ないはずの五回戦。
最澄が心臓病だったことがわかり烈火が空海に吹っ掛けたそれは、第三の竜”焔”の登場によりなんとか勝利となった。
その際、審判の辰子が烈火のファンになるという事があったけれど、それはまあいっか。
今日は初戦のみ。
私達は選手用ホテルに向かっていた。
「あー、もう本当ひやひやした!」
私がさしているのは先程行われた五回戦。
烈火はわりぃわりぃと言いつつあんまり反省が見られない。
まったく。
「よれよりもさぁ、風子ちゃんの服ボロボロ!」
「私の服かそっか?」
「うーん、そうしよっかな」
私服は多めに持ってきたし。
風子とは(おもに胸の)サイズが違うけどたぶん平気。
「いーじゃん、そのかっこでっ・・・!?」
烈火が不自然に声を詰まらせる。
視線の先には紅麗がいた。
「紅麗」
今日はあの仮面してなかった。
余談だが、私はそっちのほうが好き。
「よぉ、アニキきてやったぜ」
烈火が紅麗を挑発する。
「兄だと?けがらわしい分際というものをわきまえよ」
「いやみで言ったんだよコノヤロー!!」
烈火・・・もうちょっと喧嘩売るなら冷静にね。
「烈火落ち着いて」
「・・・っ!」
少し強めに彼の腕をつかむ。
烈火は悔しそうに、歯を食いしばった。
「・・・治癒の少女柳君も連れてきたか、お前にしては賢明な考えだったぞ」
紅麗がこちらに歩みを進める。
ここで戦闘をする気はないのだろう。
すれ違った瞬間紅麗が小さな声で私に言う。
「明日」
「・・・!?」
”明日”
それは、私を呼ぶ時の彼の言葉。
頭首である桜花に迷惑をかけないよういつもこっそりたずねていた彼の家。
紅麗は着てほしい時はいつだってそうやって、僅かに甘えた声をだした。
彼が出す私だけの声。
私の頬が緩む。
「・・・くそっ」
烈火が悔しそうに出した声に私は我に帰る。
私は急いで緩んだ頬をもとに戻す。
こちらを見ていた凍季也のほうを向く。
「そういえばさ」
「なんだ?」
訝しむようにこちらを見ている目を見なかったふりをして私は声をだした。
「今日の戦いどうだった?」
「君が紅麗の手先でないことはわかったな」
予想の斜め上な回答。
「どゆこと?」
「君が紅麗の手のものだったら、とっくに僕たちを殺している」
なるほど。
「ははっ、そっか
でも、そうやって油断させてるのかもしれないじゃん?」
「それはないな。
メリットがない
十年近くも烈火の側に居るメリットがな」
「まぁ、ね」
守るためにずっと烈火の事見てたから。
それは、遠い日の約束。
紅麗のこともそうだ。
今までの分・・・これから守るよ。
「君は不思議な人だな」
「ふぇっ!?」
一瞬、凍季也が笑った。
「な、なんで?」
急に変なこと言うからどもっちゃったよ。
「いや・・・」
「何!?
教えろよ!」
「・・・」
何もしゃべらないまま凍季也はそのまま足早に側をはなれた。
すっっっごいきになるんだけど。
(2011/09/25)
最澄が心臓病だったことがわかり烈火が空海に吹っ掛けたそれは、第三の竜”焔”の登場によりなんとか勝利となった。
その際、審判の辰子が烈火のファンになるという事があったけれど、それはまあいっか。
16.信頼と甘い声
今日は初戦のみ。
私達は選手用ホテルに向かっていた。
「あー、もう本当ひやひやした!」
私がさしているのは先程行われた五回戦。
烈火はわりぃわりぃと言いつつあんまり反省が見られない。
まったく。
「よれよりもさぁ、風子ちゃんの服ボロボロ!」
「私の服かそっか?」
「うーん、そうしよっかな」
私服は多めに持ってきたし。
風子とは(おもに胸の)サイズが違うけどたぶん平気。
「いーじゃん、そのかっこでっ・・・!?」
烈火が不自然に声を詰まらせる。
視線の先には紅麗がいた。
「紅麗」
今日はあの仮面してなかった。
余談だが、私はそっちのほうが好き。
「よぉ、アニキきてやったぜ」
烈火が紅麗を挑発する。
「兄だと?けがらわしい分際というものをわきまえよ」
「いやみで言ったんだよコノヤロー!!」
烈火・・・もうちょっと喧嘩売るなら冷静にね。
「烈火落ち着いて」
「・・・っ!」
少し強めに彼の腕をつかむ。
烈火は悔しそうに、歯を食いしばった。
「・・・治癒の少女柳君も連れてきたか、お前にしては賢明な考えだったぞ」
紅麗がこちらに歩みを進める。
ここで戦闘をする気はないのだろう。
すれ違った瞬間紅麗が小さな声で私に言う。
「明日」
「・・・!?」
”明日”
それは、私を呼ぶ時の彼の言葉。
頭首である桜花に迷惑をかけないよういつもこっそりたずねていた彼の家。
紅麗は着てほしい時はいつだってそうやって、僅かに甘えた声をだした。
彼が出す私だけの声。
私の頬が緩む。
「・・・くそっ」
烈火が悔しそうに出した声に私は我に帰る。
私は急いで緩んだ頬をもとに戻す。
こちらを見ていた凍季也のほうを向く。
「そういえばさ」
「なんだ?」
訝しむようにこちらを見ている目を見なかったふりをして私は声をだした。
「今日の戦いどうだった?」
「君が紅麗の手先でないことはわかったな」
予想の斜め上な回答。
「どゆこと?」
「君が紅麗の手のものだったら、とっくに僕たちを殺している」
なるほど。
「ははっ、そっか
でも、そうやって油断させてるのかもしれないじゃん?」
「それはないな。
メリットがない
十年近くも烈火の側に居るメリットがな」
「まぁ、ね」
守るためにずっと烈火の事見てたから。
それは、遠い日の約束。
紅麗のこともそうだ。
今までの分・・・これから守るよ。
「君は不思議な人だな」
「ふぇっ!?」
一瞬、凍季也が笑った。
「な、なんで?」
急に変なこと言うからどもっちゃったよ。
「いや・・・」
「何!?
教えろよ!」
「・・・」
何もしゃべらないまま凍季也はそのまま足早に側をはなれた。
すっっっごいきになるんだけど。
(2011/09/25)