・・・!!」


思わずといった感じでこぼれた言葉に、リィオはドロシーを見やる。彼女は拳を握りしめ今にも泣きそうな顔をしていた。


「何が目的かわかるか?」
「西と、東にある塔だと思う
ARMが奉納されている―――」

「決まりだな
自分は東に行く、ギンタは西へ、ドロシーは町民の護衛と回復を

・・・アラン達はさっさとARM貰ってこい」


しっしと手をふったリィオは、冷静とは言えない様子のドロシーの代わりに提案する。ドロシーのお守はギンタに頼むこととして、リィオは宮殿の窓より東を臨んで塔の位置を確認する。
森の中、不思議な形の塔が一つ。間違いなくあそこであろうと考えて、大丈夫そうだなと一つ頷いた。


リィオ!早く!!」
「ああ―――じゃあ行ってくる

翔風界レイ・ウイング!」


なおも不安そうにリィオたちを見つめる居残り組に手を振って、魔法の力でリィオは東の塔へと向かった。



* * *


すでに東の塔の眼前にはチェスの大群―――ほとんどがルークで構成された四、五十人の集団が迫っている。
カルデアの兵士がいないのは、町人の救出に出払っているためであろう。その証拠に、飛んでいる最中に塔とは逆方向に走る兵士や魔法使いを何人かみかけた。


「この程度なら平気だな」


すとんと音も立てず塔の前へと降り立つ、誰もいないのはかえって都合が良かった。
さて、今回は味方がいないから敵がたどり着く前に唱えてしまわなければ。
高まり始めたリィオの魔力に呼応するようにブレードに埋め込まれた宝石の護符ジュエルズ・アミュレットが光をきらりと反射する。


「昏よりも暗き存在、血の流れよりも赤き存在
時間の流れに埋もれし偉大なる汝の名において、

我ここに闇に誓わん―――「おい、リィオだぜ」」


目を閉じて、魔力を両手に集中する。狙いを定めるために開いた目には、眼前にチェスが見え始めたがもう遅い。
体の前に構えた両手に赤い閃光が走り始めた。


「―――我らが前に立ち塞がりし

全ての愚かなるものに 我と汝が力もて 等しく滅びを与えんことを


竜破斬ドラグ・スレイブ!!」


赤い閃光が走った後、残ったものは巨大なクレーターだけだった。


(2016/12/18)