Eternal Oath

「伝令!伝令―――!!撤退をっ!!」


その時、西塔より駆け付けたチェスの伝令が見たものは大きな東塔に派遣されたチェスの兵隊ではなく森に現れた大きなクレーターだった。


「あんたもクレーターになっていくか?」
「ひっ!」
「――――根性ないな
さて、町の方に行くか」

29.魔法使いの祝福


リィオ!―――無事か!!?」
「いや、その言葉そっくりそのまま返すよ」


リィオが町の広場につくなり、ギンタが駆け寄ってきた。宮殿を出たころと同じ姿のリィオとは対照的にギンタはボロボロの様子だった。
ギンタを訝し気に見るリィオに―――「この子ファントムと戦ったのよ」そうドロシーがささやいた。あきれたように、しかし笑顔でリィオは首を振ってギンタの側へ寄る。

「白き流れ 癒しの力よ 治療リカバリィ

そのまま翳されたリィオの手から白い光が放たれ、ギンタの傷を癒す。そして、それを見て閃いたとギンタが手を掴んだ。


「そうだ!来てくれ!!」
「ん?」
「町の人!!!」


言葉にはせずに苦笑いをしたリィオがギンタに引かれ辿り着いたのは広間の一角、タイルの上に担架や白布が敷かれた急ごしらえの救護施設になっていた。
元々カルデアにあったホーリーARMと、ARMを貰い終えたスノウがすでに治療に走り回っている。なるほど、彼女らを手伝えと云う事かとギンタの意をくみ静かに頷くと、その場に屈みこむようにリィオが膝をつき手を前に構えた。


「聖なる癒しのその御手よ 母なる大地のその息吹
我が前に横たわる傷つき倒れし彼の者に
我ら全ての力もて 再び力を与えんことを

復活リザレクション―――増幅ブースト広がれスプレッド


彼女の放つ魔力が終息すると同時に放たれた魔法が広場中へとひろがりうめき声が小さくなった。怪我の程度によっては完全に治っている者もいるらしく、立ち上がるものもちらほら見えはじめる。
その様子を眺め喜ぶギンタの隣を抜けリィオはスノウへと近づいた。スノウの傍らにはアランが控えていた。その手にはホーリーARMが握られておりスノウの手伝いをしていることが見て取れる。


リィオ!今のリィオがやってくれたの?」「無事だったのか」
「ああ。
ジャックとナナシは?」
「町の復旧に行った」

「ああ―――随分壊されてるからな」


自身を棚上げにし、スノウの隣へと腰かける。先の魔法の影響でけが人も重篤な者だけになっていた。
さて手伝うかと、リィオが魔法を唱えた。スノウにリィオそれにアランの手伝いもあり少しずつけが人が回復していった。



―――それから三時間。



「終わったー!!」
「―――結構ぎりぎりだったな」


スノウが声を張り上げ、魔力がつき肩で息をしたリィオがそれに相槌を打つ。
やっと葉巻を吸えると火を取り出したアランはそんなリィオの隣へと腰かけた。


「おい平気か?」
「ん?ああ、ただの魔力切れだ」


人間の放てる魔法で最強とされる攻撃魔法と、上位の白魔法である復活リザレクションの多様、彼女が一般的な魔導士より魔力があるとはいえ流石に限界だった。


「にしたってよ」
「ギンタの頼みだ」
「無理してまでやれって意味じゃねぇだろ」


アランは困ったように眉根を寄せ笑うリィオの体を抱き寄せる。力が入らないのか普通の女の弱さで体をアランへと預けた。


「自分がやりたくてやったんだ」


(2016/12/18)