海よりも空よりも広いもの
ナナシさんとクレハの関係は不思議だ。
「ナナシ」
クレハはナナシさんを追ってルベリアに来たのだという。
「ちょいまち、これからこの子とデートや!」
「ん、分かった
行ってらっしゃい」
そうクレハは手を振り見送る。そんなに大切な人なのになんで笑顔で見送れるんだろう。
だから、ウォーゲームの夜私はクレハへ聞いてみた。
「私は、ナナシのそう言うところが好きなんだ
雲みたいなところがね」
手を広げてクレハは笑って、本当に幸せそうだったけど、私にはわからない。だって私はギンタがドロシーとしゃべってるだけで心臓がきゅうってしちゃうもの。
「なに話してるん?」―――ナナシさんが戻って来た。その傍らには誰もおらず、きっと先の女のひととはもう別れたのだろう。
「楽しかったかい」
「もちろん♪」
良かったとやっぱり幸せそうにクレハが笑う。ナナシさんはそんなクレハの腕をつかみ立たせると「ちょっとええか?」とにっこり笑う。
―――あ、今少しだけ分かったかも。
「さっき景色のきれいなところ見つけたんや」
「そう」
「なんや、クレハと見たなってなァ」
帰ってきちゃった。
そうして何事もなかったかのように二人はどこかへ消えていった。
ナナシさんの一番はクレハで、クレハの一番もナナシさんで、だからきっと―――。
(2015/03/07)
元拍手のおまけ。