普通に呼ぶ
そうちょうど一年くらい前だった彼と知り合ったのは。
最初はちょっと怖くて。
知り合って意外に優しい事とかを知って・・・。
「咲何してんの!?」
「え?」
突然友達に声をかけられて、慌ててキャンパスに目を落とした。
「あっ!!」
私のキャンパスには右から左へと線が一本。
それはもちろん本来書いては行けない線で、私は急いでその線を消した。
今までこんな事なかった。
絵を描いてるときに他の事を考えるなんて。
なんで私は彼のことばっかり考えているのだろう?
「咲大丈夫?」
「うん」
「具合悪いなら帰ったほうがいいよ」
友達が心配そうに私に言う。
体調が悪いわけではないけれど、今日は集中できそうになかった。
「ごめん、先に帰らせてもらうね」
「うん、お大事にね」
私はキャンパスを片し、荷物をまとめる。
そして、足早に美術室を出た。
「咲さん?」
下駄箱には彼の姿。
なんで会いたくない時に会っちゃうんだろう。
「部活じゃないのか?」
「ちょっと、体調が悪くて」
「大丈夫か?」
「うん。大丈夫だよ。
凍季也君」
私は普段と同じ笑顔で同じトーンで彼の名を呼んだ。
(この動揺を知られてはいけない気がした。)
(2013/08/14)
元拍手のおまけ。