Eternal Oath

「ジョーカー、賭けは君の負けだ
これは私がもらい受けるよ」

血の水たまりに佇む帝釈廻天を引き抜き女は囁いた。

賽の目が決める運命


紅波?何を・・・」
「私の最後の賭けだよ、音遠」

森の最後も紅麗の最後も見届けた。
見たかった結末をを見ることの出来た私にもう未練はない。

ここで命が散ったとしてもそれは運が悪かっただけの笑話になるだけ。
あの血だまりから帝釈廻天を抜いた瞬間から私は君のことばかり考えていた。どうやら私にとっての君は予想以上に大きく、麻薬のような物らしい。君のいない世界なんて納豆のない朝ごはん様なものだ。


「願わくばもう一度
雲のような君と空を飛びたいと思っているよ

ジョーカー」

おそらく君もこうしたのだろう。
魔導具が消えてしまう前に全ての力を帝釈廻天に注ぎ込んだ。プラスの重力に更にプラスをつぎ込めば次第に景色は歪み始めた。所謂ブラックホールだ。

この先にあるのは鬼か蛇か。

やがて意識が消える瞬間まで、私は帝釈廻天をつかみ続けた。


* * *


「ぅん・・・?」

どうやら生きてはいるらしい。

「ボスー!!
この姉ちゃん目覚ましたよ!!!」
「ボス・・・?」

未だぼやける視界に、走り去る少年の姿が映る。お世辞にもきれいとは言い難い土壁出できた部屋。それでもきちんと洗濯はしているのだろう自身の横たわるシーツからは太陽の匂いがした。

「?・・・ははっ」

起きあがろうと手に力を入れて漸く帝釈廻天を掴みっぱなしなことに気づいた。

まだ賭けは続いている。これで終りではない。

今はそれで十分だった。


―――ドタドタ

「ん?」

―――せやから廊下は走るなゆーとるやろ!

―――だってボス!あの姉ちゃんが起きたんだ!


派手な足音と男の声が聞こえた。

関西弁というだけで君の声に聞こえるなんて私も随分毒されている。これでは君に囚われているようだ。


「ボス早く!」
「だぁ!レディーの部屋開ける前はノックをせんか、ぃ」

飛び込んできたのは先の少年と、明るい茶髪の男。
思わず見つめ合うこと10数秒。

そう。賭けは滅多にない大勝利だった。


「・・・ジョー「チェンジ!!」」

私と君が口を開いたのはほぼ同時。


「ははは!私はデリヘルか」


流石、君はいつも私の想像の斜め上をいく。


(2015/03/07)
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